テザリングには、さまざまな設定や方法がある。写真は、ケーブルを使ってテザリングするUSBテザリング(筆者撮影)

4月3日発生したNTT東日本、西日本の通信障害で、フレッツ光など、最大44万6000件の光回線がつながりづらくなった。発生時刻が午前7時10分からだったこともあり、通勤前の自宅でネットへの接続ができなくなってしまった人もいたはずだ。モバイルネットワークに比べると安定性が高い光回線だが、トラブルがゼロというわけではない。このようなときの一時しのぎとして役立つのが、スマートフォンのテザリングだ。

光回線以上に高速なこともある

スマホの通信速度も上がり、5Gなら1Gbps以上の速度が出ることもある。時間や場所にもよるが、光回線以上に高速なことすらある。固定回線の障害時以外にも、テザリングが活躍する機会は少なくない。ただ、設定そのままで使うと、タイムアウトでテザリングが自動で終了してしまうことがある。接続のために1つひとつの機器にパスワードを入力していくのも少々面倒だ。

また、場所によってはWi-Fiが混雑しすぎていて、テザリングをするとスマホ単体で通信するより、ガクッと速度が落ちてしまうこともある。このようなときには、Wi-Fi以外の手段でテザリングする手がある。ここでは、そんなテザリングの問題を解決する設定テクニックを3つに分けて紹介していく。

テザリングはスマホをモバイルWi-Fiルーターのように使う機能だが、バッテリー消費との兼ね合いもあり、一定期間接続がないと自動でオフになってしまうのがルーターとの違いだ。他の機器をネットにつなぐためだけの端末ではないため、当然あってしかるべき機能と言えるものの、使い方によっては不便になってしまうこともある。休憩時に接続が切れてしまうのは、その1つだ。

例えばテザリングを使ってPCで作業しているとき、トイレやランチに行くための休憩を取ったとしよう。その際にPCをスリープモードにしてWi-Fiを切断すると、スマホ側につながっているデバイスがなくなってしまう。PCだけをデスクに残して、スマホだけを持って行った場合も、同様の状態になる。休憩時間が一定期間すぎると、テザリングがオフになってしまい、作業を再開するとき、再びテザリングを有効にしなければならない。これは少々面倒だ。

標準状態のAndroidは、テザリングを自動でオフにする機能が有効になっていることが多い。じっくり作業したいようなときや、電源につないで充電しながらテザリングしているようなときは、テザリングが自動でオフにならないよう、設定を変更するといい。設定方法は次のとおり。グーグルのPixel 7の場合、「設定」を開き、「ネットワークとインターネット」をタップし、「アクセスポイントとテザリング」を選択。次の画面で「Wi-Fiアクセスポイント」をタップする。


自動でテザリングがオフになる設定を無効にしておくと、再接続が楽になる。バッテリー消費との兼ね合いを考え、設定を変更しよう(筆者撮影)

テザリングの設定は、ここで変更することが可能だ。

標準では「アクセスポイントを自動的にOFFにする」のスイッチがオンになっているため、これを無効にするといい。細かな文言は違うが、同様の設定はPixel以外の端末にも用意されている。

サムスン電子のGalaxyシリーズは、「設定」の「接続」で「テザリング」を選び、「Wi-Fiテザリング」をタップしたあと、「設定」の「詳細設定」で「デバイス未接続のときにOFFにするまでの時間」を「タイムアウトなし」に変更すればいい。

Galaxyは、有効にした場合も時間を5分から60分の間で5段階に設定できるのが便利だ。

無駄にバッテリーを消費しないよう注意

ただし、テザリングを自動でオフにする機能を無効にしていると、パソコンなどを使い終わってもそのままとなり、バッテリーを無駄に消費してしまうことがある。そのため、テザリング終了時には忘れずにオフにしておくようにしたい。また、ソフトウェアバージョンがOne UI 4.1.1以降のGalaxyと最新のWindows 11を使用している場合、「スマートフォン連携」という機能を使ってパソコン側からテザリングを有効にすることもできる。この場合は、接続がない場合、自動でオフになってもあまり手間はかからない。端末や使い方に応じて、設定を変更するといいだろう。

初めての端末をテザリングでネットにつなぎたいとき、少々手間がかかるのがパスワードの入力だ。自分で変更できるため、簡単なパスワードにしておけば手間は少なくなるが、そのぶん、周囲にいる人が勝手に接続するリスクが高まる。複雑なパスワードにすれば問題はないが、キーボードが搭載されていないスマホやタブレットで入力するのは面倒だ。このような時に活用したいのが、QRコードだ。

手間軽減&セキュリティーの両立が可能に

実はAndroidのテザリング機能には、設定値をQRコードにする機能がある。これを使えば、接続したい端末のカメラで読み取るだけで設定が完了する。複雑なパスワードにしておいても簡単に接続できるため、手間の軽減とセキュリティーを両立させることが可能になるというわけだ。ただし、パソコンやゲーム機など、カメラが使えない一部のデバイスでは機能しない点には注意したい。

QRコードの表示方法は次のとおり。Pixel 7の場合、まずテザリングを有効にする。そのあと、「設定」の「ネットワークとインターネット」を開き、「アクセスポイントとテザリング」をタップしてから、「Wi-Fiアクセスポイント」を選択する。テザリングが有効化されている場合、次の画面の「アクセスポイント名」の横に、QRコードのようなアイコンが表示される。ここをタップして、指紋認証などで本人確認をすると、設定用のQRコードが画面に大きく映し出される。


Pixel 7に表示したQRコードをGalaxy Z Fold4で読み取っているところ。これだけでWi-Fiの設定ができる(筆者撮影)

あとは、テザリングに接続したい端末でカメラを起動し、そのQRコードを読み取るだけだ。同様の機能を搭載しているAndroidスマホは多く、例えばGalaxyはテザリングの設定メニューの画面に「QRコード」というボタンが現れる。AQUOSはPixelとほぼ同じ手順だ。ちなみに、接続できるのはAndroidのスマホやタブレットだけではない。

実はiOSやiPadOSを搭載したiPhoneやiPadも、このQRコードでWi-Fiの設定を行える。特にモバイル通信非対応のWi-Fi版iPadは、テザリングを利用する機会が多くなるだけに、便利な機能と言えるだろう。

一方で、カメラの搭載されたWindows11のパソコンでも試してみたが、リンクが表示されるだけで、Wi-Fiの設定はできなかった。デバイスによって、対応の可否が違ってくる点には注意したい。

便利なテザリングだが、Wi-Fiを使うため、どうしてもスマホで直接通信するより、速度が落ちることが多い。特に干渉しやすい2.4GHz帯のWi-Fiでテザリングしていると、電子レンジやBluetoothなどの影響も受けてしまいがちだ。また、Wi-Fiの電波が多いと、周波数を問わず、接続が難しくなってしまう。筆者も記者会見などでテザリングを使ってパソコンをネットにつなぐことがあるが、人が多いと接続すらままならなくなる。

手軽で高速な「USBテザリング」

このようなときには、Wi-Fi以外の手段でテザリングを行うといい。Androidは、Wi-Fiだけでなく、BluetoothテザリングやUSBテザリング、イーサネットテザリングに対応している。BluetoothはWi-Fiと同じ電波のため、干渉の影響を受けやすいが、ケーブルであれば問題ない。イーサネットケーブルを日々持ち歩くのはなかなかハードルが高いため、手軽なのは、やはりUSBテザリングだろう。

USBケーブルならスマホとパソコンの接続に無線を使わなくなるため、速度の低下を最小限に抑えられるうえに、干渉も起こらない。本体同士をケーブルでつながなければならないため、やや取り回しがしづらくなり、見た目もすっきりしないが、パソコンをメインで使うシーンなら通信品質を重視したほうがいいだろう。このようなときのために、短めのUSBケーブルを1本持ち歩いておくのも手だ。


パソコンとスマホをUSBケーブルでつないだあと、「USBテザリング」をオンにするだけと設定も簡単だ(筆者撮影)

ケーブルでパソコンとスマホをつなぐと、USBテザリングが有効になる。Pixel 7の場合、「設定」の「ネットワークとインターネット」から「アクセスポイントとテザリング」を開くと、「USBテザリング」のスイッチがタップできるようになっている。

ここで「USBテザリング」をオンにすると、有線接続としてパソコンがネットワークにつながるはずだ。あとは、いつもどおり通信すればいい。

筆者の環境では、ソフトバンク回線かつWi-Fiテザリングで70Mbps程度だったオフィスでUSBテザリングに切り替えたところ、速度が90Mbps超まで上がった。

Wi-Fi部分の干渉による減速がないぶん、やはり速度は高くなるようだ。

また、この方法だとバッテリーの多いパソコンからスマホを充電でき、一石二鳥だ。テザリングにも複数の手段があることは覚えておきたい。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)