Amazonの衛星通信サービス「Kuiper」が2024年後半に提供開始予定へ!

Amazonは14日(現地時間)、地球低軌道(LEO:Low Earth Orbit)を周回する衛星を利用した通信サービス「Project Kuiper」(以下、Kuiper)の近況について発表し、2023年末までに衛星の大量生産を開始する予定で、この大量生産した衛星を2024年前半から打ち上げ、2024年後半から商用サービスを開始することを明らかにしました。

現在、United Launch Alliance(ULA)の大型ロケット「Vulcan Centaur」の初飛行で最初の2つのプロトタイプ衛星を打ち上げる準備を進めており、今後はプロトタイプ衛星によってシステムが宇宙でどのように機能するかについての実データを取得し、エンドツーエンドの通信ネットワーク全体をテストできるようにできるようにするとのこと。

さらに平行して商用サービスを提供するための衛星の大量生産を行う専用の衛星生産施設の開発をアメリカ・ワシントン州カークランドにて開始したとしています。なお、Kuiperは最大1Gbpsで通信できる政府や企業など向け大型端末、最大400Mbpsで通信できる中小企業や一般家庭など向け中型端末、最大100Mbpsで通信できる個人や車載など向け小型端末を用意するとしています。


最大1Gbpsに対応する大型端末

KuiperはAmazonが開発中の地球低軌道衛星を利用した通信ネットワークで、同社では従来の通信技術によるサービスを受けていないまたは十分なサービスを受けていない人に高速で手頃なブロードバンドを提供することによってデジタルデバイドを埋めることを使命として開発しているとしています。

商用サービスでは“顧客端末”と呼ばれる屋外アンテナを設置して上空を通過する衛星と通信します。従来はこうした顧客端末のような機器は多くの人にとって大きすぎ、複雑すぎ、高価すぎたため、Kuiperがめざすデジタルデバイドを有意義な方法で埋めることは困難でした。


最大400Mbpsに対応する一般向け端末

一方、Kuiperでは何千万もの人にサービスを提供することを計画しているため、プロジェクトの開始時に野心的な目標を設定しており、顧客端末などの利用するための設備の構築費用が500ドル未満で設計することとし、同社では2020年にその目標を達成して従来の設計よりも小型で軽量な新しいアンテナアーキテクチャーを開発しました。

それ以降も同社では端末の設計をより小さく、より手頃な価格でより機能的にするために革新を続けており、直近でその成果をアメリカ・コロンビア特別区(ワシントンD.C.)で開催された衛星関連会議「SATELLITE 2023」にて発表し、小型で強力なアンテナかつその背後にある技術について明らかにしています。


最大100Mbpsの小型端末

<複数の顧客端末を開発>
・政府や企業など向けの高帯域幅設計端末
最も厳しい要求に応える高帯域幅設計の最大かつ最も能力の高いモデルはさらに多くの帯域幅を必要とする政府や企業など向けとなり、サイズは19インチ×30インチで、最大通信速度1Gbpsを実現します。

・中小企業や一般家庭など向けのお手頃価格の高性能設計
標準的な顧客端末は11インチ四方未満、厚さ1インチ未満で、取り付けブラケットを除いた重量は5ポンド未満となっており、この控えめな大きさにもかかわらず、最大通信速度400Mbpsを実現します。最も高いニーズがあると考えており、価格も400ドル未満で製造する予定となっています。

・さらに多くの顧客を接続するのに役立つ超小型端末
7インチの正方形のデザインはKuiperの最小かつ最も手頃な価格の顧客端末になり、わずか1ポンドの重さで最大100Mbpsの速度を提供し、その携帯性と手頃な価格は世界中のさらに多くの顧客にサービスを提供する機会を生み出すと想定しているとのこと。さらに低価格な端末を必要とする一般家庭の顧客だけでなく、車載向けやIoT向けなどのサービスを追求する政府機関や企業の顧客も対象とするということです。


独自開発のカスタムベースバンドチップ「Prometheus」

またKuiperの顧客端末は「Prometheus」というコードネームで開発されたAmazonが独自に設計したカスタムベースバンドチップを搭載しており、Prometheusは最新のスマートフォン(スマホ)に搭載されている5G対応モデムチップの処理能力、数千の顧客からのトラフィックを一度に処理するセルラー基地局の機能、強力なポイントツーポイント接続をサポートするマイクロ波バックホールアンテナの機能を組み合わせています。

PrometheusはKuiperの顧客端末だけでなく、Kuiperの衛星や地上ゲートウェイアンテナにも使用されており、システムは各衛星で最大1Tbpsのトラフィックを処理できます。AmazonはEcho DotやFire TV Stickなどのベストセラーの低価格な製品を含め、顧客向けに何億もの製品を開発して発売してきましたが、Kuiperにもその経験を顧客端末の設計と製造プロセスを応用しており、顧客のために数千万台の顧客端末を生産することを見越して、すでに商用サービスの提供に向けて着実に準備を進めているということです。



記事執筆:memn0ck


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