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 公式戦3連敗を喫し、トーマス・トゥヘル監督の今季限りでの退団が明らかとなった、バイエルン・ミュンヘン。その後はひとまずライプツィヒ戦での勝利で一息はついたものの、しかしながら続くフライブルク戦では2−2と痛み分け。ついにブンデスリーガでの優勝争いでは首位、レバークーゼンと勝ち点差10にまで拡大し、ドイツ杯での早期敗退、さらに最後の望みの綱となるであろうCLにおいても、16強ラツィオ戦での初戦を落としていたことからも、1週間前では実に12年ぶりに今季無冠に終わる可能性が大いに高まりをみせる展開となっていた。だが水曜日のラツィオとの第2戦ではホームで3−0と快勝をおさめ逆転で8強入り、さらに週末のリーグ戦ではマインツを相手に8−1と胸のすくような大勝劇。試合終了後にハリー・ケインは、この2試合が今シーズンのターニングポイントとなることを切に願っている。

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ここにきて軸を見出してきたトゥヘル監督

 この日に30歳のイングランド代表は今季4度目となるハットトリックを達成。これはブンデス1年目としては新記録樹立であるともに、「自分のキャリアの中でもおそらく、もっとも美しいアシスト」と振り返ったムシアラへのお膳立てなど、「彼はチームのために懸命に取り組んでくれているんだ」と主将マヌエル・ノイアーは評価を述べた。「もちろんいかにハリーが、巧みにその両足や頭を活かしてフィニッシュできるかも知っている。とにかく得点嗅覚を持ち合わせた選手だよね」ただそのノイアーもまた、 正確なロングフィードによってゴレツカのゴールをお膳立てするなど、バイエルンの最前線と最後尾では攻守に渡りベテランが先陣としんがり役を担う。そして最終ラインではダイアーとデ・リフトが安定感を提供し、離脱者続出の右サイドバックではキミヒが大きな光明に。その影響の大きさについて、ゴレツカは「かなり大きな存在だ。このポジションから、彼ほどに大きく試合に影響を与えられる選手もそうはいないだろう」と言葉を続けたように、キミヒの素早いリスタートが結果的に、ゴレツカ自身の得点へと繋がっている。代わりにボランチでは若手パヴロヴィッチが台頭をみせ、そのゴレツカはボランチとCMFを使い分けるスタイルで自身の特徴である積極果敢なプレーを展開。そしてその前の攻撃陣では若手ムシアラとリロイ・サネが君臨し、ケインの背後を固めているところ。

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ここから巻き返し、タイトル獲得なるか

 残る左SBではこの日に歯を強打して1本失うも大事に至らなかったデイヴィースとゲレイロ、攻撃陣ではミュラー、ニャブリ、テルらが争う事により、ようやくトーマス・トゥヘル監督もここにきてチームの軸を見出し始めたともいえるだろう。実際に指揮官は「ケインはまさにトップクラスのプロフェッショナルであり、素晴らしい人格者であり、まさに模範となる存在だよ。彼を獲得できて本当に良かった。その正しさは毎週にわたって確認されている」と強調し、「これができることなら残りシーズンに向けての新たなスタートになってくれれば。この戦いぶりができれば、我々はまだまだ危険な存在になれる可能性がある」と前を向く。ブンデス優勝争いのでの勝ち点差10はそれでも大きな差ではあるが、ただチャンピオンズリーグではマンチェスター・シティを除くと飛び抜けた存在がないため、まだ逆襲を図れる希望は残されているはずだ。トゥヘル監督よりこの日のMVPに挙げられたゴレツカは「状況は理解している。ただクラブのために全力を尽くす責務が僕らにはある。全ては勝利のため。レバークーゼンが少しでもグラつく時に備え、僕らは虎視眈々と狙いを定めていく」と意気込んだ。

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逆に正念場に陥った、ウパメカノ&Co.

 ただ別の見方をするのであれば、キム・ミンジェと共にこの日ベンチで試合を見守ったダヨ・ウパメカノにとっては、ここからの逆襲を図れなければ夏には去就問題に揺れることになる。今冬にレンタルで加入したダイアーについては、すでにバイエルンは来季の残留も確定させた。だがそれでもキッカーに対して同選手は、「全く移籍のことは考えにはないよ。クラブにおいても、チームメイトともとても居心地よく過ごせているし、ぜひ2026年まで契約を結んでいるバイエルンに残りたい。これからも頑張っていくつもりだ」とコメント。確かにマティス・テルなどはバイエルンでの限られた出場機会にも関わらず、2029年まで契約を更新し、出場機会をより多く確保することより、ビッグクラブで切磋琢磨し更なる成長を図るべく「本当によかった」と喜びをみせたとはいえ、それでもバイエルンで中長期的に自分自身を主張する事を目的とする18歳のアタッカーとは、25歳のフランス代表DFウパメカノの立場は異なることは留意すべきだろう。

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