男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「お座敷へ上がるスタイルの店でのデート。男が見ていたのは?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:お座敷へ上がるタイプの和食店でのデート。女が靴を脱いだ時に、男が見ていたのは…




仕事終わりに、スマホを見ると桃香から連絡が入っている。

― 桃香:この前話していた恵比寿のお店、いつ行く?

「あ〜そうだ…そう言えば、この前そんな話をしたな…」

そう思ったけれど、正直もう桃香と食事へ行くつもりはない。悪い子ではないけれど、二度ほどデートをした結果、僕のテンションはわかりやすく下がっている。

だから“しばらくは忙しい”ことにして返信をしてみる。

― ryo:今月出張が多いから、また来月行こう。

僕の女性を見る目が厳しいのだろうか?いやでもきっと、世の男性は僕が桃香に興味を失った理由に、共感してくれると思う…。


A1:最初はバーだったので、気がつかなかった。


桃香とは、女友達の紹介で出会った。「誰か可愛い子いたら紹介して」と以前から彼女に頼んでいたら、桃香を紹介してくれたのだ。

その女友達は妊娠中だったこともあり、初顔あわせは表参道のカフェだった。

お願いしていた通り、可愛かった桃香。

― ラッキー。すごい可愛いじゃん。

僕たちはすぐに連絡先を交換し、二人で会うことにした。しかしお互い忙しく、なかなか日程が合わない。

調整した結果、翌週の金曜の夜、お互い会食を終えた後に会うことになった。

お互い2軒目だったので、一見エントランスがわからない知る人ぞ知る恵比寿のバー『A10』で落ち合う。




「本当は食事したかったけど…また今度ゆっくりね」

せっかくのデートだから食事もしたかったが、2人の予定が合う日は先になってしまう。早く会いたかったので、結果的には良かったのかもしれない。

「こうやって桃香ちゃんに会えただけでも嬉しいし」

急に頬が赤くなった桃香。それがすごく可愛く見えて、僕の頬が思わず緩む。

「桃香ちゃん、忙しそうだね」
「涼くんのほうこそ。ここのバー、よく来るの?」
「うん、この雰囲気が好きで」
「そうなんだ。素敵なバーだね」

エントランスも面白いけれど、内装も僕は好きだ。




そんな会話をしながら、僕たちはもう食事は済ませていたため、とりあえずお酒だけ飲むことにした。

「このカクテル、美味しい!」
「でしょ?この演出もすごいよね」

店内は雰囲気も客層もいい。カウンター席だったので、なんとなくお互い肩を寄せ合う。

「桃香ちゃんは、今本当に彼氏いないの?」
「いないよ」
「どういう人が好き?」
「優しくて、顔で言うと塩顔かな…」
「え、俺じゃん!(笑)」

桃香のタイプを聞いて、心の声が思わず漏れる。僕は塩顔だし、かなり優しい部類に入ると思う。

すると桃香はケタケタと笑っている。

「涼くん、それ自分で言う?」
「あ、間違えた?」
「間違えてないよ♡」

この日は深夜1時過ぎまで二人で話し込んだが、あまりにも楽しかったので、またすぐに会いたいと思った。

だから解散する前に、次の約束をした。

「再来週の金曜は?」
「その日ならいける!」
「じゃあこの日に決定で。店選んでおくね。桃香ちゃん、苦手な食べ物とかある?」

次の会うのがとても楽しみだったし、帰り際、桃香に今日の感謝の気持ちを伝えたくなるほど良い時間だった。

「今日楽しかったな〜。ありがとう」
「私も!涼くんといると楽しいな」
「次も楽しみだね」

この時まで、僕は桃香に対して好感を持っていた。しかし二度目のデートで、かなり冷めてしまうことになる…。


A2:食べ方のマナーがなっていない。


二度目のデートは、西麻布にある和食屋を予約した。

ただ、通されたのが座敷スタイルの席だったので、内心「しまったな」とも思った。なぜなら、ファッションのトータルコーディネートの問題で、靴を脱ぐのを嫌がる女性もいるからだ。

案の定、到着した桃香も一瞬「え?脱ぐの?」みたいな顔をしている。でも桃香が靴を脱いだ時、そう思った理由がよくわかった。

桃香のタイツの爪先に、白い毛玉がたくさんついていたからだ。

― これ、見なかったことにしたほうがいいんだろうな。

そう思ったので、僕は極力平常運転を装う。

「桃香ちゃん、何飲む?」
「ハイボールにしようかな。涼くんは?」
「俺もそうする」

でも、最初は見逃したものの、そのあとも次から次へと気になる点が出てきたので、僕は心の中でツッコミ続けていた。




「俺、日本酒にしようかな」
「いいね。私もそうする」

食事も進みしばらくすると、気が抜けたのか、桃香は急にリラックスした感じになってきた。

「脚伸ばしちゃお…ここ、くつろげていいね」

そう言うと、畳の上で急にくつろぎ始めた桃香。

足を崩すのがダメではないのだけれど、飲食店で、しかも一応初めての食事デートで両足をだらんと伸ばしている。

その姿を見て、「素敵な女性だな」とは思う人はいるのだろうか…。

「いいよね。あと冬って、こういうくつろげる感じがいいよね」
「お鍋とか、おでんとかいいよね〜」

思わず桃香の姿をじっと見ていると、先ほどから銀杏がポロポロと落ちている。

「銀杏って、食べるときにコロコロ転がりがちだよね」
「そう?こやって箸持ったら上手くできない?」

たぶん、箸の持ち方が悪いから上手くつかめないのだろう。

しかもさらに桃香の手元を見ると、魚にほとんど手をつけていない。いや、正確には手はつけているけれど、とにかく食べ方が汚い。




「あれ…桃香ちゃん、魚もしかして苦手だった?ごめん、先に聞いてからオーダーすれば良かったね」
「全然!好きなんだけど、上手く食べられなくて」
「まだまだ食べられる部分があるから、やってあげようか?」
「いいの?ありがとう」

この時点で、僕はかなり幻滅してしまっていた。

小姑のようなことは言いたくないけれど、日本人として生まれているのだから、せめて箸は正しく持ち、魚くらいは綺麗に食べられるようになっていてほしい。

一旦気になり始めると、桃香の食事中のマナーに次々と目につく。

― この子、育ちが…。

完璧でなくてもいい。でも最低限の食事のマナーと品格だけは持ち合わせていてほしい。

この日は2軒目までは行ったけれど、僕の中では完全に終わってしまった。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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スタートアップ系男にありがちなデートの失敗