なんと、陸軍と海軍の食糧に「大きな格差」があった…硫黄島の元陸軍伍長が目撃したこと

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なぜ日本兵1万人が消えたままなのか、硫黄島で何が起きていたのか。

民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が9刷決定と話題だ。

ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。

陸軍と海軍の食糧に格差

硫黄島の島民は約1000人だったのに対し、進出した兵士は2万人超。食糧確保は深刻だった。

「島の北の方にサトウキビの畑がありましたね。豊かな島だったと聞いていますよ。それをね、各部隊が分けているんですよ。部隊の所有物みたいにして。自分たちが植えたんじゃないけど、区域をつくってね、これは何中隊、これは何部隊ってね。サトウキビを分けていましてね。それを知らずにうちの兵隊がかじっていたら、どこかの中尉ぐらいの人に叱られていました」

「陸軍はひどかったらしいですよ。12月の中頃だったか、夕方に一人の陸軍軍曹がね、私のところに寄ってきて『海軍の給与はどうですか』と聞いてきました。『もう陸軍はひどくてね』と。それでこれから増配を陳情するって言っていましたね。陸軍の人たちは、みんな空腹をこらえていましたよ」

一方、海軍はまったく違ったという。

「私たちの部隊は、海軍の航空部隊との共同作戦のため島に来たこともあり、食糧は海軍と同じでした。食事は恵まれている方でした。島に来た直後、見張り台の隊長とみられる将校が、原っぱで休憩中の私たちの所にやってきて『食う方と寝る方は心配せんでよろしい』と言いました。まさにその通りで、千葉県にいた時よりも食事は良かったぐらいです。ご飯は真っ白ですよ。みそ汁も出た。本当のみそではなく、粉を溶かしたようなみそでしたが。それに乾燥した野菜とかが入っている。大きな缶詰の牛肉も出た。千葉ではね、牛肉なんてなかったですよ。さすがに(海上輸送を担った)海軍は待遇がいいんですね。あんな島でこんなごちそうがあるとは夢にも思わなかったですよ」

「この島の補給は、陸軍と海軍はまったく別でした。私たちが在島中に、海軍の輸送艦が来たことがありましてね。私たちと同じ飛行場にいる水兵たちは、みんなポケットの中に上等なたばこを三つや四つ入れていましたよ。海軍兵士の間で分散したそうですね。荷揚げしたものが爆撃で吹っ飛ばされないようにすぐ分散する。それでたばこなんかをポケットに入れていましてね」

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