駅のホームでおでんをつまみに熱燗が呑める。しかもこたつに入って! そんな背徳感満載のイベントが「おでんで熱燗ステーション」。日本酒好きなら毎年お待ちかねのこちら、2024年も開催しております。今年は2月1日〜4日。その初日にお邪魔しました!

幻の3番線ホームが大衆酒場に変身!

JR両国駅には、普段立ち入れない“幻の3番線ホーム”があるのをご存知だろうか。

1番線と2番線の北側にある3番線は、かつて両国駅が房総方面へのターミナル駅だったときに利用されていた。その後、急行や特急の廃止を乗り越えて新聞輸送列車が走っていたが、2010年に終了。現在は団体列車や臨時列車の発着やイベント時に開放され、基本的には開かれていない。

今回もそのイベントのひとつ。幻のホームに入ることができる貴重な機会というわけだ。しかも、お酒まで呑めるというからたまらない。

前からこのイベントを知っていて興味はあったが、いつのまにかはじまっていて、いつのまにか終っているので、行けずじまいだった。しかし、今回は開催情報をキャッチ。取材でお邪魔できる幸運に恵まれた。

普段は入ることができない3番線ホームに入れる。ドキドキ

入場したら飲食キットを受け取り、フードブースで「おでん」と「したらば」をいただく。

こんな感じでセットをいただける

ホームには赤ちょうちんがぶら下がっていて、昭和レトロな酒場を思わせる。ホームの上家(うわや)を支える梁も趣があっていい。古いレールを曲げ曲線を描いているらしい。美しい。

明治期のレールに使われた鉄は質が高く、レールとしての使命を終えると、こちらのホームの上家のように建築資材として活用されたそうだ。

これが幻の3番線ホームだ!

閑話休題。飲食キットを受け取ると、左手には10の酒蔵が立ち並ぶ「熱燗ステーション」、右手には立ち飲みスペースがあり、奥に目をやれば通常のテーブル席、さらに奥にはこたつ席がある! 今回はひとりなので、念願のこたつ席はあきらめ、熱燗ステーションと対面していて動きやすい立ち飲みスペースに陣取る。

ここだと1、2番線のホームを眼前に臨めるので、電車を見ながら一杯やれる。しかも、頭端式ホームだから見上げるように電車が見られる。これがホントの“呑み鉄”ってか!?

総武線を見上げている感じがわかるだろうか

さて、トレイにのっていた紀文さんのレトルトおでんをパックから取り出し、カップに入れる。温かい状態でいただけるので、ほかほかである。

おでんとしたらばwith燗酒

では、今回のお目当て、熱燗をいただくとしよう。呑めるお酒は、世界で唯一の温めておいしい日本酒を選ぶコンテスト「全国燗酒コンテスト2023」で入賞を果たしたもの。そのおいしさは折り紙付きだ。

お酒と引き換えに渡す試飲券は10枚綴り。全10蔵制覇するもよし、気に入ったお酒があればリピートするもよし。自由だ。私は全制覇を目指す。

熱燗ステーション。選びたい放題である。うふふ

10蔵全制覇! そのお味は?

まず向かったのは、京都の「玉乃光酒造」。燗酒がおいしい酒蔵というイメージがあったので、最初の一杯はココと決めていたのだ。

玉乃光酒造は、最高金賞を受賞した「玉乃光 純米吟醸 酒魂」を提供

感想は後述するとして、一杯目ということもあり、写真をたくさん撮ってしまったため、少し冷めてしまったのがもったいなかったが、好みの味だった。

その後、キュッキュと飲んだ10蔵のお酒は以下の通り。飲んだ順に並べている。私的感想も書いたので参考になればこれ幸い。

・玉乃光酒造(京都府)「玉乃光 純米吟醸 酒魂」最高金賞受賞
芳醇ながら後味がスッキリ。米の旨みをしっかり感じる。好みの味。

・金鵄盃酒造(新潟県)「越後杜氏 本醸造 辛口」金賞受賞
スッキリとした、キレのいい飲み口。スルスル入っていった。

・佐浦(宮城県)「特別純米酒 生一本浦霞」金賞受賞
ここまでで一番甘みを感じた一杯。まろやかな印象。

・菊水酒造(新潟県)「菊水の純米酒」金賞受賞
スルッと飲み口がよく、10蔵飲んだ中では一番スッキリしていた。

・人気酒造(福島県)「人気一番人気純米吟醸」金賞受賞
スパークリング日本酒がメインな酒造とあって、マスカットのような華やかな香りがした。

・利守酒造(岡山県)「酒一筋 時代おくれ」最高金賞受賞
浦霞に似た味わい。こちらの方が少しフルーティさを感じた。

・中埜酒造(愛知県)「國盛 半田郷 純米辛口」最高金賞受賞
旨みがあり、ふくよか。アーモンドのような香ばしさがある。

・綾菊酒造(香川県)「綾菊 金紋」最高金賞受賞
飲み飽きない、ずっと呑めるバランスのいいお酒。割と好み。

・賀茂鶴酒造(広島県)「賀茂鶴 樽酒」最高金賞受賞
ぬる燗で提供。樽の香りがふわっと広がり、森の中にいるよう。今回の私的ベスト。

・宮崎本店(三重県)「宮の雪 山廃仕込 特別純米酒」最高金賞受賞
キンミヤ焼酎でおなじみ。日本酒は初体験。どっしりとした呑み口だった。

宮崎本店では、キンミヤ焼酎のシールをゲット。うれしい

各酒造の社員または利き酒師の資格保有者が燗酒をつける時間を調整しているので、おいしく呑めた。

ちろりから注いでくれる

ちなみに、おでんの味は、パッケージにカツオ節と昆布の旨みのことが書かれていたが、椎茸が結構効いてると感じた。具材にダシが染み込み、お酒とピッタリ。ほろりとした食感の「したらば」もいいつまみだった。

衝撃の出合い「スパイシー燗酒」

10蔵のお酒を飲んでいる途中、面白いものに出合った。長野の老舗唐辛子店『八幡屋礒五郎』の新商品「日本酒を引き立てるスパイス」だ。これをふりかけると「スパイシー燗酒」になるという。

『八幡屋礒五郎』の「日本酒を引き立てるスパイス」

使われているスパイスは、コリアンダーや山椒、クミン。試しにお酒にふりかけてみると、クミンが強いのか、カレーのような味になった! ナンダコレ! 会場で購入できるので、気になった方はどうぞ。現在は新潟と長野でしか売っていないらしいなので、東京で買えるのはレアですぞ。

スタッフの方にふりかけてもらったら、ちょっと多めに出てしまったのはご愛嬌

なお、2月2日は同じ酒蔵のお酒が呑めるが、2月3・4日は酒蔵の変更や同じ酒蔵でも違うお酒が登場するので、お楽しみに。

と、そうこうしているうちに1時間が経った。このイベントは各回60分の入れ替え制なのだ。「時間が足りなーい」という声も聴こえるがルールはルール。駆け込みでお猪口に入れてもらってる人はいたが、次の回の方が待っているので、キッチリと終わる。

もうちょっと飲みたい人は周辺で2次会としゃれこんでもいいし、両国駅の周辺は回向院や赤穂浪士が討ち入った吉良邸跡、勝海舟や葛飾北斎生誕の地があるので、史跡めぐりも楽しめる。酔醒ましに歩くのもいいだろう。

こたつ席はこんな感じ。お楽しみのところ、撮影に協力いただき、ありがとうございました!

とにかく! ホームで酒を呑めるという背徳感が非日常的で楽しい。これで3500円はお値打ちだ。気になる方は、公式HPまたは、‐両国- 江戸NOREN内 両国観光案内所(物販所)でチケットを買うべし。

1・2番線ホームから呑んでいるところが見える。ちょっと恥ずかしい

■「おでんで熱燗ステーション」
[開催日]2024年2月1〜4日
[時間]1・2日14時半〜20時50分、3日12時半〜20時40分、4日11時10分〜16時10分
※60分ごとの入れ替え制
[場所]JR両国駅3番線ホーム
[料金]前売り3500円※当日券はなし
http://www.kansake.jp/kansake_station/

取材・撮影/編集部えびす