関西の鉄道会社が提供するサービスの中には、どこか「ゆるい」ネーミングのものがいくつかあります。

愛されるサービスの秘訣

 関西の鉄道会社が提供するサービスの中には、どこか「ゆるい」ネーミングのものがあります。関西人にとっては特に違和感を抱くものではありませんが、関東人はその「地域差」に少々とまどうかもしれません。


イメージ画像(画像:写真AC)。

●スルッとKANSAI
 1996(平成8)年に本格開始となった、関西の私鉄・バスを中心とした磁気式の共通乗車券システムです。首都圏でいう、PASMOの前身「パスネット」にあたり、会社の垣根をこえてプリペイド磁気カード1枚で自在に電車を利用できるようになりました。

 パスネットは通過を意味する「pass」ですが、それを擬態語である「スルッ」で表現していて、感覚的にその便利さがわかるようになっています。

●Jスルーカード
 スルッとKANSAIと同時期に、対抗するJR西日本が関西圏で発行開始した磁気カードです。関東のJRでいう「イオカード」にあたります。ネーミングセンスは「スルッと」に近いですが、こちらは通過を意味する前置詞「through」を由来としています。いずれにせよ、感覚的に意味がわかる語感です。

 そもそも関西のJRは自動改札機の導入が非常に遅く、1990年代も終わりになってやっと関西全般に設置されました。きっぷを機械に投入する習慣が始まると同時に、毎回きっぷを買わなくてもいいプリペイドカードが普及していったのです。

●らくやんカード
「スルッとKANSAI」のうち、阪神電鉄が発行していたカードです。由来は関西弁で感嘆を含むニュアンスの「楽じゃん!」という言葉で、やはり感覚に訴えるネーミングと言えます。

 いっぽう、阪神間のライバルで山側を並行して走る阪急のカードは「ラガールカード」。フランス語で「La gare(=The station)」を意味します。

 関西人の持つイメージには、阪神電車は下町、阪急電車はセレブ街という対比像があるといわれます。カードの命名センスにも、このイメージの差がうまく表れていると言えるかもしれません。

新しく誕生したばかりのサービスも!?

●特急「らくラクはりま」
 似た方向性のネーミングは、JR西日本が2019年に運行開始した通勤特急で誕生しています。特急車両を用いて新快速よりも快適に、かつ停車駅がさらに少ないことでプレミアムな通勤移動を提供しました。

 この「らくラク」は今後ブランド化していく予定で、大和路線でデビュー予定の「らくラクやまと」のほか、琵琶湖線では「びわこエクスプレス」を改称して「らくラクびわこ」とする予定です。

 ちなみに、首都圏で最近生まれたJR通勤特急は「湘南」「はちおうじ」「おうめ」と、行先の地名があるだけ。逆に味気ないと感じられるかもしれません。

 しかし、高崎線方面には「あかぎ」がありますが、かつての名称に「スワローあかぎ」というものがありました。これは英語と「座ろう」にかけた言葉。関東には珍しく「関西チックなネーミング」の匂いを感じます。

●座席指定サービス「快速 うれしート」
 ロゴはアルファベットの「U」の上に点2つで、笑顔のようなデザイン。いよいよ直球の駄洒落ネーミングに、SNSは再び話題となり「まさに関西」「名前以外は嬉しい」「満席だったら『かなしート』かな?」といったコメントも。

 JR西日本が2023年10月から大和路線・おおさか東線に導入しました。関西圏では新快速「Aシート」につづくものです。特徴は「1両の半分の区画が『のれん』で仕切られ、そこが座席指定となる」こと。名古屋〜松阪方面の快速「みえ」にも似た方式です。