Image: Tim Hüttner

電気を感じて広大な海で迷わずに泳いでいるんでしょうか?

ハンドウイルカ(バンドウイルカ)は世界でもっともよく見られるイルカなのですが、動物園で訓練を受けたハンドイルカを研究したところ、他の水生生物と同様に電気を感知できることが確認されました。

この能力で隠れた獲物を見つけ、地球の磁場を感知しながら泳いでいるのだろうとのことです。

電気受容を持つ動物

電場を感知する生物学的な能力は電気受容と呼ばれています。すべての動物は弱い電場を発生させているのですが、電場を感知できるのはほとんど水中・半水中の生物にしか見られていませんでした。

自分の獲物を電気で気絶させて食べたり、獲物の位置を特定する手段として電気を発生させる魚もいます。サメ、一部の両生類、そしてハリモグラなど、様々な水生生物は少なくとも受動的に電気を感知する能力を持っていることがわかっています。

約10年前、ある科学者チームがギアナイルカが受動的な電気受容を持っている可能性があるとする研究を発表しました。そして2021年には、ドイツのロストック大学の研究チームがハンドウイルカもおそらく同様の能力を持っているという研究が発表されています。

この2種のイルカは、生まれたときには口先に2列のヒゲがあるのですが、そのうちヒゲが抜け落ちて、表面に穴だけが残ります。その振動感覚小窩という穴によって電気を感知していると考えられています。

今回の新しい研究は、ロストック大学のチームによる前回の研究の続きで、ハンドウイルカの電気感知の限界をより詳しく把握することを目的として行なわれ、先週発表されたものです。

イルカをトレーニングして電気を感知しているか調査

チームはニュルンベルク動物園と協力し、現在飼育されている6頭のイルカを対象に研究が行われました。特に研究に協力してくれたのはハンドウイルカのドナとドリーの2頭でした。

まず最初に、イルカたちに水中の金属バーにあごを乗せるトレーニングをして、次にその金属バーのところに電場を設置して、イルカたちには電気を感じたら5秒以内に泳いで離れるようにトレーニングをしました。その後、電場の強度をだんだん下げ、イルカの感度をテストしました。

研究結果としては、ハンドウイルカが確かに電気を感知できることがわかりましたが、イルカによっては違いが出てくることもわかりました。

たとえば、ドナはやや感度が高く、ドリーよりも弱い電場に正確に反応できていました。どちらのイルカもパルスのある電場を検出するのが苦手でしたが、全体的にはやはりドナのほうが感度が高いことがわかりました。

著者のひとりTim Hüttner氏は米Gizmodoのメール取材に対して

ひとつの重要な結論は、ハンドウイルカのようなよく研究された動物であっても、私たちはまだわかっていないことがたくさんあることでした。

と述べています。

ギアナイルカとハンドウイルカが持つ電気感知は、サメほど強力ではないようですが、Hüttner氏によるとそれでもイルカが数センチ以下の堆積物の下に隠れている魚を見つけるのに十分に役立っているとのことです。

そして、この感覚がギアナイルカとハンドウイルカに見られたことは、電気感知が多くの他の種のイルカやハクジラにも共通する特徴である可能性があることを示しています。

他の研究ではイルカがGPSのようにナビゲーションできる磁場感覚も持っている可能性が示唆されていますが、まだその仕組みははっきりしていません。

なので、今回わかったイルカの電気感知で、そういった能力についての具体的な説明ができるようになるかもしれないとHüttner氏は語っています。

研究チームは今回発見された感覚の能力を試すさらなる研究を行ないたいと考えていて、たとえば移動するイルカが電気刺激にどのように反応するかなどを調査していく予定だそう。また、将来的に他の小型のイルカやハクジラが電気感知を持っているかどうかも調査できたらとHüttner氏は述べています。