13日に島根県の竹島に上陸した、韓国野党「祖国革新党」の代表チョ・グク氏が、日本政府を強く非難した。また14日、ソウルの日本大使館前でも抗議が行われた。これらの背景には「LINE」をめぐり、日本政府が日本のソフトバンクと韓国のIT大手・NAVERの資本関係見直しを求めていることがある。

【映像】竹島に上陸し批判する韓国野党代表&ソウルの抗議の様子

 LINEは元々、NAVERの日本法人が開発したアプリケーション。現状はソフトバンクとNAVERが、LINEヤフーの親会社(Aホールディングス)の株式を50%ずつ保有している。しかし、不正アクセスによってLINE利用者の大規模情報漏えいが2度起こったことを受けて、日本政府が行政指導し、NAVERとの業務委託関係を見直すよう要求。LINEヤフーは8日、業務委託関係の見直しを発表した。

 こうした中、韓国では「LINEが日本に奪われる」との反発が起きているのだ。解決のためには何が必要なのか、日韓関係への影響は。『ABEMA Prime』で議論した。

■ひろゆき「総務省が資本関係まで口を出すのは越権行為では」

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「技術的な問題として、NAVERのクラウドがセキュリティー的に危ないのであれば、総務省が『基準をクリアしたクラウドサービスを使って』と指導することはあり得る」とする一方で、「資本関係にまで口を出すのは越権行為だ」との見方を示す。

 中国製品の利用制限が進むアメリカでは4月、TikTokの利用禁止を盛り込んだ法案が可決された。ひろゆき氏はこれを引き合いに、「アメリカはちゃんと法律を作った。今回も総務省が独断で決めるのではなく、国会で『NAVERの資本比率がダメ』という法律を定めるなら従うべきだと思う」と述べる。

 また、LINE開発の経緯として、「当初のスタッフはほぼ全員韓国人だった。日本で成功するために“国産SNS”として日本人スタッフが営業したが、エンジニアもサーバーも韓国発。実態としては、今も韓国の会社が作る韓国のサービスだ」と説明。今後の対応について、「大量のエンジニアを解雇したとしてどうするのか。やるとしたら、日本企業に籍だけ移して、同じ人物を『日本の会社で働くエンジニア』とするだけではないか」と疑問を呈した。

 2011年に開始したLINEは、日本で月間9500万人、アジアでも台湾2200万人、タイ5300万人が利用するサービスだが、Nielsen「Koreanclick報告書」によると、韓国では人口5175.1万人(2024年)に対して、ユーザーは238.5万人。首位である「カカオトーク」の4393.6万人(2010年開始)と大きく差が付いている。

 ビジネス面で考えると、「メッセンジャーサービスは儲からない」とひろゆき氏は語る。「LINEの場合だったら、スタンプを買わないとユーザーは1円も使わない。しかし、メッセージは膨大なデータ処理にお金がかかるため、日本資本はやらなかった。NHN(NAVER)は資金力があって投資できたから、日本で広がった。今から投資して回収するとなると、『めんどくさい』という会社のほうが多い」。

■個人情報の意識と「LINE」への認識、日韓に差?

 韓国と日本の関係に詳しい峨山(アサン)政策研究院の崔恩美(チェ・ウンミ)研究委員は、韓国で反発が起きる背景には、「個人情報」に対する意識の違いがあると説明する。韓国人から見ると、日本人は個人情報保護に敏感だそうだ。

「コロナ禍では、感染経路をわかりやすくするため、お店で自分の個人情報を全部入れたQRコードをかざしていたが、日本では抵抗感が大きいはずだ。また、韓国では『住民登録番号』を入力しないとサイトなどの会員になれないことも多く、その感覚で何十年も生きてきている。個人情報の流出自体はダメなことだが、自分が許可した範囲であればそこまで大きく考えない。LINEヤフーの流出も韓国と日本で重さが違い、“韓国の企業なのに、日本の総務省がそこまでする必要があるのか”との不満がある」

 加えて、「LINE」そのものに関する認識の違いもあるという。韓国人はそもそもLINEを知らないが、一方で「韓国の企業が作ったサービスが日本に強奪される」といった印象を覚えているそうだ。「“NAVERは韓国で育った企業”とのイメージが強く、“LINEもこっちのものだ”という感覚が強いかもしれない。逆に日本では“日本のサービスだ”と思っている人が多いと思う。LINEヤフーの親会社への出資は50%・50%なので、その感覚も日韓で異なる」とした。

■反日感情への影響は?「悪くなることはないと思う」

 対日感情には、どのような影響が考えられるのか。崔氏は「2019年の韓国向け輸出規制では、政府同士が戦った。しかし今回は政府間が揉めているというより、よりよく解決できるように政府同士で管理している印象がある。日韓関係には悪影響を及ぼさないのではないか」と説明。一方で、「今後の決定によって、一般人の認識とのギャップが大きくなった時にどうなるかだ」とする。

 これを機に、尹政権が反日路線へ転換する可能性について、支持率欲しさに動くことはないとの見解を示す。理由としては、仮に反日路線に舵を切っても、政権批判の「反日勢力」が支持に回るわけではなく、政権支持層が離れていくだけでメリットがないこと。また、ここまで世論に押されて政策転換した例がないことを理由にあげる。

 一方、韓国には「屈辱外交」という言葉もあると説明。「韓国では『不適切な対応』を受けている認識。日本に言いたいことを言わなければ、政権に対する反発は大きくなる。ただ、日本に厳しい目線を持っていて、今回の件でも“韓国でなくアメリカの企業でも同じ事をやるのか”と考える人もいる」と述べた。(『ABEMA Prime』より)