文章が書ける人がやっている”1つ”のこと…書く前にすでに「膨大な差」がついていた

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文章で大切なのは、テクニックよりも「書く前にどれだけ考えるか」「どうやって考えるか」。考え尽くしてなければ、伝わるものも伝わりません。エンタメ系トップブロガー「かんそう」さんが培ってきた文章にまつわる「考え方」「書き方」をまとめた著書、『書けないんじゃない、考えてないだけ。』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。

文章とは書く前から書いている

私は、文章を書いていない状態でも常に文章を書いています。

どういうことか。

「面白い」と思った言葉を耳にしたり、ヒネりの効いた言い回しを思いついたりしたら、すぐにその言葉をメモし、なぜ面白かったかを考え、会話などで繰り返し使うことで、いつでも脳から引き出せるようにしているのです。

言葉を自分の脳に定着させるためには、

1 知覚…刺激に対して意味づけを行う

2 作業記憶…必要な情報を記憶から取り出して情報を一時的に保つ

3 長期記憶…永続的かつ無限に情報を保持する

という3つの過程を踏む必要があります。

そうして蓄積した言葉はその瞬間はなんの役にも立たなくても、後に当てはまる瞬間が必ず来ます。

例文をひとつ紹介しましょう。2018年に、私が音楽番組『ミュージックステーション』の最近の体たらくっぷりについて書いた文章があります。

チャットモンチーが最後のテレビ出演だっていうんで、ミュージックステーション観てたんですけど彼女たちが出るまでの時間、ただの地獄。逆シャングリラ(1)。

そもそも数年前からMステちょっとバグってて、明らかにどっかの劇団から連れてきましたみたいなインチキ臭いガキに昔流行ったMV観せて「こんなカッコイイ曲聴いたことないです!」「歌うますぎ! ヤバイ!」とか言わせるコーナーあってそれでも相当キツかったのに、最近はもう糞企画ここに極まれり! とうとうめでたく出演者が曲やってる時間よりガキのVTRのほうが長くなりました。VTR中タモさんサングラスの下で100パーご就寝されてるだろ。タモさんほど子供に興味ない人いないんだから。

前半はその名残か知らんけど、街歩いてるガキとっ捕まえて『お父さんお母さんの影響で好きになった曲』インタビューして回ってて、

子供「いつもお父さんの車の中で流れてて好きになって〜」

ナレーション「父がいつも車で流している名曲とはっ…?」

子供「え〜恥ずかしい〜〜…たぁ〜〜〜ての糸はあなたぁ〜〜〜〜、よぉ〜〜〜〜この糸はわたしぃ〜〜〜〜」

ナレ「中島みゆきっ…『糸』ぉっ……」

いやいやいやいや! いい! 歌わなくていいから! やめろバカ! 仮にもプロが集う歌番組でへっぽこカラオケ大会聴かされるとかなんの拷問? ナレも無駄に良い声で「糸ぉっ…」じゃねぇんだよ。

子供「お父さんなんでこの曲好きなの?」

父親「いやぁ…歌詞が良くて」

知らん知らん! 知らん親子の思い出の曲とかマジで知りたくないから! 歌詞が良くて? エピソード薄!!!?? わざわざ電話かけさせる意味?? しかも無駄に集計して3位から発表してくれてますけど、なんだこの世界一どうでもいいランキング。まさかランク王国の「渋谷の女性300人に聞いた今使ってるハミガキ粉ランキング」よりどうでもいいランキングがこの世にあるとは思わなかったわ。そんなランキングつけなくていいからせめて週間シングルランキングやってくれよ。大阪のガキが親から影響受けた曲の1位がドリカムの大阪LOVERだったからなんだっつーんだよ。スウェットで駅まで迎えに行ってろ。ワイプの出演者の顔見てみろよ、完全に目が死んでるじゃねぇかよ、全員ずっと泥食ったみたいな顔してるからな。表情筋の妖怪WANIMA(2)ですら真顔、ロングフリーズしてんじゃねぇかよ。

だがこんなもんはまだ地獄の入り口、後半は「出演者の有名曲に合わせてどこぞの高校ダンス部がオリジナルダンス踊る」っていう腐った煮え湯みたいな企画で、例えばV6の『MUSIC FOR THE PEOPLE』で揃ってんだか揃ってねぇんだかわかんねぇやたら人数多くてバタバタしたダンス見せられるんですけど、生とかでやってんならまだしもバリバリ別撮りで、ワンカットごとにグラウンドで踊ってたり渡り廊下で踊ってたりするからテンポ悪くて1ミリも凄さ伝わってこねぇし、実際こんなもんミスしても編集でどうにかなるし、そもそも振付こいつらのオリジナルだから合ってようが間違ってようがわかんねぇし「ああ、そういう踊りなんだな」としか思えねぇしやる意味あるこれ?

それでVTR終わりのスタジオでタモさんに

「…で、どうだった三宅…?」

って振られるV6を俺はどんな顔して見てりゃいいんだよ? しかも三宅も三宅で良い奴だから、

「いやー、すごかったですね…泣きそうになりました」

とか言うんだけど、目ぇカラッカラだったから。ドライアイの見本みたいな目しやがって。森田に関しては完全にヒメアノ〜ル(3)。

(中略)

目ぇ覚ましてくれよ…夢を追いかけるミュージシャンたちの音楽の終着駅、それが『ミュージックステーション』だったはずだろ…?

(kansou「Mステの知らねぇ高校生がダンスするコーナーどういう気持ちで見りゃいいんだよ」より)

数年前からメモしていた3フレーズ

この文章の中に出てくる逆シャングリラ(1)、表情筋の妖怪WANIMA(2)、森田に関しては完全にヒメアノ〜ル(3)の3つのフレーズですが、実はこの文章を書く数年前からメモしていたものだったのです。

1つ目の「逆シャングリラ」は、チャットモンチーの代表曲『シャングリラ』から本来の意味である「理想郷」の逆、つまり「地獄」という意味で普段から愛用しているフレーズでした。

2つ目の「表情筋の妖怪WANIMA」は、彼らを初めて見たときの人間離れした表情の豊かさに衝撃を受け、思わず「妖怪か?」と思ってメモしたフレーズです。

3つ目の「森田に関しては完全にヒメアノ〜ル」は、主演を務めたV6・森田剛のあまりのサイコパスぶりが話題となった映画『ヒメアノ〜ル』を観て、「森田剛=ヒメアノ〜ル」とメモしていたところから着想を得たフレーズです。

言葉を大切にしまっておいて

それが、この日のミュージックステーションでチャットモンチー、WANIMA、V6の3組が揃う奇跡が起きたのです。

結果として、3つのフレーズは記事における良いスパイスとなり、2・3万リポスト、3・5万いいねの大きな反響がありました。

このように、どんな言葉でも必ず輝ける場所があります。

どうか、あなたの心の中から生まれた言葉を大切にしまっておいてください。そう、文章は書く前から書いているのです。

あなたも思いついた言葉やフレーズをどんどん書き留め、言葉にしてほしい。日本語的におかしくても、意味がわからなくても構いません。文章を書き続けていれば絶対にそれが輝くときが来ます。

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