西武・松井稼頭央監督【写真:荒川祐史】

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先発エンスは「走者を牽制しすぎると自分のリズムがなくなってしまう」

■日本ハム 7ー1 西武(2日・ベルーナドーム)

 西武は2日、本拠地・ベルーナドームで行われた日本ハム戦に1-7で完敗し、3連敗となった。今季は松井稼頭央新監督の下、「走魂(そうこん)」をチームスローガンに掲げ機動力を重視しているが、この日ばかりは相手の“サニブラウンに勝った男”こと五十幡亮汰外野手らに足でかき回され、お株を奪われた格好だ。

 先発したディートリック・エンス投手の調子は、決して悪くなかった。しかし3回、先頭の8番・五十幡に中前打され、続く江越大賀外野手の初球に二盗、5球目に三盗を許す。そしてカウント3-2からの6球目に、江越に捕前へスクイズをされ、柘植世那捕手が捕球した時にはもう、五十幡が先制のホームを駆け抜けていた。

 松井監督は「エンスとしては、あまり走者を牽制し過ぎると自分のリズムがなくなってしまう。打者の方としっかり勝負していくという考えもあったと思う」とした上で、「三盗されたところもそうだが、選手たちはその場で必死にやっていますから、こちら(首脳陣)がもっとしっかり指示を出せるようにと思います」と語った。

 6回の守備でも、無死一塁で3番・松本剛外野手に投前へセーフティバントされ、あわてたエンスが一塁へ悪送球し、一気に二、三塁にピンチが拡大。松井監督は「取れるアウトですから、もったいなかった」と悔やんだが、続く4番・野村佑希内野手に中犠飛を許した。

「逆に僕たちもどれだけチャンスで走れるか隙を狙っている」

“五十幡ショック”は試合終盤にまで及んだ。8回、4番手で登板した張奕投手がまたもや先頭の五十幡に右前打を浴び、続く江越には2球目の外角高めのストレートを右越え適時三塁打された。足の速い走者が一塁にいると、投手は盗塁を警戒してストレート中心の配球になり的を絞られやすくなりがちだが、それを絵に描いたような場面だった。

 西武と日本ハムは、ともにチーム盗塁数が19でリーグトップに並んでおり(2日現在)、この試合でも3つずつと譲らず。個人成績でも、五十幡が今季9盗塁でリーグトップを走り、西武の外崎修汰内野手が2位の7盗塁で続く展開だ。西武も3点ビハインドの6回、外崎の遊ゴロが併殺崩れとなる間に1点を返し、さらに2死一塁で、続く4番・中村剛也内野手の2球目に外崎が二盗成功。押せ押せムードになりかけたが、ここは中村が空振り三振に仕留められた。

 西武は今季、盗塁と積極的に次の塁を狙う走塁で格段の進歩を見せているからこそ、開幕前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で右手小指を骨折した源田壮亮内野手、この日故障から23日ぶりに復帰した山川穂高内野手を欠いてもなお、首位争いに踏みとどまってこられたと言える。

 松井監督は「ライオンズの攻撃もそうですが、チャンスがあればどんどんいくというアグレシブさは、やられるとやはり嫌ですよね」と苦笑。「次はなんとか防げるように、逆に僕たちもどれだけチャンスで走れるか隙を狙っているので、引き続き足を使いながらやっていきたい」とリベンジを誓った。豪快な本塁打の打ち合いもいいが、この日のような走り合い、隙の突き合いも、それはそれでワクワクさせられる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)