チャールズ国王の戴冠式が終了するまでの数週間、ロイヤルファミリーの生活はまるで、世界中から注目を集めるリアリティ番組のようなものになりそう。歴史的な儀式から豪華な祝賀コンサートまで、あらゆるイベントがTVで放映されることになっている。

ただ、戴冠式そのものは世界のあらゆる場所で画面に映し出されることになる一方、放送されない重要な「場面」があることもわかっている。

「塗油」が放送されない理由とは?

ウェストミンスター寺院で行われる戴冠式の「塗油」の儀式では、カンタベリー大主教がまず、アンプル(聖油を入れる特別な容器)から戴冠用のスプーン(1349年に作られた、金メッキ加工を施した銀製のスプーン)に聖油を注ぐ。大主教はその後、チャールズ国王の手、胸、頭に聖油を塗る。

この塗油は、君主の「聖職者としての地位」を明確に示すものとなる。伝統的なこの儀式は何世紀も前から行われてきたもので、17世紀までは、君主は神から直接、任命されるものと考えられていた。

戴冠式のなかでも特に重要であろうこの場面は、当日TVの画面に映されることはないとみられている。王室関係者は『タイムズ』紙に対し、今回のこの儀式について、次のように語っている。

「神聖な儀式であり、公の目に触れてよいものとして扱われた前例はありません」「今回も確実にこれまでと同様の方法で行われることが、すでに決定しています」

1953年に行われた故エリザベス女王の戴冠式を含め、過去の儀式では人々の目に触れないようにするため、君主への塗油は張られた天蓋に覆われたなかで行われてきた。

一方、チャールズ国王は天蓋に使用する生地を透ける素材にすることで、イギリス史上初めてすべての人が塗油の場面を見られるようにするのではないかと憶測されていた。

今回、塗油については伝統に従うものの、チャールズ国王の戴冠式ではいくつか、従来とは異なる形で行われることがあるという。

例えば、国王とカミラ王妃は、塗油に動物由来の成分を含まない「クルエルティフリー」のオイルを初めて使用する。伝統的な聖油には香料として、ジャコウ(ムスク、ジャコウネコの分泌物)と竜涎香(りゅうぜんこう、またはアンバーグリス、マッコウクジラの腸にできる結石)が使用されていた。

だが、環境保全と野生生物の保護に力を入れてきたチャールズ国王の思いを反映し、今回の戴冠式では聖油として、エッセンシャルオイル(セサミ、ジャスミン、シナモン、ネロリ、ベンゾイン、アンバー、オレンジブロッサム)で香りづけしたオリーブオイルを使用するという。

From COSMOPOLITAN UK