ペットの柴犬の写真をX(旧Twitter)に投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第64回は「犬に噛まれた日」についてです。

11月初旬。犬に噛まれた「ある日」のこと…

「飼い犬に手を噛まれる」ということわざを辞書で引くと「よく世話をしてやった部下や普段かわいがっていた者に裏切られ害を受けることのたとえ」と書かれていた。どうして調べていたかというと、文字通り犬に手を噛まれたからです。

●「痛い!」、そう泣き崩れる姿を見て犬は…

もちろん犬は悪くない。責任は保護者の自分にあるのを前提として、経緯を記す。人によっては痛ましい内容ではあるので、11月のポップな写真を添えてお伝えします。

11月初旬、私と犬は朝の散歩から帰ってきて外のリードに犬を繋いだ。それから自室で仕事をしていたら、裏道に二人の男性がやってきたのが窓から見えて、犬の吠える声が聞こえてきた。二人はうちに用事があるのではなく、道路工事の下見に来ている様子だった。

犬がいる場所からは死角で二人の姿は見えないが、物音や話し声で誰かがいるのはすぐに分かったのだろう。犬のセンサーは敏感で、そして縄張りは広い。家に入って来なくとも、敷地のすぐそばで立ち止まっていても吠える。

数分経っても状況は変わらないため、犬の元に様子を見に行く。犬は吠えるのをやめたが視線は二人の方向に注がれている。

私も薄着で出てきてしまったので一旦犬も一緒に家の中に入ることにした。犬を抱っこして家の中に入ったら、逆に興奮させてしまった。そして室内のリードにつなごうと首輪を掴んでいた右手の甲を噛まれた。愚鈍! しくじった。昔からこうだ、気を抜いてるつもりはないのに小中高とよく骨折した。

噛まれながらもリードを繋いだとき、倉庫で仕事をしていた母が犬の声を聞いてやってきた。「えらい鳴いてたけど…あっ! 噛まれたんか」と寄ってきてくれた母に安心し、堰を切ったように涙があふれた。

「痛い」しか発せなくなったかのように「痛い痛い痛い」と地べたに泣き崩れる大人はさぞ滑稽やったやろう。吠えていた犬もそばで静まり返っていた。自分より狼狽えている他者を見て冷静になるやつな。

母が私の腕を引いて「痛いけど我慢しいよ」と傷口を水で洗い流す。しみる。「うっうっ!」と依然号泣しながらも、犬は大丈夫かと気になって振り返る。

犬は眉を下げて、真っ直ぐに私を見ていた。めっちゃ引いてた。「うわー…」って顔しよる。ドン引きの犬に思わず笑ってしまった。泣かされるのも犬。笑わせられるのも犬。

●初めての経験ではないけれど…

情けない話だが、犬に噛まれるのも、噛まれて血が出るのも初めてではない。それでも消毒して絆創膏を貼っておいたら治ったが、いかんせん過去イチの痛みであった。

夕方になっても痛みが引かず、腫れ上がっていくので町内の整形外科で診てもらった。この整形外科は今まで3回の骨折でお世話になった。

利き手を噛まれているのでうまくペンが持てず、母が問診票に「今朝、犬に手を噛まれた」と代筆してくれた。

犬は傷つけるためではなく、不快な事態からパニックになって近くのもの(今回は私の手)を噛んでしまったのだ。パニックになる事態を招くこと、またパニックの処理方法を身につけさせてやれていない人間側の責任だ。

「やから“裏切り”とはちがうよな」と、抗生物質の点滴を打たれながら考える。

冒頭の“飼い犬に手を噛まれる”ということわざのことである。この犬の側面を「怖がりで臆病なんよ」という人もいれば、「気が強いから吠えるんや」という人もいる。

 

「ただいま」、少し大袈裟な包帯を巻いてもらって帰宅。犬が包帯に鼻を寄せてきた。痛み止めと化膿止めと胃薬を飲んで、座敷に腰を下ろすと犬はピタッ! とくっついてきた。構ってほしいときの距離感だ。

頭を撫でていたら犬はゆっくりと足の間に移動してきて、ゴロ〜ンと寝転んだ。甘えたな赤子を前に、痛みにふてくされる暇もない。委ねられる体重と体温を感じていたら、私もどっと力が抜けた。つかれた。

生活むずかしい。私が悪いのやけど。たまたま仕事でつんでた朝とか、たまたま工事の下見にきたとか、嫌なピースが合わさって最悪のパズルが完成する日がある。

犬との生活10年目にしても失敗と反省の繰り返し。だがめげてばかりもいられない。犬が困らないですむように考えよう。最悪な日も病める日も犬が大切やから。

一週間ほど指を曲げるのも伸ばすのも引き攣るような痛みが生じたが、二週間も経つとすっかりよくなった!

私がゆうても説得力ありませんが、みなさんも怪我にはお気をつけて2023年残り1か月がんばっていきまっしょい! モーニング娘。さんの代々伝わる掛け声で元気よく締めさせていただきました。

それではよいお年を!