名店「和久傳」で料理長を務めた実力派店主による「今までにない」日本料理店が京都・上御霊神社近くにオープン

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関西を代表するフードコラムニストであり、食べロググルメ著名人の門上さんが推薦する日本料理店は、京都・鞍馬口にある「徳ハ本也」だ。

教えてくれる人

門上 武司

1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

囲炉裏を使った焼き物を供す日本料理店

京都市の北部に位置し、5月には千年以上続く「御霊祭」が行われる上御霊神社近くに、2023年12月、一軒家の日本料理店が開店。物静かな住宅街にあり、打ち水をされた、凛とした雰囲気漂う外観が目を引く。

外観

店主は松本進也さん。1978年埼玉県生まれだ。「人に喜んでいただくのが好き。日本人だからこそ、日本料理を究めたい」との思いから料理人を志す。東京の武蔵野調理師専門学校卒業後、フォーシーズンズホテル椿山荘 東京などで経験を積む。その後「将来、日本料理を牽引するなら、京都で勉強してみたい」と24歳で「和久傳」へ。19年過ごす中「高台寺 和久傳」「室町 和久傳」では料理長を務めた。「『和久傳』では、研ぎ澄まして素材の味を引き出す姿に感銘を受け、料理の世界観が変わりました」と話す。

店主の松本進也さん

独立の際には「今までの京都にない店をつくりたい」と考え、「意外な場所で、隠れ家的要素がありつつも足を運びやすい」場所を選んだ。店を一からつくる中で大切にしたのは「ちゃんと残す」こと。「道具だけでなく、店も残そうと考えました。今は手に入りにくい木材も多いので、木を大切に生かし、50年間は当たり前に使えるような。後々のことを考えました」。美しい数寄屋造の建物は「三角屋」の手によるものだ。

また、カウンター奥にある囲炉裏も店づくりで譲れなかったポイントだ。辻村塊氏作の伊賀焼の大鉢に炭を置き、魚介などを炭焼きし提供している。「薪で焼くことも、燻すこともできて面白いですよ」

席の間隔がゆったりとしていて、落ち着くカウンター席
店内はカウンターのほかに個室もある

門上さん
「和久傳」の料理長の独立ということで訪問。設え、味わいともにすでに風格がありました。設えは木材の使い方やカウンター奥にある囲炉裏が印象に残りました。

京都の水を生かした出汁が秀逸

料理は昼夜共におまかせ(約10品 昼22,000円、夜27,500円)のみ。素材自体のおいしさを引き出すシンプルな調理を心掛ける。だからこそ素材は選び抜き、現地調達も多いとのこと。「開店前には1カ月、氷見に行って仲買の仕事をしました。船にも5日間乗って、船上でのブリの血抜きなど漁師の仕事を見てきました」という。素材への探求心は常に欠かせない。

今回は、おまかせから料理を3品紹介する。

向付

まずは向付。愛媛八幡浜の白甘鯛。ひと塩をして1日置くと、身が締まってうまみがぐんと増す。ねぎを巻いていただく。優しい味わいの煎り酒は、醤油よりも素材の味を感じやすい。

椀物

菜の花、こごみ、タラのしんじょの椀物。出汁は「フレッシュな香りを感じていただきたいから、お客様が召し上がる直前に作る」のが身上。水も厳選し、井戸水を常に2種類以上準備している。京都には4つの水脈があり、鰹や利尻昆布のうまみの出方にそれぞれ違いが出るとのこと。「理想は味付けがいらない出汁。香り、うまみなどのバランスを大切にしています」

門上さん
出汁が一口目の淡さから椀種と一体になってゆく流れが素晴らしい。じっくり味わって飲み、ゆっくりと変化を楽しむのがおすすめ。

囲炉裏で炭焼きにしたのどぐろ
焼き物

ご飯のお供の焼き物は、のどぐろの一夜干し。竹串に刺したのどぐろを囲炉裏で炭焼きにする。直接火に当たっていないので、身はふわっと仕上がる。頭を下にしているので脂が落ち、頭までやわらかくなるそう。

門上さん
僕がいただいたときの焼き物は伊勢海老でしたが、半生に仕上げられていて、炭床に立てられて焼かれる技は見事でした。ご飯のお供の焼き物は丸ごとのハタハタで、ふっくらしていて脂がのっていましたよ。

地に足をつけて一歩ずつ進む

店名の「徳ハ本也」は中国の古典『大学』から。「徳を慎むことを根本とし励むことが一番である」と説いたものだそう。もともとは「徳者本也」だが少々アレンジ。店主の名前の、“本”“也”の2文字が入っているのが気に入っているという。

「これからは、地に足をつけて一歩ずつ前へ進んでゆきたいですね。次の目標としては、海外の方々を中心に、日本や海外で料理教室を開きたいです。パリやバスクなどで、土地の味ではなく、きちんとした日本料理を伝えたいです」

門上さん
日本料理の静謐ながら滋味深いところを感じていただきたいです。

外観

<店舗情報>
◆徳ㇵ本也
住所 : 京都府京都市上京区新御霊口町287-5
TEL : 075-708-7425

※価格は税込。

撮影:福森公博
文:木佐貫久代

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