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福祉現場で活躍する若手職員の日本一を決める大会「社会福祉ヒーローズ賞」で、知的障害者の就労支援スタッフとして働いていた大分市の男性が最優秀賞に選ばれました。活動を通して障害がある人が働き続けるための秘訣を探ります。

【写真を見る】日本一の福祉ヒーロー グランプリに輝いた男性 知的障害者の就労定着に奮闘

「社会福祉ヒーローズ賞」で最優秀賞を受賞したのは、社会福祉法人・曉雲福祉会の丹羽信誠さんです。丹羽さんは、大分キヤノンと曉雲福祉会が設立したキヤノンウィンドで8年半働き、知的障害者の就労支援に携わってきました。

丹羽信誠さん:
「本当に感謝の気持ちでいっぱいです。どんな領域であっても社会福祉の魅力っていうのは人と向き合う仕事に変わりないということを述べたのが皆さんに伝わったのだと思う」

キヤノンウィンドでは、知的障害者26人を社員として雇用していて、福祉会の専門職と大分キヤノンの従業員とともにカメラ生産の一部を担っています。丹羽さんが取り組んだ事の一つが社員数増加に伴う「業務の拡大」でした。しかし、障害特性と新しい作業のミスマッチが起こり、職場を去る社員が出ました。その苦い経験が様々な工夫を生み出すきっかけとなりました。

丹羽信誠さん:
「社員一人一人の作業を細かく分解し、スキルマップに起こしました。こうすることでどの社員がどの作業ができて、あるいは苦手なのか、一目瞭然でわかるようになり、全体の作業量がわかるようになりました」

現場で直面する様々な課題は、「ものづくり」、「福祉」それぞれの立場で協力し解決の糸口を探ります。実際、カメラ本体の一部に使用する部品について、規格通りに加工するための補助器具を新たに開発しました。社員が迷わずに、安心して作業に携わることができるよう工夫されています。職場環境を整えた結果、業務は当初の2種類から約60種類まで拡大しました。

丹羽信誠さん:
「互いの強み、知見をいかしあうことでこの現場を支えるんだという意識ができてきたと思うので、社員みんなが安心して働き続けられるきっかけになっていると思います」

キヤノンウィンドの社員26人のうち、10年以上勤務する人が15人にのぼり、就労継続を実現する人が多いといえます。

キヤノンウィンド小林浩社長:
「きちんとした丁寧な実習の期間を設けて社員化することで安定雇用にもつながっている。毎年1人ずつ採用していて、より豊かな職場もしくは人生を歩んでほしい」

キヤノンウィンドの社員、分藤明男さんは会社の設立初期のメンバーで、今年で勤続15年を迎えます。一日6時間半、集中して仕事をし、休日は個展を開催するなど画家としても活動しています。

分藤明男さん:
「キヤノンウィンドの仕事は楽しい。仕事をしていいことは、色鉛筆を買えること。無くなったらまた買える」

知的障害者の全国の平均勤続年数は9年1か月。身体障害者に比べて短く、就労定着が課題となっています。働きやすい職場作りに向けた現場の挑戦は続きます。