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 トーマス・トゥヘル監督は、自身のキャリアにおいて最も大きな成功を収めた地、イングランドのロンドンへと帰還する。だが今回のCL8強アーセナルとの1stレグにおいて、同様の大きな成功を収められるかは非常に厳しい状況だ。まずバイエルンはドルトムントとのドイツ頂上決戦に続いて、昇格組ハイデンハイムにも敗戦。

 ドイツ杯で3部相手に敗退を喫し、さらに4月を待たずして11連覇中のリーグ戦で白旗宣言が出されるなど、マックス・エベール競技取締役が「恥」と表現した状態にまで陥っている。「日曜日に我々は腹を割って現状について意見交換を行った。」

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苦境に喘いでも、エベール氏「不可能なことはない」

 試合後にミュラーが口にしていたように、ここから戦闘モードに入ってロンドンに向かわなくてはならない。確かに過酷な相手だが、よく言うように、不可能なことはないのだから。それにCLに関しては我々はここまでうまく戦えているし、勝利を目指していくよ。

 不可能なことはない、それはUEFAからの制裁処分により、本来は立ち入り禁止となっているバイエルンファンたちが、試合会場に姿を現す可能性についても言えそうだ。「そこにいたとしても、驚きを覚えることはないだろうね。」

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アーセナル戦にむけ続々と復調も「まだ本調子にない」

 とはいえ今回の対戦では明らかに、下馬評の上ではバイエルンが挑戦者の立場ということになるだろう。マヌエル・ノイアーの復帰が見込めるとはいえ守備面におけるミスの連鎖解消に直接繋がるものではなく、またリロイ・サネやアレクサンデル・パブロヴィッチらが間に合ったとはいえ、「本調子にはまだ程遠いことは当然」とエベール氏。

 それでも言い訳を探すことなく「このチームが持つクオリティ」を信じ、「シーズンを通じての浮き沈みの激しさを」解消することを要求。「わずかな気の緩みも許されると思っているのであれば、それではやっていけない」と檄を飛ばした。

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バイエルンの好材料1:CLでの経験値

 それではこの試合におけるバイエルンの好材料とは、いったいどのあたりにあるだろう。「チャンピオンズリーグという舞台における経験値では高いものがあるし、それに欧州の舞台での戦い方はプレミアリーグとはまた異なるタイプのもの。そのあたりをうまく活用していくことだよ」と、トゥヘル監督。

 「ただそれでもアーセナルは現時点でプレミア最高のチームであり大きな試練。アルテタ監督は2年目にしてこれほど高レベルで、しかも精力的にプレーするチームを作りあげた」と、賞賛の言葉を続けている。加えて直近3試合でバイエルンは5−1でアーセナルより勝利。通算対戦でも12試合で7勝中だ。

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アルテタ監督「成長の証をみせたい」

 「それはあくまで過去の話であり、そもそもバイエルンのCLでの強さの歴史を思えば驚く話でもない。むしろ我々としては自分たちの成長の姿をここで表現したいんだ。これまでに学んだことを生かす、それこそが今回の使命であり非常に楽しみにしていることだよ。」とアルテタ監督。

私はトゥヘル監督の仕事ぶりを大変リスペクトしており、彼から多くのことを学んできた。バイエルンをしっかりと分析していくならば、いかに彼らがトップクラブであるかがよくわかるだろう。だからこそ今回の試合では我々は、自分たちの目指すところにまで持っていかなくてはいけない。それができれば勝機を見出せるはずだ。」

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バイエルンの好材料2:ケインとアーセナルの相性

 CLでのバイエルンの強さに加え、もう1つの警戒ポイントはハリー・ケインとの相性だろう。「過去10年の数字は驚くべきもの。あらゆる角度から得点でき、お膳立ても見事なものだ。それを周りの選手からも受けられる。それを避けないと」とアルテタ監督が話すように、1992年から始まったプレミアリーグの歴史の中で、ケインほどガナーズから得点を決めた選手は存在しない(14得点)。

 ただそれでもバイエルンファンにとって、ケインの相性の良さへの期待値もまた限定的なものだ。これらの14得点のうち、実に半分がPKによるもの。しかもこれほど得点を決めながらも、ケインとアーセナルとの対戦成績は6勝5分6敗とイーブンでしかない。逆に言えばPKがこの試合の分かれ目となってくるのか?

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ガブリエウ・ジェズス「バイエルンはバイエルン」

 いずれにせよ母国ブラジルからブンデスリーガを見てきたガブリエウ・ジェズスから見れば、「バイエルンの歴史は誰もが知るところで、CLやブンデスでタイトルを重ねてきた実績がある。そのクオリティを知らないものはない」ことに変わりはない。「たとえ最近数試合でうまくいかなかったとしても」気の緩みは禁物なのだ。

 「バイエルンであることに変わりはない。いつだってやられる可能性はあるしそれを心に留めておかないと」とジェズス。「ケインは最高の点取り屋であり、彼との対戦は本当に素晴らしいこと。旧友のサネやムシアラ、ニャブリ。ミュラーのような質の高い選手たちが揃っている。本当に見事な布陣だよ。些細なところが勝負の分かれ目となる。全員の状態が良いことも重要だろう」と言葉を続けた。

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パスカル・グロースが語る、アーセナルの強さ

 では逆にアーセナルの強みとは何か?それは週末にそのアーセナルにホーム戦で敗れた、ブライトンのパスカル・グロースがよく知るところだろう。「強力な布陣を誇るウィング陣を武器に積極的に1vs1を仕掛けてくるし、うまく組み合わされた中盤は対人戦に強く、その卓越したカウンタープレスを展開できる。非常に安定感があって、彼らとの対峙は非常に困難だ」とコメント。さらにプレミア最強CBコンビに対しては攻守にわたってその高さが驚異となるものであり、もはやこれといった弱点は見当たらない印象でしかない。

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【アーセナルの先発予想】ラヤ - ホワイト、サリバ、ガブリエウ、冨安健洋 - ジョルジーニョ - ウーデゴール、ライス - サカ、ハヴェルツ、ガブリエウ・マルティネッリ

【バイエルンの先発予想】ノイアー - キミヒ、デ・リフト、ダイアー、デイヴィス - ライマー、ゴレツカ - L.サネ、ムシアラ、コマン - ケイン
【バイエルンの欠場見込】ブイ (筋損傷)、ブッフマン (筋断裂)、サール (十字靱帯断裂後)、
【バイエルンの追加情報】最近アピール中のニャブリも先発候補として名乗り。ノイアー、サネ、コマン、マズラウイと同様に、パブロビッチも最終トレーニングに参加し、ロンドン行きの飛行機に搭乗した。