日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「問題を先送りにし続けた結果です」と後悔を吐露するのは主婦の里奈さん(仮名・40代)。夫の女性問題に悩みながらも、妊娠や不妊治療を望んでいたころ、大病を患い、手術することに。子どもを授かることを断念した夫婦が出した結論とは?

「あなたが浮気なんかしてるから病気になっちゃったのよ!」

夫の浮気相手が会社の同僚であることが発覚した里奈さん。「今になって思えば、BBQの最中に泣き崩れた愛人の女性のメンタルもボロボロだったのかもしれませんが、浮気された被害者のこっちはもっと限界でしたよ」と今では笑いながら振り返ります。

●はじめて長年のつらい気持ちを打ち明けられた相手

たまたま時期が重なっただけなのか、ストレスが原因なのかわかりませんが、大病を患ってしまった里奈さん。入院しながら手術の日を待っていたある日のこと。家族ぐるみでつき合いのあった会社の同僚がお見舞いにきてくれました。

同僚には「ごめんね、私、なにも知らなくて」と、あの愛人と鉢合わせた地獄のようなBBQのことを猛烈に謝られました。

「まさか旦那さんとA子が不倫関係だったなんて…。A子はあの場で泣いたりして、悲劇の女みたいな被害者ポジションで、マジで引いたよ。一部の人は気がついていたらしいんだけど、あの一件でみんなの知るところになって、さすがに2人はもう別れると思う」と同僚。

里奈さんは結婚当初からずっと女の影に感づいていたこと、我慢して黙っていたこと、駐在中も年賀状が届いていたという話を同僚に打ち明けたそう。

「別に夫の同僚になにかしてほしいとかはなくて。ただ話を聞いてくれただけでありがたかったです。それまで親にも言えなかったことなので。夫の女性問題について話したのはこのときが初めてでした。A子が愛人の立場で家に年賀状を送りつけていた話は、やっぱりびっくりしていましたね」と里奈さん。

●お見舞いに来てくれた同僚が夫と…

里奈さんの話を聞いて同僚の怒りが頂点に達したところで、タイミング悪く夫が病室に入ってきてしまいました。「いや〜どうも、わざわざ来てもらっちゃって」とヘラヘラした様子に同僚がガチギレ。

「同僚がいきなり『ねぇ、さすがにA子とは別れたんですよね? 今、はっきりさせてもらえる?』と食ってかかって。夫はいつもの調子でヘラヘラしながらごまかそうとすると『あなたがそんなんだから里奈さん病気になっちゃったんじゃないの』と𠮟りつけました。もう私が慌てるくらいの修羅場ですよ。夫は真顔でしたが、同僚が突きつける正論にひと言も返せず、最後は涙目になって『悪かったですよ、俺が』とやっと反省の弁を述べていました」

里奈さんは夫の言い分が聞きたいとか謝ってほしいとは思っていなかったそう。けれど無事にA子との関係も清算され、夫もあとで2人になったときにまたきちんと謝ってくれて、手術直前にホッとすることができたと言います。

人生は一度きり。夫婦で話し合いを重ねた結果…

その後、里奈さんは治療の甲斐もあって、無事に回復。しかし、今後も続けていく投薬の影響もあり、子づくりはここで完全にあきらめることになってしまいました。

「不妊治療の土俵にすら上がれないまま、このような事態になって、後悔がないといえばウソになるけれど、今は命があるだけでよかったと思っています。日常生活の中でも、夫とは手をつないだりすることが増えました」と里奈さん。

術後の里奈さんの体調を常に気にしながら、ちょっとした荷物でもパッと持ってくれたり、足元が悪い道を歩くときにはスッと腰をサポートしてくれたりするようになった夫。気がつけば隣にいるのがとても心地よく思える最愛のパートナーになっていました。

●子どもを育てたいという妻の思いを叶えるために…

妊娠や出産という里奈さんの希望は叶いませんでしたが、子どもを育てることはできないだろうかと、夫婦で何度も話し合いを重ね、現在、里親になることを検討しているそう。

「里親といっても、一時的に子どもを預かるボランティアや“養育里親”という18歳まで(進学しなかった場合は中学卒業まで)養育する里親、“特別養子縁組”をして実の子と同じ親子関係を結ぶパターンなど、いろいろあって。今、夫と一緒に里親をマッチングしている団体の説明会などに参加したり研修を受けたりしているところです」

日本で安定して家庭を築き、里親として子どもを落ち着いて育てるため、夫は転職もしたそう。もう危険な地域へ赴任する可能性はなくなりました。しかし、ここでもまた年齢的な問題がネックに…。

「里親申込み自体に明確な年齢制限はないのですが、実際、面接を受けて里親に選ばれている人は私たちより若い人が多くて。経済力や家庭の安定よりも、やはり受け入れ側の親の年齢に結構比重をおいているのかなという印象を受けています」と里奈さん。

里親に関する勉強をしていくなかで、たとえ、親になれなくても、子どもたちのためになにかしたいという思いが夫婦ともに強まっているそうです。

「急げばいいという問題ではありませんが、もう人生も後半戦に差し掛かろうとしている中で、私たち夫婦がなにか子どものために役に立てることはないのか、世の中のために残せるものはないのか…。今度こそ、自分の本音や抱えている問題を先送りにせず、後悔のないよう、夫としっかり話し合っていこうと思います」