コロナ禍を機に鹿児島へ移住したという、料理研究家の門倉多仁亜(タニア)さん(57歳)。土地ならではの野菜や新鮮な魚が豊富な鹿児島では、近所の人からおすそ分けしてもらう機会も多く、食材の旬に東京にいたとき以上に敏感になったそう。料理との向き合い方も変わったと言うタニアさんの「日々の食事の工夫」をご紹介します。

火鉢でおもちを焼いて昼食に

「庭にはり出すテラスは、冬でも日が当たって暖かいので、景色をながめながら過ごす時間が気に入っています。ここでおもちを焼いて食べるのが、簡単だけどぜいたくなランチ」。炭火をおこすのは夫、ヒデさんの役割です。

ご当地食材を楽しみながら食卓に

玄関前には、近所の人からのおすそ分けが置かれることもあるそう。「伝統野菜の桜島大根や、旬が短い大名タケノコなど、鹿児島ならではの野菜も豊富。工夫しながら調理するのも楽しいんです」

旬の食材から献立を考える

食材の買い物は道の駅や産直市場で。「季節を問わず食材がそろう都会のスーパーとは違い、旬のものしかありませんが、そこが魅力。事前に献立を決めるのではなく、買った食材からなにをつくるか考えるようになりました」

ドイツ式の冷たい夕食「カルテス・エッセン」でタンパク質を手軽に

「カルテス・エッセン(冷たい食事)」とは、パンを主食にした軽い食事のこと。「チーズやハムなど火をとおさないもののほか、温野菜やスープを添えたりと、組み合わせは自在。調理の手間がなく、洗い物も少ない手軽さも魅力」

季節のフルーツはジャムにし、パンやヨーグルトと

庭のキンカンやユズ、畑で育てたブルーベリーやスモモなど、旬の果物は自家製ジャムに。「その土地で採れるものを使うので、鹿児島に来てかんきつ類のジャムをつくることが増えました。離れて暮らす母にも送っています」

丸ごと一尾もらった魚は、だしをとって保存

「東京では魚を切り身で買っていましたが、移住後は、新鮮な魚を丸ごといただく…なんてことも。身以外を捨ててしまうのはもったいなくて、煮込んで、だしをとるようになりました」。冷凍保存し、スープやリゾット、鍋つゆなどに。

●魚のだしのとり方(材料とつくり方)

白身魚のアラをボウルに入れ、沸騰した湯をかけ、冷水を流しながらヌメリや血合いをよく洗い流す。鍋に移し、酒と水をひたひたになるほど注ぐ。香味野菜(ネギ、セロリなど)とハーブ(フェンネル、タイムなど)を加えて強火で熱する。

沸騰したら中火でアクを取りつつ40〜60分煮る。ザルでこして完成。味を見て塩、コショウを加える。ジッパーつき保存袋に入れて冷凍保存する。

●だしを使ってリゾットに(材料は2人分)

フライパンにオリーブオイル大さじ1を熱し、みじん切りのタマネギ1/2個分、洗っていないお米1/2合の順で炒め、白ワイン大さじ2〜3を加える。魚のだし2カップは、お玉1杯分を注ぎ、汁けがなくなったら同様に注ぎたす。

15〜20分ほど煮て、固ければ水をたして煮る。仕上げにすりおろしたパルメザンチーズ大さじ3〜4を加えて全体をさっと混ぜ合わせる。