最近、健康・美容の観点からタンパク質が注目を集めており、プロテインを日々の食生活に取り入れている方も増えているようです。しかし、タンパク質をとろうと肉や卵、乳製品などを食べすぎてしまうと、カロリーや脂質などが気になるもの。そこで近年脚光を浴びているのが「植物性タンパク質」です。豆腐・豆乳マイスターで管理栄養士の藤橋ひとみさんに、植物性タンパク質の特長と手軽なとり方を教えてもらいました。

そもそも、タンパク質はたくさんとった方がいい?

「まず知っておいていただきたいのは、タンパク質は多くとればいいというわけではありません。あまりにも多くとりすぎてしまうと、腎機能を低下させる恐れがあるなど、健康に悪影響を及ぼす可能性があります」(藤橋さん、以下同)。

加えて、タンパク質の摂取量を増やすために肉や乳製品など動物性の食品をたくさん食べると、生活習慣病のリスクを高める飽和脂肪酸の過剰摂取につながる恐れがあるのだそう。
「飽和脂肪酸は、肉の脂身やバターなどをイメージするとわかりやすいですが、常温で固体の脂質のこと。とりすぎてしまうと血液をドロドロにして動脈硬化の原因になるなど、さまざまな生活習慣病につながると言われています」

一方、植物性タンパク質を豊富に含む食品は、飽和脂肪酸が含まれているものが少なく、病気につながるリスクが低いと考えられています。

 

●大豆には女性が積極的にとりたい栄養素が豊富

植物性タンパク質は植物性食品に幅広く含まれていますが、その中でも「大豆」の含有量はダントツ。さらに大豆には、日本人女性が不足に気をつけたいカルシウム、鉄、葉酸、食物繊維、カリウムなど多くの栄養素が含まれています。とくに葉酸は、細胞の生産や再生を助ける栄養素で、妊活中や妊娠中には非常に大切なもの。ナトリウムを排出する作用のあるカリウムは、塩分のとり過ぎや高血圧が気になる方は積極的にとりたい栄養素です。

「そのほかにも、大豆には女性ホルモンのひとつである『エストロゲン』と似た化学構造をもち、機能性成分として注目されている『大豆イソフラボン』も含まれています。大豆イソフラボンは、ホルモンバランスの乱れによる不調の改善に役立つ可能性があることがわかっています。加えて、コレステロールを低下させる機能性が発見されている大豆レシチン、善玉菌のエサになるオリゴ糖が含まれているのもうれしいポイントです」

このように聞くと、大豆さえ食べていれば健康になれるのではと思われるかもしれません。ですが、完全栄養食はないのが現実。
「天然の食品に『これだけ食べていれば大丈夫!』というものはありません。大豆ばかり食べていると、ビタミンCをはじめ、不足してしまう栄養素が出てくる恐れがあります。基本は『バランスよく、さまざまな食品を食べること』です」

●習慣化して取り入れ続けることが大切

また、血圧やコレステロール値が気になるからと急に植物性タンパク質の摂取を増やしても、即効性はないそう。
「なるべく植物性タンパク質を意識して食べる習慣をつけ、将来の病気のリスクを下げたいものです。最近では、手軽に大豆を摂取できる食品が増えているので、食べやすそうなものを取り入れていくのがいいと思います」

植物性タンパク質の上手なとり方

植物性タンパク質の宝庫である、「大豆」。手軽に食べられる代表的な大豆製品としては、豆乳や納豆、大豆ヨーグルトなどがあります。そのままでもアレンジしてもおいしく食べられます。また、最近は飲料や加工食品が増えており、ファストフードやコーヒーチェーン、スーパーのお総菜コーナーでも大豆ミートを使ったメニューを見かけるようになりました。

「有名なカップヌードルの『謎肉』にも大豆ミートが使われているので、知らないうちに食べていると思いますよ。コーヒーショップでカフェラテを頼むならソイラテにしてみる、アイスクリームやヨーグルトを買うときは豆乳を使ったものをチョイスしてみるのもいいですね」

●手軽にとるなら「豆乳ヨーグルト」がオススメ

手軽に植物性タンパク質をとりたいなら豆乳ヨーグルトがオススメと、藤橋さん。
「私のオススメの豆乳ヨーグルトは、無糖タイプの『まるごとSOYカスピ海ヨーグルト』(フジッコ)や、『ソイビオ豆乳ヨーグルト プレーン無糖』(ポッカサッポロ)。無糖だと甘さを自分で調整でき、糖質も控えられるのがうれしい。また、豆乳ヨーグルトは酸味が弱い特徴があり、和風の味つけが合うので、黒蜜やきな粉、抹茶パウダーを足すのもいいです。ただ、無糖タイプは大きなサイズの商品が多いので、手を出すにはハードルが高いと感じる方は、フレーバーつきの1食分のカップサイズから試してみるといいと思います」

大豆ヨーグルトを使った「鍋」レシピ

大豆ヨーグルトは、そのまま食べてもおいしいですが、料理にも便利に使えます。これから寒くなる季節に活躍する鍋料理とつけダレのレシピをご紹介します。

●大豆ヨーグルトのミルフィーユ鍋

【材料(2人分)】

大豆ヨーグルト 200g
豚バラ薄切り肉 200g
白菜 200g
キムチ 200g
モヤシ 50g
ニラ 1/3束
A[水300ml 酒大さじ1 鶏ガラスープの素小さじ2]

【つくり方】

(1) 白菜は1枚ずつはがし、白菜、豚バラ肉、キムチを交互に4回重ねて5cm幅に切る。

(2) 鍋のフチに沿って(1)を敷き詰めて、真ん中にもやし、ニラを入れる。よく混ぜた(A)を加えて中火にかける。

(3) 沸騰したらフタをして火が通るまで10〜15分ほど煮る。

(4) よく混ぜた大豆ヨーグルトを真ん中にのせる。

キムチの辛さや酸っぱさを大豆ヨーグルトがまろやかにしてくれます。W発酵食品で腸活にもぴったり!

タレは、大豆ヨーグルト100gとみそ大さじ1、砂糖大さじ1/2、白すりごま大さじ1/2、ごま油小さじ1を混ぜると「大豆ヨーグルトダレ」が完成!
体にうれしい魅力がいっぱいの植物性タンパク質をぜひ上手にとり入れてください。

 

【参考文献】
・厚生労働省, 令和元年国民健康・栄養調査報告,第1部栄養素等摂取状況調査の結果p67〜p114
・厚生労働省,日本人の食事摂取基準(2020年版)
・文部科学省,日本食品標準成分表2020年版(八訂) 
・国立研究開発法人国立がん研究センター,多目的コホート研究(JPHC研究),動物性・植物性たんぱく質の摂取と死亡リスクとの関連
・内閣府食品安全委員会事務局,大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
・関村照吉,ほか.加工豆腐類のオリゴ糖含量,センター研究報告,第4号(1997)
・厚生労働省,e-ヘルスネット,食物繊維の必要性と健康