路上生活者が設置したテント。米ロサンゼルスで(2023年11月22日撮影)。(c)Frederic J. BROWN / AFP

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【AFP=時事】米国のホームレス問題の中心地となっているカリフォルニア州。ここでは、その厳しい状況を数字を用いて説明する。

■全米で最も深刻

 先ごろ公表された米政府統計によると、全米の路上生活者人口の30%がカリフォルニア州に集中している。これはニューヨーク州の13%やフロリダ州の5%を大きく上回る数字だ。

 カリフォルニア州全体の路上生活者人口は17万1000人で、サンフランシスコやサクラメント(Sacramento)といった大きな都市ではそれぞれ数千人単位となっている。中でも、ロサンゼルスの状況は最も深刻で、7万5500人が路上で生活している。

■低廉住宅

 ホームレス問題の要因として考えられるものには、貧困、メンタルヘルス、さまざまな依存症などがあるが、専門家によると最も大きいのは、住宅の供給不足と法外ともいえる価格の高騰だ。

 カリフォルニア州では長年にわたって住宅不足が続いている。これは環境保護を目的とした複雑な法令や、集合住宅よりも戸建てに有利な計画規制、さらには低価格住宅の建設を制限する規定などが影響している。

 米国で最も貧困率が高いミシガン州デトロイト(Detroit)ですら、低価格帯住宅が数多く提供されているために、ホームレスの問題はそこまで深刻ではない。

■高齢

 カリフォルニア州のホームレス問題を深刻化させているのは、温暖な気候や薬物に寛容な態度にひかれて他州から流入してくる移住者だとする見方がある。

 しかし、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California at San Francisco)で社会的弱者の問題に取り組むマーゴット・クシェル(Margot Kushel)氏によると、路上生活者の約90%はもともと州内に住居があったことが最近の調査で分かっている。

 また同州のホームレスの47%は50歳以上で、うち41%は50歳より前にホームレスを経験したことがなかった。

 ホームレスになっているのは「生涯にわたって医療を受けることができていない人や、肉体的に非常に過酷な労働についていた人で、その多くは(社会的に)不利な立場にある」とクシェル氏は指摘する。

■最大の懸念

 カリフォルニア州キニピアック大学(Quinnipiac University)が昨年実施した調査によると、同州の市民にとって最も大きな懸念事項は、ホームレス問題と手頃な価格の住宅不足だった。これらは、インフレ、移民、人工妊娠中絶、気候変動などの問題に対する懸念を大きく上回った。

 共和党とその支持者らは、カリフォルニア州の行き過ぎた進歩的価値観が問題の根源だと声を大にする。事実、民主党のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事は、大きな課題であるホームレス問題にこれまで数百万ドルを投じて取り組んでいると何度も言及している。

 クシェル氏は、連邦政府の介入が必要だと指摘する。連邦レベルでは、路上生活者の退役軍人を支援する超党派の取り組みによって、2010年以降、路上生活者人口は55%減少している。

【翻訳編集】AFPBB News

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