テスラの自動車が中国のデータセキュリティ要件に合格したことを受け、中国当局がテスラ車に対する規制を撤廃しました。この発表はテスラのイーロン・マスクCEOが中国の李強首相との会談を行った後に行われたもので、規制解除によりテスラの運転支援ソフトウェア「フルセルフドライビング」が間もなく中国で利用可能になるとの期待も高まりました。

Tesla Soars on Tentative China Approval for Driving System - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-04-29/tesla-clears-key-china-fsd-hurdle-with-baidu-mapping-deal

Musk visits Beijing as Tesla's China-made cars pass security rules

https://www.cnbc.com/2024/04/29/musk-visits-beijing-as-teslas-china-made-cars-pass-security-rules.html

テスラの電気自動車は中国で最も人気のある車のひとつですが、アメリカ本社を置くテスラへ中国人のデータが送信されてしまうとの懸念から、一部の政府関連施設での使用が禁止されていました。

中国自動車工業協会と中国国家コンピュータネットワーク緊急対応技術チーム/調整センターによると、2022年と2023年に国内で発売される自動車はすべて新たなデータセキュリティ要件が課せられていて、これに合格しない限り国内での販売は許可されないとのことでした。

新たな規則では、自動車が顔認識データを匿名化し、車内データを収集しないことをデフォルトとしており、データを車内で処理し、処理についてユーザーに目立つように通知しているかどうかがチェックされます。この規則にテスラのモデル3とモデルYが合格し、一部地域での使用が解禁されました。今回はテスラのほか、BYDやLotusなど国内企業も合格したとのことですが、どの地域で解禁されたのかは明らかになっていません。

今回の発表後、テスラ株は15%急騰し、3年以上ぶりの高値をつけました。



発表前にはマスクCEOが中国へ電撃訪問する様子が確認されていて、テスラの中国工場立ち上げを支援したとされる李強首相との会談も行われたと伝えられています。

テスラは中国への参入当初は歓迎されたものの、BYDを筆頭とする国内メーカーとの激しい競争に直面し、その勢いは衰えています。Bloombergの試算によると、中国の自動車市場におけるテスラのシェアは2023年第1四半期の10.5%から2023年第4四半期には約6.7%に縮小したとのことです。

今回マスク氏が中国を訪問したことで、テスラの運転支援ソフトウェア「フルセルフドライビング」が間もなく中国で利用可能になるとの期待も高まっているとのことですが、XpengやXiaomiを含む多くの地元企業が先進運転支援システムを自動車のセールスポイントとして活用しているため、中国は外国企業より国内企業の支援を優先するとの見方もあります。JLウォーレン・キャピタルのジュンヘン・リーCEOは「中国でフルセルフドライビングが展開される可能性は極めて低く、高品質の代替ソフトが国内に数多くある以上、中国がテスラを支援する戦略的価値はありません」と述べました。

一方でウェドブッシュ証券のシニアアナリストであるダン・アイブス氏は「これは中国におけるフルセルフドライビングの可能性を開くものであり、テスラにとって真に絶好のチャンスになると見ています。テスラにとって転換点となるでしょう」と述べ、国内での規制が解除されたことで、テスラがより一層躍進できる機会を得たと指摘しました。