【本多 慎一】触られてはいないけど、これって「見るだけ痴漢」?…触らない痴漢の「進化系」が姑息すぎる!

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「触らない痴漢」が増加中

「半年ほど前、会社から電車で帰宅途中、斜め向かいの席に座ってきた男性にずっとチラチラ見られることがありました。

特に何かされたわけではありませんが、降りるまでの10分ほど、その状態が続き、本当に気味悪く感じました。私は結構な田舎の出身で、このような体験をしたことがなく、痴漢をされたような気分でとても不快に感じました」

こう語るのは、昨年、上京したばかりで、スーツの着こなしにもこなれてき会社員・優花さん(23歳=仮名)だ。

不自然にずっとチラチラと優花さんを見る男。果たしてこれは痴漢に該当するのか──。

近年は摘発を恐れた「触らない痴漢」が増加しているという。当局の積極的な取締りに加え、電車内では防犯カメラの設置も進んでおり、法整備やその解釈も厳罰化傾向にあるからだ。

「触らない痴漢」には、女性の至近距離に立って匂いをかいだり、息を吹きかけたり、スマホのデータ共有機能で卑猥な画像を送り付けたりするなどという、迷惑行為がある。

また、混んでいない電車内でも、男が不自然に若い女性に接近したり、席を詰めてきたりして、不快に感じるといった女性の声もネット上などには数多く寄せられている。もちろん、こうした迷惑行為も“合法”ではない。

「触らない痴漢」も摘発対象へ

全国紙社会部記者が解説する。

「たとえ女性の身体に直接触れていなくても、不快を感じさせる行為であれば、警察から警告を受けるなどの事案はすでに報じられています。悪質であれば、迷惑防止条例の適応なども考えられるでしょう。

また昨年、新たに法改正され、より量刑が重い『不同意わいせつ罪』(刑法176条)で摘発される可能性も、ないとは言いきれません。この法律の要件は、同意のない『わいせつな行為』と規定され、必ずしも身体への接触行為に限定していません。

現段階で身体への接触なしに条例や刑法が適応された例は報じられていませんが、今後は悪質性が高いと判断されれば、身体への接触の有無にかかわらず、なんらかの罪に問われる可能性はあるかもしれません」

それでは、冒頭の優花さんが体験した「見るだけ痴漢」の場合はどうか。

「さすがに、ただ、チラチラ見ただけであれば、警察に摘発されるとは考えにくいが、10分間も続いたとなれば、誰であっても不快に感じる行為であることは間違いない。このような不適切事案の認知が広まって、社会の価値観が許容しなくなれば、今後、このような“被害”は収まるかもしれません」(前出の社会部記者)

男性だって被る「不愉快事案」

女性が痴漢を疑うケースがある一方で、他人と一定時間、同じ空間にいる車内では、男性の意図しない行為が不愉快な事案に発展する場合もある。

大阪市で暮らす会社員の坂口慎平さん(48歳=仮名)が言う。

「私は満員電車で女性の近くで立っている際は、痴漢に間違えられないよう、前に荷物を抱え、片手でスマホを見て、もう片手で吊り革を持つようにしていて、常に“潔白”をアピールしています。電車内ではそんな男性ばかりですよ。

ある時の話です。座席だけ埋まっている程度の混み具合の際、女性の隣の席に座りました。肩が少し触れたか触れないかくらいの、ほんの軽い感触があったのですが、その女性からは露骨に不快感を示されました。何度も何度も、女性は私と距離を取ろうとして、まるで私が痴漢か、汚いものに触れたかのように露骨に嫌な態度をされたのです。

そして、次の駅で空いた斜め向かいの席にあからさまに移動されました。周りの人には、私に何か問題があったように見えたでしょう。ただ、不愉快な思いはしましたが、『痴漢だ!』と叫ばれなかっただけ良かったのかもしれません」

他人と「できるだけ距離を取る」が正解

坂口さんのケースでは、相手方の女性の言い分が不明なため、女性の態度の真相も分からないが、坂口さんにとっては、なんとも後味の悪い出来事だった。自分も他人も不愉快な思いをしないためには、できるだけ他人と距離を取って、誤解を与えかねない行為は避けるなど、“自衛”することが肝心だ。

とはいえ、距離をいくらとっても他人からの視線は気付くもの。つづく後編記事『「今、あの男に見られたかも」…!街角の女性が打ち明ける、“チラ見被害”の「容赦ない実態」』では、あまり語られない、女性が不愉快に感じる街中での「チラ見」行為について、警鐘を鳴らす。

「今、あの男に見られたかも」…!街角の女性が打ち明ける、“チラ見被害”の「容赦ない実態」