画廊と美術館での学芸員経験をもち、美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らし。年金暮らしで倹約家の小笠原さんはお金を使わずに、暮らしを楽しんでいます。自らの節約術を「ケチカロジー」と名づけている小笠原さんの、最新ワザを紹介します。

長年続けてきた節約生活

ケチに徹した自己流倹約術を『ケチカロジー』と名づけて、私は長年節約生活を続けています。たとえば今私が居る場所は、兄が遺した机の前です。

【写真】昨年のカレンダーを再利用!

この机を「わがもの」にするまでの私は、食卓を机代わりにしてきたので、机というものは持っていませんでした。「ザ・デスク」が、こんなにやる気を起こさせるものとは知りませんでした。その成果があったかは疑問ですが…。

レシートは裏をメモ帳にして活用

さて、そのデスクの上にはメモ帳があります。それはレシートの裏面であり、20枚ほどをたばねて洗濯バサミでとめてあります。レシートは買ったものを確認したあと、こうして使えば始末にもよく、利用価値があります。

ほとんどが同じ紙幅なので、スッキリまとめられます。ポイ捨てしがちのレシートを再活用する点が、「ケチカロジー」と言えるゆえんです。

洗濯バサミは洗濯以外にも二次利用できる

先ほどの洗濯バサミは洗濯物だけでなく、クリップに代わる意外な便利グッズです。文房具のダブルクリップなどより軽やかにはさめるのがポイントです。これを私は同じデスク上にある小型整理箱の縁にはさんで10個ほど並べています。

大事な点は、洗濯バサミの色を統一することです。多色では洗濯物を思い起こさせて、いかにも代用品に思えてしまいます。見栄えのスッキリ感こそ、やる気の原点なのです。これも「ケチカロジー」ですね。

洗濯バサミは、デスク周りですから黒か白が適色だと思います。とくに黒は、文房具のようにも見えなくもないのです。また、私にとっての洗濯バサミは、優れた備忘用品です。たとえば提出予定の公的文書や、団地の点検日について書かれた連絡紙、また覚え書きをしたものなど、ファイルに入れるまでもないようなメモをはさんでおくのに重宝しています。用ずみになれば、洗濯バサミをまた整理箱の縁に戻しておけばいい。安上がりなのも長所ですよ。

昨年の卓上カレンダーの暦を変えて、今年も再利用

こちらの卓上カレンダーは、前年のものです。花の絵の部分をもう一年鑑賞したいので、前年の暦の上に、今年の暦を手書きした紙を貼って再利用してるのです。別の部屋の壁掛けカレンダーも、この紙貼り方式で、一年だけでは廃棄しがたい写真や絵柄を二年鑑賞しています。

処分するはずだった家具も「ひらめき」で使い続ける

机の下にはストック食材を入れたキャスターつき20センチ幅のボックスが押し込められています。机は幅120センチあるので、足元に置いても狭くなりません。

このボックスは実家で使われていたポリボックスの最下段一つです。家具類をできるだけ所有したくない私ですが、この引き出しは必ずや役立つと思って、実家を処分するときに持ってきました。

私は食器棚も持っていないので、食器や調理具や調味料などはシンク下の棚に一括して入れているます。ただ、ストック食品を収めるほどのスペースがなかったのです。ですから机の下とひらめいたときの適所感は、「やったー!」です。

お昼時、腰かけたまま片手で、サラサラと車の音を立ててレトルトカレーや乾物を出すときのなんという爽快感! そして常に、このボックス内に非常用食品をストックしておこうという気を起こさせる、無料で獲得した便利グッズといえましょう。

一杯用のコーヒーやお茶は何度も楽しむ

次は、机に向かいながら飲むお茶類です。毎日飲みたいものが異なるので、決まってはいませんが、ある日無性にコーヒーが飲みたくなりました。でも、とっておきの一服(ワンドリップ)を使いきるのがもったいなく、思案した後、ハタと気がついたのが次の手です。

ワンドリップコーヒーには、カップ口に掛ける厚めの紙がついていますね。それを、袋に注意しながら切り落としたあと、コーヒー粉入り袋だけを鍋に4、5杯分の水に入れて煮出すのです。十分濃いコーヒーが数杯分抽出されます。冷蔵庫で保存すれば、風味は低下しますが、それにこだわりのない私には、一杯分で5度楽しむお茶タイムに満足しています。この煮出し法はコーヒーだけでなく、ティーバッグや緑茶パックにも転用できます。

どれも、一杯きりで捨てるなんて私にはできませんからね。飲むだけなく、この使った後のティーバッグは、食後、脂のついた食器などを、洗う前にふき取るのに活用できます。そのほかには、一回飲んだ緑茶パックでご飯を炊いたこともありますよ。これが「小笠原式茶めし」。ケチカロジーの極みではないでしょうか。

ところでその炊飯時、お米を洗ってとぎ汁を捨てるのには、てのひらでお米がこぼれないように受けるより、それ専用の調理具か、なければ写真のように小さな丸ザルを使うと便利です。あ、無洗米をお使いでしたら余計なお世話で、失礼しました。

無洗米は便利ですが、若干高価なので、ケチカロジアンは手洗い米で我慢我慢です。