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それは余りに驚きの采配という他ないだろう。チャンピオンズリーグ常連である強豪RBライプツィヒに対して極端な守備的布陣で臨んだSCフライブルクは、その翌週に行われた昇格組で最下位に沈むSVダルムシュタットを相手にしても、まったく同じシステムで試合に臨んでいたのだ。

 とりわけそのライプツィヒ戦では4失点を喫するなど、シュトライヒ監督は守備面において厳しく批判していたにも関わらず、守備役を担った7選手(アトゥボル、キュブラー、カイテル、エッゲシュタイン、へフラー、ギュンター、堂安律)をそのまま起用していたのである。

リベロに入ったカイテルは、「今週、僕たちは明確な議論を行なっていて、そこでは内側のラインと深さをもっとうまく確保していくこと、そしてコミュニケーションをよりよくはかっていく事が話し合われていたんだ」と説明。

 その点でいえば今回のダルムシュタット戦でみれば、守備面に関して改善された部分は確かに見受けられてはいたものの、ただそれはライプツィヒとの力の差があったことも多分に影響していることだろう。

 「ライプツィヒの攻撃力はトップレベルだからね。特にあのスピードは」とカイテル。「でも僕らはより集中力をもって、そして深さもしっかりと確保しながら、この試合でお互いをサポートすることができていた」と強調した。「無失点で抑えられたこと、そして勝ち点3を確保できたことに満足しているよ」

 だがその勝ち点3を確保できた背景には、 ダルムシュタットを相手にして攻撃面ではむしろ、ライプツィヒよりも下回る低調なパフォーマンスを露呈したという事実もある。

 「僕らはもっとボールをうまく扱っていかないといけないし、守備面でももっと前線でよりスペースを確保できるよう、相手を走らせていかないといけないんだ。そして最後に得点を決めていかないと」とカイテルは説明。

 そんな「泥臭い」試合展開の中で、最終的に唯一の得点となる「非常に重要な」決勝弾を沈めた、堂安律へ賞賛の言葉を口にした。

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シュトライヒ監督「アジア杯でも同じ問題を露呈」

 特に堂安はこの試合では守備面において存在感を発揮しており、とりわけ前半27分にアーロン・ザイデルへ懸命に追い詰めたスプリントは相手のクロスからの得点チャンスを阻むものとなっており、逆に攻撃面ではFWミヒャエル・グレゴリッチュとのワンツーから、強烈な左足でゴール隅に決めるなど、まさにこの試合の前半でみせていたパフォーマンスは右ウィングのお手本のようなプレーであった。

 試合後、シュトライヒ監督は「あのようなプレーをやってはいけない」と、今冬に開催されたアジア杯におけるパフォーマンスに関し、明確に堂安に伝えていたことを明かしており、この大会で日本代表MFから以前より指摘していた、守備面における姿勢の問題点が改めて見受けらられていたという。

「律は彼のプレースタイルを少し変化させる必要があったんだ。もちろん彼ならきっと、それができると思っていたよ。素晴らしい選手なんだ。見事なターンを武器に俊敏さ、軽快さを持ち合わせ、さらに体は決して大きくはないがパワーフルさもみてとれる。だからデュエルで彼にはもっと別の姿を見せてほしかったんだ」

 その言葉から発奮し、進化を遂げた堂安は、現在は安定してピッチ上でその期待に応える姿をみせられており、「彼がディフェンス面で以前よりもさらに存在感を発揮しつつ、それでいて得点もまた決めてみせているというのは、これは大変に興味深いことだよね」と指揮官。

 事実スタッツに目を向けて見ても、アジア杯前ではリーグ戦16試合で1得点1アシストだった堂安だが、それ以降の9試合では4得点1アシストと、明確な改善をみせているところだ。

 特に今回のダルムシュタット戦で沈めた「とても重要な」決勝弾によって、SCフライブルクは3年連続となる欧州リーグの舞台に立つチャンスを再び手にするなど、その存在感は日増しに高まるばかり。

 「あれは堂安が練習でよくプレーしていたもので、常に体を寄せてファーコーナーにシュートを放つんだ」と明かしたカイテルは、「ここのところの堂安のプレーには目を見張るものがあるよね。対人戦も強烈だし、多くのことをこれまでに吸収してチームにとって欠かせない存在となっている」と惜しみない賛辞を贈っている。