Appleは同社初となるARゴーグル「Vision Pro」を2023年6月に発表しました。販売価格は3499ドル(約52万3000円)と非常に高額なため、発売前から廉価版の登場がウワサされています。この廉価版Vision Proについて、Bllombergが「あまり安くはならないだろう」と報じました。

Apple October 2023 Executive Promotions: New VPs of Retail, Software, Operations - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2023-10-15/apple-october-2023-executive-promotions-new-vps-of-retail-software-operations-lnrh4t94



Apple’s cheaper Vision Pro follow-up still won’t be cheap - The Verge

https://www.theverge.com/2023/10/15/23917710/apple-vision-pro-cheaper-no-eyesight-external-display

2023年6月にVision Proが発表される前から、Appleはより安価なARゴーグルの開発を見据えていたと、Bllombergは指摘しています。Vision Proの販売価格は3499ドルと非常に高価であり、「この製品をメインストリームでヒットさせるには高すぎる」ためです。

そのため、AppleはVision Proの廉価版モデルを計画しており、これには外付けスクリーンとMacに搭載されるレベルのチップが搭載されるとBllombergは報じています。Appleは「技術的に難易度が高すぎる」と判断されたプロジェクトであるスタンドアロン型ARゴーグルの開発から従業員を異動させ、低価格のヘッドセットに取り組めるようにしているとBllombergは指摘しました。

Appleは社内で廉価版Vision Proの価格帯を1500〜2500ドル(約22万4000〜37万4000円)程度にしようと議論しています。2023年初め、Bloombergは廉価版Vision Proは低解像度ディスプレイを搭載し、MacではなくiPhoneのプロセッサを搭載することでコストを下げることを目指していると報じました。また、廉価版Vision ProではEyeSight機能(ユーザーの目を表示する外部ディスプレイ)が削除され、外部カメラやセンサーの数も減らされることとなる模様。

廉価版モデルの開発に加え、AppleはVision Proの次世代モデルの開発にも取り組んでいます。次世代モデルにはすべての機能が搭載されたまま、より小型化・軽量化され、より快適に装着できるようになるとのこと。Appleはまた、度付きレンズを直接デバイスに統合することで、デザインをシンプルにすることも検討しています。一方で、Vision Proは光学部品メーカーであるツァイスのレンズインサートを採用しています。AppleはVision Proの登場時期を「来年初め」とだけ説明しているため、詳細は不明です。



なお、BloombergはAppleの人事異動についても報じています。

Appleはティム・クックCEOとエグゼクティブ・チームによって運営されていますが、同社で最も権力を持つ人物の一部は、ヴァイスプレジデントという役職についています。そんなAppleのヴァイスプレジデントのうち、サービス・オペレーション・ソフトウェア・リテールを統括する複数の役員が相次いで同社を退職したと、Bloombergが報じました。同メディアによると、2022〜2023年にかけて合計で約12人のヴァイスプレジデントがAppleを去ったそうです。

ヴァイスプレジデントが退職したのにはさまざまな理由があり、自主的に退職した人もいれば、解雇された人物や、仕事のストレスに耐えられなくなって辞めていった役員もいる模様。Bloombergは「安定していることで有名なAppleでは、異例の激動の時間だった」と指摘しています。

Appleは通常、秋の権利確定期間(従業員が報酬のかなりの部分を占める譲渡制限付き株式ユニットを現金化できる期間)の前に、従業員の昇格を行います。そのため、この時期に人事異動があるのは珍しいことではないものの、2023年にヴァイスプレジデントに昇格した人数は通常よりもかなり多かったそうです。

新しいヴァイスプレジデントが就いたのは、リテール・オペレーション・ソフトウェアエンジニアリング・ハードウェア・テクノロジーなど複数の部門にまたがります。リテール部門では、Tracey Hannelly氏がリテールエンゲージメント・マーケティング担当ヴァイスプレジデントに、Karen Rasmussen氏がオンライン・リテール担当ヴァイスプレジデントに、Vanessa Trigub氏がリテール・オペレーション担当ヴァイスプレジデントに就任しました。3人の新任ヴァイスプレジデントは全員、リテール部門のチーフであるDeirdre O'Brien氏の直属となります。Appleはまた、いくつかの地域で店舗グループを監督するマネージャーであるマーケット・ディレクターの再編成も実施しました。



ソフトウェアエンジニアリング部門では、Jeremy Sandmel氏とDavid Biderman氏が新しくヴァイスプレジデントに就任し、クレイグ・フェデリギ上級ヴァイスプレジデントの直属となります。Sandmel氏はグラフィック・ソフトウェアを担当し、Biderman氏はオーディオおよびメディアソフトウェアテクノロジー部門を統括することとなります。2人は2022年に前任者が退職したため、フェデリギ氏の直属も昇格することになりました。

ジョニー・スロウジ氏の統括するハードウェアテクノロジー部門では、Harry Guo氏がビデオエンジニアリング担当ヴァイスプレジデントに就任しました。Guo氏はビデオドライバーとFace ID関連ソフトウェア、Vision Proのために標準的なビデオを3Dに変換する人工知能(AI)チームを統括します。

ジェフ・ウィリアムズ最高執行責任者(COO)直属のオペレーション部門では、プロダクトオペレーションマネージャーにRob Hardy氏、製造デザイン担当役員にVashist Vasanthakumar氏が就任しました。Hardy氏はプロダクトオペレーションチーフのPriya Balasubramaniam氏の直属となり、Vasanthakumar氏はデバイス筐体の製造を担当するRob York氏の直属となります。

ハードウェア部門ではハードウェア・エンジニアリング担当ヴァイスプレジデントのYannick Bertolus氏が退職しました。同氏は10年以上にわたり、製品の品質とテストを担当してきた人物ですが、2022年にハードウェア・プロダクト・マネージャーとしての役割に異動しました。Bertolus氏の前にハードウェア・プロダクト・マネージャーの役職に就いていたのはLaura Legros氏で、同氏は2022年末にAppleを退職しています。Bertolus氏の後任には、この道17年のベテランであるDonny Nordhues氏が就任することとなりました。