乃木坂46のメンバーであり、モデル・女優としても活躍する、山下美月さん。

どんどん存在感を増していく彼女にとって、昨年1年はどんな年だったのだろうか。

さまざまな作品・価値観に触れながら、何を感じ、学んだのか、等身大で語ってくれた。


輝き続けるアイドルが“その先の未来”を見据える理由


アイドルとはこうもキラキラと輝くものなのか。モニターに映る山下さんの姿に、スタッフのひとりがぽつりとつぶやく。

落とされた照明の下、ぐっとムーディな空間でさえ、彼女の周りだけが明るい。まるで、山下さん自身が発光しているかのように。

思わず、本人に直接その“キラキラ”の理由を問うてみた。すると……。「心がキレイだからですよ(笑)」と茶目っ気たっぷりに返してくれた。

乃木坂46では中心メンバーとして、ソロ活動では女優としても存在感を高める山下美月さん。

その佇まい、受け答えからは“余裕”すら感じるが、2023年は不安を抱えてのスタートだったという。

「1期生、2期生の偉大な先輩たちが卒業したあとで、“乃木坂、この先大丈夫?”という空気は自分たちだけでなく、周りも含めてあったと思います。

3期生は責任ある立場になり、4期生、5期生は乃木坂46を押し上げる役割として、それぞれにプレッシャーを感じていたというか。

でも、新体制で絶対にツアーを成功させる!という強い思いが全員をひとつにして。

真夏の全国ツアー、明治神宮野球場でのファイナルまで走り抜けることができたのは、年齢や先輩後輩関係なく、一人ひとりが思いを貫けた結果だと思っています」

“新生・乃木坂46”としてリリースした3曲はどれも大ヒット。

全国ツアーも大盛況で、2023年末には9年連続9回目となる『NHK紅白歌合戦』へも出場した。


「多才なメンバーに囲まれ生まれる不安。それすらバネにしてやるしかないんです」


一方のソロ活動においては、朝ドラ『舞いあがれ!』にヒロインの親友役で出演。

繊細な演技が話題となり、女優としてのオファーが殺到。2023年のドラマ出演は実に5本、来期1月スタートの作品にも出演が決まっている売れっ子ぶり。

日曜劇場『下剋上球児』での“しっかり者の姉”も記憶に新しいだろう。




「乃木坂46を知らなかった世代の方や、友達のめいっ子とか小さい子まで知ってくれるようになったのにはびっくりですね。

演技のお仕事をたくさんいただけるようになったことも、本当にありがたいです」

とはいえ、手応えを感じるまでには至らないという。

「これまでも今だって、自分に才能があるかとか、はっきり爪痕を残せたなんて、思ったことはありません。自信なんてないですよ〜。

だって、うちのグループだけでもすごい才能がある子はたくさんいて、そんな仲間に毎日囲まれていたら、持てるわけがない(苦笑)。

でも、私は自信のなさがベースにあるからこそ、人一倍頑張ろうと思えるのかな、って」

だが、「頑張る」とひと言で言っても、経験を重ねれば重ねるほど、その手段は自身に委ねられていると感じている。

「アイドル8年目にもなると、怒られたりすることって減ってくるんですよ。

いまは自分が一番先輩の立場なので、スタッフさんも後輩ちゃんたちを育てることに注力するじゃないですか。だから私たちは、自分を成長させるために何をするべきか考えないといけない。

みんなそれぞれで考えていると思うんですが、私は他者からの客観的な意見の中にヒントを見つけることが多いですね」

自身の出演作を見るのは、他者の意見を聞いた結果、概ね好反応だと分かってからだという。

「怒ってほしいと言いながら、そこはビビり(笑)。でも、皆さんの感想が分かってくるうちに、ある程度諦めというか、腹がくくれるんです。

人によって受け取り方も考え方も、全然違うし。全部を受け止めるわけではないけれど、なるほどそっか、って思う部分もあるし。じゃあ、次に活かそう、って作戦だって練れる。

いろんな価値観に触れるって大事だなと思うんです」


「人として成長するために、もっともっと学びたい」


人生経験を積んだ先輩から、自分の固定観念を壊してもらうことすら、心地良いと話す。



「赤坂らしい雑居ビルの中にあるのに、お店に一歩入ると別世界が広がる。そんなギャップも楽しかった」と山下さん。“初めて”の連続に心もおなかも満たされた様子だった


「私は普段、人からこう思われなきゃとか、ちゃんとしなきゃみたいな、変に“いい子ちゃん”でいようとしちゃうところがあって。お芝居でもそうなんです。

でも『下剋上球児』でご一緒した鈴木亮平さんは、自分のお芝居だけでなく、他の登場人物のことまで、その人の生き様を踏まえて考えていらして。

すると、実際にお芝居のキャッチボールの中で、自分で思ってもみなかったニュアンスでセリフが引き出されたりするんです。勉強になるだけでなく、“あぁ、生きてるな”って感じました」

“生きている”という話でいうと、乃木坂46のライブ前には、こんなことがあったという。

「悲しいわけじゃないのに、何かが自分の中で溢れてしまって、たぶんパニックで反射的に涙が出ちゃったんですね。もうオーバーチュア(※ライブ前の導入動画)も流れているというのに、自分でも意味が分からなくて。

そしたら後輩の5期生、一ノ瀬美空ちゃんが突然手を握って、『美月さんは可愛いから大丈夫ですよ』って言ってくれたんです。

ふわっとしたひと言なんですけど、シンプルに真っすぐに“先輩を笑顔にしたい”っていう彼女の思いを感じたら、なんかものすごく心が温かくなってきて。

自分は結構、一匹狼タイプで生きてきたつもりだったし、いろんなことを考え過ぎて、人の優しさを素直に受け取れない時があったんですね。優しさの裏側を考えちゃうというか。

でも彼女の言葉がそうやってスッと入ってきたのは、自分が大人になったからっていうのもあるだろうけど、生きていく上で大切なコミュニケーションって、こういうことなんだなって。

なんかストンと落ちたんです。そうしたら、ギリギリ涙も収まって、笑顔で出ていけました」

2023年を振り返って、山下さんが強く感じているのは、「たくさんの人の力を借りて、いま自分はここにいる」、ということ。

そして「人として成長するために、もっともっと学びたい」と目を輝かす。謙虚に。でも貪欲に。アイドル8年目も熱量はそのままに、走り続ける。


■プロフィール
山下美月 1999年生まれ、東京都出身。2016年、乃木坂46の3期生としてデビュー。ソロ活動ではファッション誌『CanCam』の専属モデルを務めるほか、女優としても注目を集める。1月スタートのドラマ『Eye Love You』(TBS系)では、二階堂ふみ演じる主人公の同僚役で出演。

■衣装
ブラウス 15,400円〈ダブルスタンダードクロージング〉、コート 132,000円、スカート 46,200円〈ともにSov./すべてフィルム TEL:03-5413-4141〉、リング(人差し指)754,600円、リング(中指)532,400円、ブレスレット 350,900円〈すべてレポシ/レポシ 日本橋三越本店 TEL:03-6262-6677〉、バッグ 156,200円〈ピエール アルディ/ピエール アルディ 東京 TEL:03-6712-6809〉

▶このほか:「昔はメンタルが弱くて。でも…」日向坂46・金村美玖のこれまでとこれから




東京カレンダー最新号では、山下美月さんのインタビュー全文をお読みいただけます。
東カレに語ってくれた、山下さんが女優としていま思うこととは?

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