ランウェイコラボレーションに参加するアグ(Ugg)やクロックス(Crocs)のようなシューズブランドをのぞいては、伝統的にシューズコレクションの紹介にはプレゼンテーション形式のショーが活用されている。しかし、ロンドンファッションウィーク(以下、LFW)に出展するフットウェアブランドは喧騒に埋もれてしまわないように尽力しなければならない。たとえば、今シーズン、捨てられたスニーカーをアップサイクルすることで知られるヘレン・カーカム(Helen Kirkum)はプレゼンテーションに居住空間を取り入れ、そこではモデルが読書や音楽鑑賞などの日常的な行動を行った。

しかし、それには高い費用がかかることもあり、ほとんどの新進デザイナーには確実に目立つようなことをする余裕はない。リクソ(Rixo)やディラーラ フィンディコグルー(Dilaria Findikoglu)といった常連も今シーズンはコレクションを披露しなかった。

LFWで注目を集めたピフェリ



ラグジュアリーシューズブランド、ピフェリ(Piferi)の創設者アルフレッド・ピフェリ氏は、「一部のデザイナーが今シーズンは参加しないと決めた理由は理解できる」と語った。ピフェリはビーガンのラグジュアリーシューズブランドとして2020年にローンチして以来、500万ポンド(約9.1億円)の売上を上げている。「スポンサーがいなければ、多額の費用を負担することになる。事業はイベントよりも価値があり、イベントを行うのに事業を妥協することはできない」。

ピフェリ氏はもっと思い出に残ることをしようと決心した。そして、9月17日に開催された同社の最初のショーでは5社のスポンサーからの支援を受けた。

「おそらく、静的なプレゼンテーションのほうがバイヤーや顧客には適しているだろう。プレゼンテーションに行って製品を見て、その後で製品について話し合うことができるから」とピフェリ氏は言う。「だが、私はバイヤーといつも直接連絡を取り合っている。コレクションの発表前にスケッチを見せて、ピフェリで起きていることについて常に最新情報が知られているかを確認している」。

LFWで舞踏会を開催した意図は?



8月にヴォーグパフォーマーのオシェイ・シブリー氏が人種的動機の反同性愛の憎悪からり殺害されたことを踏まえ、ピフェリ氏はLGBTQ+コミュニティとボールルームカルチャーを称え、光を当てたいと考えた。そして、ピフェリは、ロンドンファッションウィークの山場で舞踏会を開催したのである。

「私はヴォーグシーンとヴォーギングが大好きだ」とピフェリ氏。「表現力がとても豊かだ。靴のプレゼンテーションに関して言えば、無理やり来させるのではなく、人々を惹きつけて来たいと思ってもらうのはいつも難しい」。ボールダンサーは誰もピフェリの2024年春新作コレクションのシューズを履かず、その代わりに踊りやすい特注のシューズを履いていた。

ロンドンのブランドはファッションウィーク中に政治的な声明や活動家としての声明を発表することが多い。シニード・オドワイヤー(Sinéad O’Dwyer)はここ数シーズン、キャットウォークに女性と自認するあらゆるサイズのモデルを起用しており、また、ノキ(Noki)のデザイナーらはレイブなアップサイクルと、持続可能性のアクティビズムを自社のショーに取り入れている。

ロンドンのブリクストンにあるウィンドミル・キャバレークラブに数百人が集まったこの舞踏会イベントは、ブラウンズ(Browns)のバイイングディレクターのアイダ・ピーターソン氏からLFWの最高のショー形式として言及された。

小売業者からの反応



売上高ベースではピフェリのトップ市場はアメリカと中東であり、ノードストローム(Nordstrom)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、ギャラリーラファイエット・ドーハ(Galeries Lafayette Doha)などの小売店で取り扱いがある。

ただし、すべてのバイヤーがユニセックスのラグジュアリーシューズブランドの取り扱いに積極的だというわけではない。ピフェリ氏は、「先週、あるバイヤーとの非常に難しいミーティングがあった。彼から『御社の靴は買わない。ヒールを履いた男性をよく見かけるが、ゲイアジェンダには賛同できない』と言われ、そこで会議は終わった」と述べた。

現在、ピフェリのビジネスは80%が卸売、20%がD2Cだ。創業以来、ヒールをユニセックスのサイズで取り揃えており、D2CサイトでのサイズはE.U.のメンズサイズ45まである。

「大勢の顧客からカスタムオーダーせずに自分のサイズが見つかったというメールを受け取る」とピフェリ氏。「だが、バイヤーがメンズ展開のために当社を実際に信頼してくれる前に、レディースシューズ部門をを確立することが必要だ」。

さらに、「あの舞踏会は、ある意味、政治的な表明だった。自分の立ち位置を世界に知らせることになるわけだが、時には(その立場を)支持したくない人たちもいる」と付け加えた。

ピフェリは、今後のさらなるビジネス成長に向けて、次はアクセサリー分野に拡大し、オンラインのみのリテーラーに参入する予定である。

[原文:How a footwear brand cut through the noise during London Fashion Week]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)