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1992年からの20戦中19回のクラス優勝

1987年にシュコダ130、通称エステルの後継モデルとして登場したのが、フェイバリット。後輪駆動から前輪駆動へ置き換わっても、世界ラリー選手権で勝つという、ブランドの意志は変わらなかった。

【画像】3台のワークス・シュコダ 130/フェイバリット/120 ラピッド 同時期のラリー・レジェンドたち 全129枚

最終シーズンとなる1993年でも、ヴォグゾール(オペル)に次ぐ2位にランクイン。1992年からのカウントで、20戦中19回のクラス優勝という、圧倒的な強さを示した。


シュコダ・フェイバリット 136 L(グループN/1989〜1995年/英国仕様)

L910 ORPのナンバーを下げたシュコダ・フェイバリットはN1仕様の136 Lで、当時のドライバーはウラジミール・ベルガー氏。クラス優勝は四輪駆動のスバル・ヴィヴィオに奪われたが、2位を掴んだ。

その後、1994年から1997年のラリーにも参戦。最近では2000年代初頭のイベント、英国のロンバード・リバイバルでも元気な姿を披露している。だが、そこでオリジナルの1.3Lエンジンは昇天してしまったそうだ。

10年ほど寝かされるが、現オーナーのサイモン・デイリー氏が購入。1990年代のシュコダにも載っていた、フォルクスワーゲン・ベースの1.6L AEEユニットへ置換され、かつてのナンバーのまま公道へ復活した。

将来的には、1993年仕様へ忠実に戻したいと、デイリーは考えている。フル・ロールケージにトリップメーター、補助メーターなどが並ぶ車内は、グループNらしく量産車と変わらない雰囲気を強く漂わせる。

オンロードでの安定した能力を獲得

車重は800kgと軽く、フロントタイヤのグリップは凄まじい。しかし、現在の最高出力は147psで、オリジナルの2倍近くあり、タイトコーナーではオフロード用タイヤが簡単にスピン。脱出加速時には、盛大なトルクステアとの格闘が求められる。

ストレートカットのギア比は低い。力強いエンジンは扱いやすく、サウンドも聴き応え充分。現役だった頃そのままというわけではないが、クラス優勝の常連だったフェイバリットの勇ましさは変わらないだろう。


シュコダ120 ラピッド・クーペ(グループN/1983〜1990年/英国仕様)

他方、泥や岩と距離をおいていたのが、サイモン・ディキンソン氏がオーナーの、1983年式シュコダ120 ラピッド・クーペ。有能で信頼性の高いコンパクトカーであることをサーキットで訴求したい、英国シュコダの期待を背負った1台だ。

この120 ラピッド・クーペの発表は、1982年のロンドン・モーターショー。スタイリッシュな2ドアのフォルムだけでなく、セミトレーリングアーム式サスペンションとラック&ピニオン式ステアリングが与えられ、オンロードでの安定した能力を獲得していた。

英国でのクラスE、1300cc以下のカテゴリーで戦ううえで選ばざるを得なかったのが、サルーンと同じ最高出力57psの1174ccエンジン。許されていたチューニングは、車高を下げることと、フロントへ大容量のガソリンタンクを積むことだけだった。

24時間レースでもクラス優勝 夢のように走る

サイモンの父、故トニー・ディキンソン氏は、1970年代から英国シュコダと協力。F2用のハート420エンジンを積んだシルエット・クーペで、レースを戦った経験を持っていた。トニー自信が、ワークスドライバーに選ばれたのは自然な流れだったといえる。

1983年6月、彼はティム・リード氏と、アンディ・ウーリー氏、ビル・ハント氏とともにチームを編成。スネッタートン・サーキットで開催された、ウィルハイア24時間レースに参戦した。


シュコダ120 ラピッド・クーペ(グループN/1983〜1990年/英国仕様)

ラピッド・クーペのブレーキやタイヤは24時間持ちこたえ、エンジンオイルの消費量も0.5L程度。平均時速101.4km/hの記録とともに、クラス優勝を勝ち取っている。レース後、トニーは「クルマは夢のように走りました」と印象を口にした。

翌1984年の同イベントにも参戦。前年と同じクルーで挑み、完走はしたものの、クラス3位で終えている。

1985年は活動を休止するが、1986年はドニントンパーク・サーキットで開かれた4時間の量産サルーン・イベントへ。トニーはジョー・ウォード氏とのペアで92周を走り、ここでもクラス優勝を掴んだ。平均時速は、91.9km/hだったという。

かくして、英国シュコダによるサーキットでの活躍は、その年で終了。ラリーへの参戦継続へ多大な投資が必要になり、避けられない決断だった。

ラピッド・クーペは36年間保管された後、2023年にサイモンが復活を決意。サスペンションは粉体塗装され、ブッシュ類が交換された。

初期のポルシェ911に似た走り

オリジナルのエンジンは降ろされ、大切に保管されている。現在リアに載っているのは1289ccユニットで、シングル・ウェーバーキャブレターが燃料を送る。

公道を走らせると、まさに珠玉。イグニッション・カットオフと燃料タンク用ポンプのスイッチ以外、インテリアはほぼ量産車のラピッドと変わらない。ステアリングホイールやペダルは、軽く扱いやすい。


左から、シュコダ・フェイバリット 136 Lと、130 LR、120 ラピッド・クーペ

シフトレバーはストロークが長く、ゲートが曖昧。アクセルレスポンスは常用しやすいが、大きなキャブレターが載り、高回転域まで積極的に吹け上がる。リアエンジンらしい挙動は、初期のポルシェ911へ似ている。サウンドも、後ろから響いてくる。

ステアリングの反応は、驚くほどシャープ。ガソリンが余り入っていないためか、フロントのブレーキは、簡単にロックしてしまう。アンダーステアは抑えられ、カーブで加速していくと、リアタイヤの外側に荷重が移り安定性が増す。

僅かにアクセルペダルを緩めると、コーナリングラインが内側へ絞られる。軽快な身のこなしで、操縦性は親しみやすい。当時の同クラスのモデルより、数歩先ゆく運転体験を提供していたことが見えてくる。

今はフォルクスワーゲン傘下になった、チェコのシュコダ。欧州では堅実なメーカーとして、一定のブランドイメージが築かれている。過去のモータースポーツでの活躍が、その一部を醸成してきたことは疑いようがない。

協力:シルバーストン・ラリースクール、サイモン・ディキンソン氏、サイモン・デイリー氏、ジョン・メリング氏

3台のワークス・シュコダのスペック

シュコダ・フェイバリット 136 L(グループN/1989〜1995年/英国仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/3万ポンド(約582万円/現在)以下
生産数:−台
全長:3815mm
全幅:1620mm
全高:1415mm
最高速度:148km/h
0-97km/h加速:14.3秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:780kg
パワートレイン:直列4気筒1289cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:67ps/6250rpm
最大トルク:13.8kg-m/5000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(前輪駆動)

シュコダ130 LR(グループB/1985〜1989年/英国仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/5万ポンド(約970万円/現在)以下
生産数:−台
全長:4165mm
全幅:1600mm
全高:1400mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:7.2秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:730kg
パワートレイン:直列4気筒1289cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:131ps/7500rpm
最大トルク:15.7kg-m/6000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

シュコダ120 ラピッド・クーペ(グループN/1983〜1990年/英国仕様)


シュコダ120 ラピッド・クーペ(グループN/1983〜1990年/英国仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/2万ポンド(約388万円/現在)以下
生産数:−台
全長:4200mm
全幅:1600mm
全高:1380mm
最高速度:152km/h
0-97km/h加速:16.1秒
燃費:12.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:890kg
パワートレイン:直列4気筒1174cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:57ps/5000rpm
最大トルク:9.1kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)