Z世代の間で流行している「サステナレトロ」のトレンドについて紹介します

こんにちは。Z世代の研究を行っている原田曜平です。

先日より、2022年にZ世代の間で流行ったトレンドについてご紹介しています。

若者たちはいつの時代も最先端にいるものです。2022年にZ世代の間で流行ったさまざまな現象やトレンドが今後、ほかの世代にも流行っていく可能性はおおいにあります。

今回は、「サステイナブル」ではなく、Z世代の間で流行っている新しい「サステナレトロ」についてです。現役大学生たちがレポートしてくれます。

「サステナレトロ」という新しい潮流


写真左上から時計回りに、中山拓樹(早稲田大学商学部2年)、石田華子(清泉女子大学文学部4年)、矢追耕太郎(早稲田大学政治経済学部4年)、西脇真宙(立教大学社会学部2年)(写真:筆者提供)

タレントのローラさんや水原希子さんなどのインフルエンサーの影響もあって、今の若者にはサステイナブル意識が高い人に憧れを抱く人も少なくない。

しかし若者たちは、自分を過剰に演出するものの中身が伴っていない「意識高い系」というイメージを周りから持たれることには抵抗がある。

そこで、サステイナブル意識の高さをほどよくアピールするために用いられているのが「レトロな商品」だ。

もともと、Z世代の間では「西武園ゆうえんち」などレトロな世界観が流行しているが、レトロな商品は使い回しが前提の商品が多く、サステイナビリティーなトーンとの親和性が高い。

そうした中、レトロとサステイナビリティーを組み合わせた商品や店舗を用いて、さりげなくサステイナブル意識が高いことをSNS上でアピールするZ世代が増えている。

事例1:ポカリスエット・リターナブル瓶

大塚グループは、リターナブル瓶に入っているポカリスエットを循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」を利用し、2022年7月12日から全国のイオンで販売を開始した。

Loopとは「捨てるという概念を捨てよう」というミッションを掲げている、アメリカのテラサイクル社が開発したプラットフォームだ。大塚グループの循環型社会実現に向けた取り組みの一環という。


(画像:大塚製薬サイトより)

価格は230円だがデポジットが含まれており、瓶を返却すると70円が戻ってくるシステム。リターナブル瓶であることやデザイン性から、レトロ感があるとZ世代を中心に話題となった。

また、ふたは栓抜きで開けるタイプであるうえ、ロゴなどは瓶に直接印刷されているためプラスチックのラベルがついていないことから、環境にも優しい。サステイナブル意識があることをSNSに投稿してアピールする人もいる。

実際にこの商品を購入した東京都在住の男子大学生も「リターナブル瓶はレトロなデザインですごくかわいい。お風呂上がりに瓶で飲むポカリスエットは最高に美味しかった」と高く評価していた。

これからの新しいモノとの付き合い方を提案

事例2:REMARKET(リマーケット)

ブックオフとモノファクトリーが共同で設立した、“使い方”を想像し、“捨て方”をデザインし、これからの新しいモノとの付き合い方を提案する新ブランド。2021年3月、群馬県前橋市に1号店をオープン。2022年4月には西武池袋本店にてポップアップを開催。

店内すべての商品が、レトロ風にデザインされた“新品”ではなく、実際に昭和時代に使われていた物をリユースした物やリユースするための材料で、学校の跳び箱や店舗の看板など昔懐かしい商品を多数販売している。


REMARKET(ブックオフのサイトより)

今流行の昭和レトロを取り入れつつも、SDGs12の「つくる責任、つかう責任」目標を達成させることにも近づき社会貢献にもつながると、サステイナビリティー意識の高いZ世代の間で話題になっている。

今回インタビューした東京都在住の女子大学生は「昔のドラマで見たようなレトロでかわいい雑貨がいっぱいあり、その場にいるだけで楽しめた。SNS映えしながら社会貢献もできるところがいい」とポップアップを楽しんでいた。

サステイナビリティー意識のきっかけ作り

事例3:HANAKO STAND TODOROKI

2022年6月に東急大井町線 等々力駅にオープンした、SDGsをテーマにした駅ナカ売店、「Hanako Stand Todoroki」。マガジンハウスのライフスタイル誌『Hanako』がプロデュースをしている。

売店では『Hanako』に掲載された商品や、『Hanako』編集部がセレクトしたファッション、生活用品、雑誌、コスメ、季節商品など多ジャンルから約300点の商品を販売している。

コンセプトは“毎日に、ちょっとよい未来の選択を”。お出かけついでにちょっと立ち寄るなど、普段使いのできる場所として、サステイナビリティー意識のきっかけ作りに貢献している。

店舗は駅舎の廃材を使用しているうえ、優しい色味のレトロなデザインになっている。駅舎という場所と店舗のレトロな雰囲気のおかげで、Z世代も気軽にサステイナブルな商品と触れることができる。

取材した東京都在住の男子大学生は、「サステイナブルを全面に押し出した店というのは、意識が高い人しかいないイメージが強く入店しづらかった。HANAKO STANDはレトロでかわいらしい印象で、駅ナカにあるのもあり気軽に利用できるのが魅力」と語っていた。


(写真:筆者提供)


(写真:筆者提供)


(写真:筆者提供)

以上、さまざまな「サステナレトロ」商品について紹介した。

サステイナビリティーへの意識が高いことを自己ブランディングの一環としてSNSで発信する若者も多い。一方で、あからさまな意識の高さはZ世代の間で敬遠される傾向にある。だからこそ、流行を取り入れつつも、さりげなく自分の「意識の高さ」をアピールできる「サステナレトロ」がZ世代にはほどよいといえるのかもしれない。

原田の総評:若者の意識自体は実は高くない

現役大学生のレポートはいかがでしたでしょうか。私の調査によると、Z世代のサステイナブル等の社会意識はあまり高くないことがわかっています。

もちろん、文中に現役大学生が書いてくれたように、ごく一部の若者の間では、サステイナブルに関する発信を自己ブランディングとしている人もいますが、決してマジョリティーではありません。

Z世代の多くは、このサステイナブルは、自分世代よりむしろ大人が興味を持っているものだと認識していることもわかっています。

Z世代が興味を持っている社会テーマは、自分が利用する商品に関するもの、友人や同世代の悩みに関するもの等「自分に身近なもの」。

例えば、「SHEIN労働環境問題」「飲食店の紙ストロー」 「インフルエンサーの誹謗中傷問題」「セクハラ・パワハラ問題」「奨学金問題」「LGBTQ」(公にする友人やインフルエンサーも多い)「生理中用バスボム批判」(生理中に経血が気になって湯船につかれない悩みを解決する入浴剤。販売会社が悪趣味すぎるとたたかれている)などがそれに該当します。

しかし、多くのZ世代があまり関心を持っていない「サステイナブル」も、Z世代の多くが関心を持つ「レトロ」と掛け算されると、彼らにとって新しい魅力的な概念になったのだと思います。

今後、大人が思っているほど社会意識が高くないZ世代の社会意識を高めるためにも、企業にはCSR活動として、SDGsなどの取り組みと、Z世代のトレンドを掛け合わせることが必要となっているかもしれません。逆に言うと、こうしたCSR活動を行わないと、少なくともZ世代の多くには届かない企業活動となってしまう可能性が大きいと言えます。

(原田 曜平 : マーケティングアナリスト)