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はじめに

フォルクスワーゲンのワールドワイドでのベストセラー、ティグアンが3世代目となった。従来モデルのステータスを守るべく、プラットフォームにサスペンション、ハイブリッドパワートレインなどに最新技術を用いている。

【画像】写真で見るフォルクスワーゲン・ティグアンとライバル 全17枚

フォルクスワーゲンがこのクルマをフル電動化しなかったのは、最近の情勢が影響してのことだろう。そのぶんラインナップには、フルEVのように使える航続距離を謳うプラグインハイブリッドや、ガソリンハイブリッド、ハイパワーなガソリン4WD、さらには最近では敬遠されがちなディーゼルも用意されている。


テスト車:フォルクスワーゲン・ティグアン1.5 eTSI 150 R−ライン    MAX EDLESTON

選択肢豊富で、ウォルフスブルグが幅広いユーザーのニーズに応えようとしていることが見て取れる。今回のテスト車は、前輪駆動の1.5Lマイルドハイブリッドだ。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

3代目のティグアンは、先代とほぼ同サイズで、BMW X1よりわずかに長い。それよりかなり長いのがトヨタRAV4。いわゆるミッドサイズSUVに分類していいだろう。

現行パサートや、スコダのリニューアルしたシュパーブやコディアックと同じく、プラットフォームはMQBエボのアップデート版。エボとなった時点で、内装クオリティやインフォテインメント系や計器類のデジタル技術、サスペンションが大きく進歩しているという。


ガソリンとディーゼル、ガソリンベースのMHEVとPHEVをラインナップ。完全電動モデルの設定は、ひとまず見送られた。    MAX EDLESTON

また、改良を加えても重量増加を抑えた点もみごとだ。2016年にテストしたMTの先代2.0TDIは1610kgで、今回はオプション満載でもそれをわずかに切る1606kgだった。

エンジンも先代同様、横置き4気筒のガソリンとディーゼル。トランスミッションは6速か7速のDCTで、前輪駆動が主流だ。

現時点でのラインナップは、e−TSIこと131psか150psの1.5Lマイルドハイブリッド、150psのTDIこと2.0Lディーゼル、そして204psと272psの1.5LガソリンPHEVであるeハイブリッド。PHEVの駆動用バッテリーは大きめの19.7kWhで、113km以上のEV走行が可能だ。

4WDを希望するなら、非ハイブリッドの2.0Lガソリンモデルが追加される予定だ。FF車には、悪路用トラクションコントロールやラギッドなタイヤ、オフロードに適した最低地上高などが備わらない。

サスペンションは、フロントがストラット、リアがマルチリンクで、コイルスプリングと一般的なパッシブダンパーという構成。よりハードなスポーツサスペンションは、グレードによりオプション設定されるものもあるが、可変パワーステアリングとのセットとなる。テスト車にはアダプティブダンパーのDCCが装着されていたが、これは比較的高価なオプションだ。

内装 ★★★★★★★★☆☆

フォルクスワーゲンはキャビンのクオリティ向上を謳うが、これはモダンなデジタル感に負うところが大きいように思える。というのも、先代との違いが見られるのは、マテリアルのソリッドで高価そうな見た目や感触でもなければ、スイッチ類のしっかりした手応えでもないからだ。

そうした作り込みの質感は、長らくフォルクスワーゲンが強みとしているところで、それ内の水準にはあるが、並外れたほどではない。主要装備や二次的な操作系はソリッドでしっかりしているし、収納部は裏地付き。高級感のあるフィニッシュが目を引く部分もある。とくに豪華だったり注目すべきだったりはしないが、プレミアム系のライバルに挑めるだけのリッチさはある。


デジタル系が強化されたキャビンは、収納スペースも拡大。ただし、操作系を統合しすぎて無理が出ている部分もある。    MAX EDLESTON

そのかわり、コストが別の部分にかけられたことは明らかだ。バックライト付きデコレーションパネルがダッシュボードからドアに張り巡らされ、カラーが変化するアンビエントライトも備える。テスト車は、横型15インチの自立式インフォテインメントディスプレイが、ダッシュボード上部に据え付けられていた。また、10.3インチのデジタルメーターの向こうには、ヘッドアップディスプレイも備わる。

センターコンソールのレイアウトは、シフトレバーを右側コラムレバーへ移したことで、収納スペースが生まれた。そのため、ヘッドライトやウインカー、ワイパーを左側レバーに統合しなくてはならず、特にワイパーの使い勝手が直感的ではなくなった。

ヒーターと換気はタッチ画面と、その下のバックライトが追加されたスライダーで操作するが、実体パネルのほうがパッと見でわかりやすいはずだ。

フロントシートは、座面の傾きと長さが調整でき、ヘッドレストの位置もバッチリ。よくできたランバーサポートや、ヒーターとマッサージャーも備わっていた。

後席には、全員分のUSB−C充電ポートや、デジタルデバイス用のシートポケット、シートのスライドとリクライニングが用意される。ヘッドルームとレッグルームの最大値は、パッケージングに優れたBMW X1をわずかに上回る。

走り ★★★★★★☆☆☆☆

見当違いなのかもしれないが、2024年の英国市場においてディーゼルはややダーティなイメージが拭えずにいる。ティグアンのようなSUVに関しては、そうあるべきではないとわれわれは考える。そして幸いにも、フォルクスワーゲンはディーゼルをラインナップから外さなかった。

それでも、多くのユーザーはガソリンのマイルドハイブリッドを選ぶだろう。ディーゼル並みの推進力やトルク、そして経済性を、社会的な要求に応えつつ得られると期待されるからだ。


日常使いでは大きな不足を感じないパワートレインだが、負荷が大きいときのなめらかさや、絶対的な動力性能では物足りないところがある。    MAX EDLESTON

少なくとも、ティグアンのeTSI 150のパワープラントについては、そうした折衷をある程度満たしてくれる。それでも、そこそこ大きく、万能性が求められ、ハードに使われるファミリーカーには、ディーゼルのほうが合っているように感じられる。

この問題をカバーするべく、7速DCTの低めのギアは、とくに低めのレシオとされているが、それでもすぐに使えるトルクは不足気味だ。そのため、動力性能の数値もパッとしないものとなっている。0−97km/hは9.4秒、48−113km/hは9.2秒。まずまずではあるが、4気筒ディーゼルのメルセデスGLB220dやハイブリッドのキア・スポーテージはそれより2秒ほど速い。

日常的な普通のドライビングでは、パワートレインは満足できる。市街地でも郊外でも十分速く、高速道路でもティグアンの重量をしっかり引っ張ってくれる。ただし、ちょっとばかり無理をしている感じは否めないが。強めに加速するには回転を上げる必要がある感じで、その回り方に特別エンスー心をくすぐるようなものはない。

欠けているのは、積載量が多いときや牽引時に必要な固定ギアでの強い余力で、万能性のあるファミリー向けSUVに求められるであろうものだ。それでも、通勤や通学、ショッピングに使うのが主であれば、たいした欠如とはならないはずだ。

いっぽうでギアボックスは、負荷の小さい日常使いで自動変速任せにしているとスムース。しかし、パドル変速ではダウンシフトがややスローで気乗りしない感じだ。また、低速での取り回し時には、必ずしも断続がなめらかではない。フォルクスワーゲンのDSGとしては、十分に洗練されているとは言い難い。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

新型ティグアンは、パサートと同じインフォテインメントシステムを得た。ベースとなるソフトウェアは、フォルクスワーゲン最新世代のMIB4だ。

センターディスプレイは13インチ弱が標準装備で、15インチにアップグレードすると使い勝手のいいヘッドアップディスプレイもついてくる。


タッチ操作に依存したシステムとしては使いやすいほうだ。しかし、エアコンの温度調整などは実体デバイスのほうが楽に扱える。    MAX EDLESTON

ホーム画面の調整についてはかなり追求しており、重要な機能へのアクセス性は先代より向上。大画面システムにはスペースに余裕が生まれ、画面の余白に散らばったメニューのショートカットが使いやすくなっている。どのパーツを並べるかも選択できるので、使い勝手は大幅に改善された。

この手のシステムには、やはり実体カーソルコントローラーがあるほうがいいとわれわれは考える。エアコンパネルも、独立した実体式のほうが扱いやすい。フォルクスワーゲンのスライダーパネルは、バックライト追加などの改善が施されても使いにくい。しかし、腕を伸ばさないと操作できないシステムとしては、いま市販されている中では上出来の部類に入る。

燈火類

テスト車には、マトリックスLEDヘッドライトのIQライトが装備。照射範囲は良好で、自動減光は素早い。ただし、アニメーション投影機能はあまり役には立っていなかった。

ステアリングとペダル

ペダル配置は、幅広いステアリングコラムの調整範囲と相まって、快適でサポートに優れたドライビングポジションに貢献する。

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

フォルクスワーゲンはティグアンのサスペンションを大幅に改善したとしており、それに関連する乗り心地やハンドリング、ボディコントロールはわれわれの関心を引くところだ。しかし、ゴルフGTIの最新モデルで実証されたアダプティブダンパーのDCCプロを装備してさえ、使い方によって装備内容をかなり慎重に限定するべきクルマである。

テスト車はR−ライン仕様で、20インチホイールに255幅のタイヤを履く。また、アダプティブシャシーコントロールを備えるダイナミックドライビングパッケージも装備するので、プログレッシブステアリングが加わり、センターからの切りはじめがクイックになる。


前輪駆動のSUVとしては、キレのいいコーナリングを見せるが、エンスージアストを満足させるような類の走りではない。    MAX EDLESTON

ガッチリと路面を捉え、ボディ挙動をきっちりコントロールし、背の高いクルマとしてはキレのいいターンインをみせる。そして、全体的には重量を感じさせずに、速めのコーナリングを、もっと低くて軽いクルマのように整然と安定してこなすSUVだ。

断固として鈍いが、安心感のある前輪駆動シャシーのバランスは、あまり魅力的なプロセスではないにせよ、素早く走らせるのが楽だ。プログレッシブステアリングはアシスト効きすぎで、フィルターのかかったようなフィーリングだが、手応えは一定している。電子制御スタビリティコントロールは、オフモードにしても完全にはカットできないが、めったに介入してこない。ただし、この場合はグリップがパフォーマンスを大きく凌いでいるという事情もある。

フォルクスワーゲンにおける中間レベルのSUVに、エンスージアストを喜ばせるような走りは期待しないだろうし、たしかにこれはそういうクルマである。しかし、精密さやスタビリティ、冷静でゆるぎない沈着なハンドリングは折り紙付きだ。

快適性/静粛性 ★★★★★★☆☆☆☆

オプション設定される15段階のDCCプロ・アダプティブダンパーは、ティグアンの乗り心地とハンドリングにかなり広い調整幅を加えることができたように感じられるが、それをより実感するなら、ホイール径の小さい下位グレードを選ぶほうがいい。

このクルマの最上位のアダプティブサスペンションテクノロジーは、ライフやマッチといった18インチタイヤ装着グレードには容易にフィットする。しかし、20インチホイールに40タイヤを履くR−ラインでは、路面に鋭い突起があると突き上げや衝撃音が出てしまう。プリセットのコンフォートモードより路面に追従するしなやかなセッティングも選べるが、実際には衝撃吸収も路面を問わない走りの万能性も、決して期待したレベルには達しない。


テスト車のコーナリングはまずまずのペースだったが、バンピーな路面ではそれほどしつけがよくない。20インチホイールが、アダプティブダンパーの機能を妨げているようだ。    MAX EDLESTON

20インチホイールとワイドタイヤが、キャビンの静粛性に悪影響を与えているのも間違いない。80km/h巡航での室内騒音は66dBAで、2022年に計測したBMW X1 xドライブ23i Mスポーツと同等。キア・スポーテージHEVは、これらより明らかに静かだった。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

3万4000ポンド(約680万円)ほどからはじまる価格帯だが。トップグレードのe−ハイブリッドは4万8000ポンド(約960万円)を超える。コンパクトSUVとしては、明らかにプレミアムな価格帯を狙っている。もっとも、予想される残価も高い。

たしかに、プレミアムブランドならではというような装備水準ではないが、そこはプレミアムブランドと量販ブランドの典型的なパラドックス。量販ブランドは、車両価格に込みとなる装備を削りがちだ。


残価予想はルノーをわずかに凌ぐ程度になりそうだが、同等装備のBMW X1を上回るのはみごとだ。

中間グレードのマッチを選ぶと、前席シートヒーターやフル装備のADAS、パノラミックサンルーフ、アダプティブLEDヘッドライト、ハーマンカードン・プレミアムオーディオ、そしてフォルクスワーゲンのキーとなるインフォテインメントシステムや、ダイナミックドライビングサスペンションとステアリングのパッケージは有償となる。しかも、そのほとんどは、最上位のR−ラインでもオプション扱いだ。

テスト車の平均燃費は、動力テスト込みで14.9km/L、ツーリングだけを抜き出せば15.9km/L。マイルドハイブリッド技術が市街地燃費の改善に大きく寄与しているが、2024年現在の基準で平均的な経済性のファミリーカーを期待すると裏切られる。

スペック

レイアウト

プラットフォームはフォルクスワーゲンの改良版MQBエボで、ティグアンの基本的なレイアウトは従来どおり。エンジンはフロント横置きで、駆動輪もフロントだ。

サスペンションは前ストラット/後マルチリンク。スプリングはコイルで、アダプティブダンパーはオプション。前後重量配分は、実測で58:42だった。

エンジン


プラットフォームはMQBエボの改良版で、FFレイアウトベース。サスペンションはコイルスプリングで、アダプティブダンパーはオプション。前後重量配分は、実測で58:42だ。

駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:直列4気筒1498cc、ターボ、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ74.5×85.9mm
圧縮比:12.5:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:150ps/5500rpm
最大トルク:25.4kg−m/1500〜3500rpm
エンジン許容回転数:6200rpm
馬力荷重比:97ps/t
トルク荷重比:16.5kg−m/t
エンジン比出力:100ps/L

ボディ/シャシー

全長:4539mm
ホイールベース:2692mm
オーバーハング(前):−mm
オーバーハング(後):−mm

全幅(ミラー含む):2150mm
全幅(両ドア開き):3660mm

全高:1660mm
全高(テールゲート開き):2120mm

足元長さ(前席):最大1070mm
足元長さ(後席):580〜770mm
座面〜天井(前席):最大1030mm
座面〜天井(後席):960mm

積載容量:490〜652L

構造:スティール、モノコック
車両重量:1541kg(公称値)/1606kg(実測値)
抗力係数:0.28
ホイール前・後:8.0Jx20
タイヤ前・後:255/40 R20 VXL 101V
コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5 SUV
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:7速DCT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:−/− 
2速:−/− 
3速:−/− 
4速:−/− 
5速:−/−
6速:−/− 
7速:−/−

最終減速比:−

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:14.9km/L
ツーリング:15.9km/L
動力性能計測時:8.0km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):11.6〜11.9km/L
中速(郊外):15.6〜16.1km/L
高速(高速道路):17.2〜17.8km/L
超高速:13.7〜14.5km/L
混合:14.7〜15.4km/L

燃料タンク容量:55L
現実的な航続距離:818km
CO2排出量:149g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザー

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.2回転
最小回転直径:11.7m

ブレーキ

前:−mm通気冷却式ディスク
後:−mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS、EBD
ハンドブレーキ:電動、センターコンソール右側にスイッチ設置

静粛性

アイドリング:41dBA
全開時(4速):74dBA
48km/h走行時:62dBA
80km/h走行時:66dBA
113km/h走行時:69dBA

安全装備

ABS/ESC/EBD/HBA/ASR/レーンアシスト
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人−%/子供−%
歩行者保護性能:−%
安全補助装置性能:−%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温14℃
0-30マイル/時(48km/h):3.4秒
0-40(64):4.9秒
0-50(80):6.9秒
0-60(97):9.4秒
0-70(113):12.5秒
0-80(129):16.1秒
0-90(145):21.0秒
0-100(161):27.7秒
0-110(177):38.2秒
0-402m発進加速:17.2秒(到達速度:133.1km/h)
0-1000m発進加速:31.3秒(到達速度:167.7km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
日産キャシュカイ1.3DIG−T MHEV 158テクナ(2021年)
テスト条件:乾燥路面/気温21℃
0-30マイル/時(48km/h):3.3秒
0-40(64):5.5秒
0-50(80):7.2秒
0-60(97):10.0秒
0-70(113):12.6秒
0-80(129):15.9秒
0-90(145):20.9秒
0-100(161):27.0秒
0-110(177):37.2秒
0-402m発進加速:17.4秒(到達速度:135.2km/h)
0-1000m発進加速:31.5秒(到達速度:168.5km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):3.0秒(2速)/4.0秒(3速)

30-50(48-80):4.0秒(3速)/5.5秒(4速)

40-60(64-97):4.5秒(3速)/5.5秒(4速)/7.5秒(5速)/10.3秒(6速)

50-70(80-113):5.7秒(4速)/8.0秒(5速)/10.6秒(6速)/15.9秒(7速)

60-80(97-129):6.9秒(4速)/8.5秒(5速)/11.4秒(6速)/17.1秒(7速)

70-90(113-145):9.7秒(5速)/12.8秒(6速)/20.6秒(7速)

80-100(129-161):12.3秒(5速)/14.7秒(6速)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温14℃
30-0マイル/時(48km/h):8.8m
50-0マイル/時(64km/h):24.1m
70-0マイル/時(80km/h):46.0m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.58秒

ライバルの制動距離

日産キャシュカイ1.3DIG−T MHEV 158テクナ(2021年)
テスト条件:乾燥路面/気温21℃
00-0マイル/時(48km/h):8.5m
50-0マイル/時(64km/h):23.6m
70-0マイル/時(80km/h):47.3m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

ティグアンは、競合がハイブリッドに絞り込んだり4WDを用意しなかったりするのに対し、エンジンやドライブトレイン、サスペンションの仕様を多数用意して、幅広いユーザー層を満足させる選択肢を用意することで、商業的成功を実現する。

前輪駆動とマイルドハイブリッドを組み合わせたスポーティグレードのR−ラインは、ティグアンの売れ筋仕様にはならないだろう。しかし、ディーゼルのほうが万能性は高いだろうし、PHEVのほうが高性能だとしても、マイルドハイブリッドのeTSIは英国で多く売れるだろう。そして、ウォルフスブルグのクルマに期待するような、穏やかかつ精密で、まとまりのある、走りの安心感と一貫性をもたらしてくれるはずだ。


結論:機能的で完成度は高いが、エンジンやグレードの設定には注文がある。    MAX EDLESTON

直接的な競合車と比較すれば、ティグアンはSUVらしい実用性や万能性を十分に備えていると言える。今回のテスト車に限れば、パフォーマンスやドライバビリティ、上質感も他に引けを取らないが、乗り心地は改善の余地がある。

群雄割拠するこのマーケットには、もっとブランド力やルックスに勝るものもある。そんな中でこのティグアンは、合理的で賢明な資質に強みを見出せるクルマであるはずだ。もっと道具に徹して、配慮が行き届いているに越したことはない。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース

ブラックスタイリングパッケージ付きのR−ラインは、個人的にはまず選ばないだろう仕様である。無駄は省いたほうがいいという主義に反するからだ。ホイールは小さく、デジタル装備やADASは少ないほうがありがたい。アダプティブダンパーもいらないかもしれない。

イリヤ・バプラート

フォルクスワーゲンの新型マルチメディアシステムは、大きな飛躍を遂げた。とはいえ、同じシステムに多機能実体コントロールを組み合わせたスコダ・コディアックに乗ったあとだと、フォルクスワーゲンのそれにはなにか足りないと感じずにはいられない。

オプション追加のアドバイス

高額グレードや大径ホイールは避けて、デジタル装備はお好みで追加しよう。燃費を考えるなら、eハイブリッドかディーゼルを選びたい。

改善してほしいポイント

・キャビンにはシンプルで手触りのいいマテリアルを。アンビエントライトは、控えめにしてほしい。
・20インチホイールを履くR−ラインは乗り心地の静粛性に改善の余地あり。スポーティなテイスト自体は、それほど非難するべきものではない。
・マイルドハイブリッドのeTSI 150と、PHEVのeハイブリッドとのギャップを埋めるフルハイブリッドの設定を検討してもらいたい。