耳掃除は「耳あかタイプに関係なく綿棒がおすすめ」と、甕院長。

写真拡大

「ベタベタ耳あかはワキガ体質」と聞いたことはありませんか? 日本人には少ないと言われる“ベタベタ耳”ですが、「体臭との関係が気になる」「お手入れの仕方が良く分からない」と悩みを抱えている人が多いようです。また、「もともとカサカサ耳だったのに、最近しっとりしている」と耳あかの変化に悩む人も。そもそも、どうして“ベタベタ耳あか”になるのでしょうか。その疑問とお悩みについて、もたい耳鼻咽喉科の耳鼻科医・甕(もたい)久人院長に聞きました。

【動画カット】耳が聞こえないパパ、背後で娘が転んだことに気づかず…手話と口話で激怒する5才児の姿に700万再生

■女性の“ベタベタ耳”はワキガ体質との関連性なし

Q:ベタベタ耳あかの正体について教えてください。

甕院長「耳あかとは、外耳道(※)の奥の皮膚が少しずつ外へ移動し、入り口で剥がれ落ち、分泌腺から出る分泌物と混ざったものです。その分泌腺が通常の皮脂腺に加えアポクリン腺が多い場合は粘り気のある分泌物が多く出るためベタベタ(湿性)耳あかになります。

 耳あかには免疫物質(リゾチーム・IgA・IgG等)も含まれていて感染防御の役割や、侵入しようとするゴミを吸着するなど耳を守る役割もあります。また、耳あかの苦味、臭いが虫の侵入を防いでいるという説もあります」

※外耳道(がいじどう)/耳の入り口から鼓膜までを結ぶ通り道

Q:日本人の約8割がカサカサタイプと聞きます。ベタベタ耳あかの人が少ないのはなぜですか?

甕院長「日本ではカサカサタイプの割合が多いのは事実ですが、世界をみれば地域によってその割合はさまざまです。つまり人種によって異なるということです。アフリカでヒトの起源が生まれ世界各地へ移動、世界中に人類が拡散し、それぞれの地域の環境により身体的特徴も変化し、地域により異なった形質をもつようになりました。日本人の祖先はユーラシア大陸から日本大陸に渡りついた人種であり、それらの人種の多くがカサカサ耳あかであったと考えられます」

Q:ベタベタ耳あかの人は「ワキガ体質」と言われますが、真偽はいかがでしょうか。

甕院長「ベタベタ耳とワキガが関連あるように言われることが多いですが、必ずというほどのものではありません。男性と女性では異なり、統計的には男性の場合はキャラメル状のベタベタ耳あかの人はワキガ体質が多いとされています。一方、女性はベタベタ耳あかとワキガ体質には統計的にはっきりとした関連性はありません。むしろ女性の特徴としては耳あかのタイプより肌表面からの水分蒸発量(経表皮水分蒸散量)の多さがワキガ体質に関係するようです」

■生涯変わらない耳あかタイプ、「カサカサ→しっとり」の変化があったら疾患の可能性

Q:耳あかのタイプは一生涯変わりませんか? 

甕院長「耳あかのタイプは遺伝子によって決定されます。遺伝子の塩基配列は基本的には一生変わりませんので、耳あかのタイプが年齢によって変わることはありません。したがって、カサカサ耳あかがしっとりと湿り気を持つようになった、ということがあれば外耳炎などの疾患を疑います。ベタベタ耳の粘りはアポクリン腺の分泌が関係していますので、その分泌が年齢、ホルモンで変化し、粘り気が変わることはありますが、やはりベタベタがカサカサに変わることはありません」

Q:ベタベタ耳あかのお手入れ方法を教えてください

甕院長「本来、耳掃除はほとんど必要ないのですが、耳あかを人に見られるのは気になるものです。ベタベタ耳垢の日頃のお手入れとして2週に一回程度の耳掃除にとどめ、耳かきは使わず綿棒で、奥に入れずに耳の穴の入口付近を拭き取る程度にします。掃除をしても良い『入り口付近』とは産毛が生えている柔らかい感触のするところです。それより奥の硬い感触のする部位は骨の上に一枚皮膚が載っているだけのデリケートな部分なのでたとえ心地よくても掃除をしてはいけません」

記事監修/甕 久人(もたい ひさと)

「もたい耳鼻咽喉科」院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医、日本聴覚医学会会員。名古屋市立大学医学部卒業後、大学附属病院ではがんを専門に研究、豊橋市市民病院にて臨床経験をつんだのち、地域に根ざしたクリニックの実現のため「もたい耳鼻咽喉科」を開業。