日本では6割の夫婦が陥ると言われるセックスレス。「そもそも健康じゃないとできないんですよね」と語るのは美容師として働く主婦の摩季さん(仮名・50代)。夫婦の絆が深まったと感じ始めていた40代の頃のお話です。糖尿病の手前まで数値が悪化した夫に続いて、妻の体に大きな子宮筋腫が。大学病院の婦人科で診察中に泣いてしまったときの心境を伺いました。

自覚症状なし…。男性の握りこぶしよりも大きい子宮筋腫

20代で結婚してレスに。30代で夫の浮気疑惑があり、糖尿病になりかけている夫がEDを併発した40代。ときを同じくして、私は腰痛を発症。ヘルニアの疑いで検査のため整形外科でMRIを撮ったところ、特大の子宮筋腫が見つかり、すぐに夫と同じ大学病院の婦人科を受診することに。

周囲からは「病気になるタイミングも通う病院も同じだなんて、ある意味仲よし夫婦だね」なんて言われるほど夫との夫婦仲は良好だったのですが、病気になった当事者としては、夫婦ともども気持ちが休まらない日々が続いていました。

●もしかしたら、手術になるかもしれない

じつは私の家系は、母も母の姉も、そのまた親戚の女性たちも…、みんな子宮を患って手術で取っていたんです。だから、私も大学病院への紹介状を書いてもらったときに、「もしかしたら、子宮を取ることになるかもしれないな」と夫に話してはいました。

「心配だから付き添うよ」という夫に「子どもじゃないんだから1人で行けるし。今のところ痛くもかゆくもないから、会社を休まないで」と言って、ひとりで出かけました。

●医師「子宮だけ取ることは難しい大きさです」

私は診察室で思わず泣いてしまいました。
検査結果を見た大学病院の婦人科の医師から告げられたのは、「子宮筋腫があまりにも大きすぎて、年齢的にももう妊娠の希望はないでしょうから、子宮の摘出をすすめます。そして、そこまで深刻ではないけれど、卵巣のう腫もあります。手術するならば、卵巣がんのリスクを残すよりも、卵巣も一緒に取りましょう」という説明をされました。

女性として、子宮を取るというだけでも強い覚悟がいる事態だったのですが、親族で卵巣まで取った人はだれもおらず。どうして私だけ…。不安で涙がポロポロこぼれてしまいました。

●泣きながら夫に電話をすると、すぐに飛んできてくれた

子宮と卵巣の全摘出というのは、大学病院ほどの規模をもってしても、事前に輸血やスタッフの手配を万全にしておく必要があるくらいの大手術になるそう。震える手ですぐに夫に電話をかけました。

すると、「えぇぇ〜!」と声を上げて驚いた様子。そして「大丈夫? 泣いてるの? すぐそっちいくよ」と夫。「会社を休まなくていいってば!」と言ったけれど、夫は午後休みを取ってすぐに飛んできてくれたのです。

●夫と向き合ってじっくり話をした

「子宮も卵巣も取ることになるなんて、女性の体じゃなくなってしまうみたいで。手術するのも、正直、怖い…」と、弱音を吐露すると、夫は黙って体をさすってくれました。そして「まだ考える時間がけっこうあるってわかってホッとしたよ。親戚のおばさんたちにもよく相談して決めよう」と言ってくれて、その日は病院のあとカフェへ寄り道して、二人でお茶をしました。

私の体は自分で思っていたよりもはるかにひどいことになってはいたけれど、夫は「ある意味、自覚症状がなかったんだから、ヘルニアかもって偶然MRIで見つけてもらえてよかったじゃん」と前向きに捉えてくれていて救われました。

●ひとりじゃなくてよかった、夫がいてくれてよかった

20代の頃は、あんなに必死にセックスにこだわっていたのに。そもそも性行為は健康だからこそできることなんですよね。もう40代ともなると、お互い体がボロボロすぎて、そういう元気もありません。でも、そういう行為をしていなくても寄り添っていられる夫との関係も心地いいなと思えるようになっていました。

なにより私の大ピンチに、こうしてすぐに駆けつけてくれる夫は、やっぱり世界でいちばん頼れる存在なんだという確信をもちました。

そして、現在50代になった私たち夫婦。次回は、その後の病気の経過、そしてセックスレスとどう向き合いながら夫と生きていくかというお話したいと思います。