「急性リンパ性白血病の治療法」はご存知ですか?症状や予後についても解説!

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急性リンパ性白血病とは、どのような病気なのでしょうか?
本記事では、急性リンパ性白血病の治療について、以下の点を中心に紹介します。

・急性リンパ性白血病の症状

・急性リンパ性白血病の検査方法

・急性リンパ性白血病の治療法

急性リンパ性白血病の治療について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

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監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性リンパ性白血病とは

急性リンパ性白血病は、リンパ球ががん化して骨髄内で過剰に増殖する血液がんです。この病気は子どもに少なくない傾向があり、成人の発症も見られます。発症の背景には染色体異常が関わることが多く、特にフィラデルフィア染色体という特定の染色体異常は治療方針に重要な影響を及ぼします。急性リンパ芽球性白血病やリンパ芽球性リンパ腫とも称され、これらは同様の病態を示すことがあります。

急性リンパ性白血病の症状

急性リンパ性白血病は、骨髄中の血液細胞の生成が障害され、多くの症状を引き起こします。白血球の減少により、免疫力が低下し感染症状が現れ、発熱や肺炎などが一般的です。また、赤血球の減少による貧血症状が見られ、ふらつきやだるさ、息切れが現れます。血小板減少によって、鼻血や歯ぐきからの出血、皮下出血が起こることもあります。

急性リンパ性白血病の診断・検査

急性リンパ性白血病の診断・検査方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下でそれぞれ詳しく解説します。

血液検査

急性リンパ性白血病の診断は、血液検査から始まります。この検査では、白血球、赤血球、血小板の数値とその特性が詳細に分析されます。特に、血液中に普段は見られない未熟な白血病細胞(芽球)の有無や白血球の数に注目されます。これらの初期検査結果を基にして、さらに骨髄検査、染色体分析、遺伝子検査などの精密な追加検査が行われます。これにより、病気の正確な診断をし、それに基づいた治療計画が策定されます。

骨髄検査

骨髄検査は急性リンパ性白血病の確定診断に不可欠です。この検査では、患者さんの骨髄から採取した細胞を顕微鏡で精密に調べ、白血病細胞の有無やその特徴を把握します。WHOの基準に基づき、骨髄内の未成熟な白血病細胞(芽球)の割合が20%以上の場合、急性白血病と判断されます。リンパ性白血病では、芽球がペルオキシダーゼ染色で3%未満で陽性となる特徴があります。さらに、染色体異常や遺伝子変異の有無も検査され、患者さんに適切な治療法の選定に活用されます。

染色体検査

染色体検査は急性リンパ性白血病の診断に不可欠で、特にフィラデルフィア染色体の存在を確認します。この染色体異常は、9番と22番染色体間の転座によるbcr-abl融合遺伝子が特徴で、治療法と予後に大きな影響を与えます。骨髄検査や血液検査と併せて実施し、患者さんに適した治療法を選択するための重要な情報を提供します。また、中枢神経系への浸潤を調べる脳脊髄液検査も重要です。

脳脊髄液検査

脳脊髄液検査は、急性リンパ性白血病において中枢神経系の浸潤を調べるために行われます。背中から脳脊髄液を採取し、白血病細胞の存在を確認します。この検査は診断と治療計画策定に重要で、検査結果によって治療方法や予後の見通しが変わることがあります。中枢神経への浸潤が確認されると、特定の治療が必要になる場合もあります。

急性リンパ性白血病の治療法

急性リンパ性白血病の治療法には、どのようなものがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

寛解導入療法

寛解導入療法は、急性リンパ性白血病の初期治療で、白血病細胞を減少させ、症状を軽減します。約4~5週間、プレドニゾロン、ビンクリスチン、L-アスパラギナーゼ、アントラサイクリンなどの薬剤を投与し、中枢神経系への浸潤を予防するためにメトトレキサートを脳脊髄液に注射することもあります。患者さんの状態や白血病細胞の反応に応じて治療方針が調整されます。

地固め療法・維持療法

地固め療法は寛解導入療法後に行われ、白血病細胞を減少させる目的で、新たな薬剤を投与し、中枢神経系への浸潤防止のための髄注療法を含む治療をします。続く維持療法では、メルカプトプリンは毎日内服、メトトレキサートを週1回内服することで、日常生活を送れます。これにより白血病細胞の根絶と再発予防を目指します。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、化学療法単独では不十分、または再発した急性リンパ性白血病の患者さんに適用される治療法です。強力な抗がん剤や放射線で骨髄の異常細胞を消滅させた後、HLA型が一致するドナーから正常造血幹細胞を移植します。移植は重篤な合併症リスクがあるため、患者さんの状態を考慮し慎重に行われます。

急性リンパ性白血病の予後

急性リンパ性白血病はどのような予後なのでしょうか。以下で詳しく解説します。

小児

小児の急性リンパ性白血病は、特に3~5歳の子どもに多く、治療成功率は高いとされています。約98~99%が寛解に至り、約80%が長期生存を期待できます。治療はリスクグループによって異なり、再発や寛解に至らない場合には造血幹細胞移植や放射線治療が考慮されることもあります。予後は患者さんの年齢、白血球数、白血病細胞の特性、治療反応に依存し、乳児期や特定の遺伝子異常を持つケースは治療成績が劣ることもあります。

成人

急性リンパ性白血病の生存率は年齢や白血病細胞の特性により異なり、小児期は80%以上の良好な成績が期待されるが、成人は10%以下の場合もあります。特に遺伝子変異を持つ場合は治療が難しいとされています。特に40歳以上ではリスクが高まり、60歳以上でさらに増加します。

急性リンパ性白血病についてよくある質問

ここまで急性リンパ性白血病を紹介しました。ここでは急性リンパ性白血病についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

急性リンパ性白血病の原因を教えてください。

甲斐沼 孟(医師)

急性リンパ性白血病の明確な原因は不明ですが、ウイルスや有機溶剤、喫煙などさまざまな原因が考えられています。
また、大量の放射線治療や抗がん剤治療を受けた後は、リンパ系にある幹細胞ががん化しやすく、白血病が起こりやすいとされています。染色体の異常、特に9番と22番の染色体の先端が切れてくっつく異常が発生すると、白血病細胞を増殖させる異常なタンパクを作り出します。
さらに、骨髄に存在するリンパ前駆細胞が、遺伝子の変異により白血病細胞に変わることも、発症の原因とされています。
白血病細胞が異常に増殖することで、正常な血液細胞の生成が困難になり、さまざまな症状が発生します。

急性リンパ性白血病は完治しますか?

甲斐沼 孟(医師)

急性リンパ性白血病の治療には、化学療法が主に用いられ、寛解状態を目指します。
寛解とは、骨髄検査や画像検査で白血病細胞が見られない状態を指します。治療後も、再発がない確定的な時期はまだ明確ではありませんが、治療終了後4年以上経過し問題がなければ、治癒とみなされることが少なくないようです。
小児の場合、治療によって期待できる効果が劇的に良くなっており、約8割の患者さんで根治が期待できます。成人の場合も治療成績が向上しており、今後治る患者さんが増えることが期待されています。

まとめ

ここまで、急性リンパ性白血病の治療についてお伝えしてきました。
急性リンパ性白血病の治療についての要点をまとめると、以下の通りです。

⚫︎まとめ

・急性リンパ性白血病の症状には、貧血、鼻血や歯茎からの出血、倦怠感や発熱、関節痛などがある

・急性リンパ性白血病の検査方法には、血液検査や骨髄検査、染色体検査、脳脊髄液検査がある

・急性リンパ性白血病の治療法には、寛解導入療法、地固め療法・維持療法、造血幹細胞移植がある

急性リンパ性白血病と関連する病気

急性リンパ性白血病と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液内科の病気

急性リンパ性白血病・リンパ芽球性リンパ腫

骨髄異形成症候群

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

急性リンパ性白血病と関連する症状

急性リンパ性白血病と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

免疫力の低下

貧血

鼻血や歯茎からの出血

食欲不振

発熱

頭痛

嘔吐

腰や関節の痛み

リンパ節の腫れ

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス

KOMPAS慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト