【紅麹サプリ事件】小林製薬元社員が激白「社長と役員が機能していなかった」

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「問題が発生したときも、驚きはありませんでした。それくらい社内の労働環境はひどいものでしたから」

今年3月まで小林製薬に勤務していた元社員のAさんは嘆息を漏らした。

同社が販売した『紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ』などのサプリを巡る健康被害に歯止めがかからない。4月8日時点で死者数は5人、入院者数は216人に上る。Aさんは紅麹サプリに直接関わったわけではないが、その社内事情には悩まされていた。

「部署を問わずアイディア出しがあり、毎月1万本以上の企画が集まるんですが、採案会議では、役員と違う意見があれば怒鳴り散らされます。役員が参加者全員の前で社員に声を荒らげるなんて当たり前。でも、止める人はいません」

パワハラ紛(まが)いの役員の態度について、見かねたAさんの同僚が昨年、直接、小林章浩社長(52)に改善を訴えたというが状況は変わらなかった。人事部に相談しても同じだったという。Aさんが続ける。

「社内の異動があまりに頻繁で、私が関わる十数人のチームでは、去年だけでメンバーや上司が数ヵ月に一回の頻度で変わりました。さらに、私の知る限り引き継ぎの文化が確立されていません。後任には残ったメンバーで教えるのですが、どうしても専門的な情報まではフォローしきれない。今回の事件は、そういったことが積み重なって起きたんだと思います。本来はこういうことがないように社内環境を整えなければならないはずの社長や役員が、機能していないんです」

このような閉鎖的な社内環境を生んだ一因とされるのが創業家一族のワンマン経営だ。なかでも現在の6代目社長・章浩氏の父で、代表取締役会長を務める小林一雅氏(84)は″小林製薬の天皇″と言われており、’76年に4代目社長に就任して以来、48年にわたり代表権を保持し、トップに君臨し続けている。

そんな旧態依然とした社内環境に拍車をかけたのが人材の流出だ。

「以前は一雅会長に対しても″物言える社員″がいました。とくに文系出身の会長が『知識に乏しい』と語る医療機器分野は、専門知識を持つ社員の声をよく聞いていました。しかし’12年に子会社の医療機器メーカー・小林メディカルを売却して以降、関連会社の整理などを進め’15年には医療機器事業から完全撤退した。そのなかで優秀な社員が続々と去ってしまい、独裁がさらに強まっていきました」(別の小林製薬元社員)

経営陣の独善的なふるまいや、場当たり的な引き継ぎなど労働環境に問題があったことは事実なのか。小林製薬に質問状を送ったところ、「紅麹関連製品の回収および体調不良を感じておられるお客様のお問い合わせへの対応等に全力を上げて取り組んでおり、回答を差し控えさせていただきます」と返答があった。

歪(いびつ)な企業体質が生んだ不祥事なのだとしたら、けっして許されるものではない。

『FRIDAY』2024年4月26日号より