マネーフォワードは10月17日、オンラインで2022年11月期第3四半期の決算説明会を開催した。同社 代表取締役社長 CEOの辻庸介氏が説明に立った。

○連結売上高が前年同期比42%増の54億6000万円

第3四半期の業績に関して辻氏は「通期見通しの達成に向けて順調に進捗している。今後、高成長のビジネスドメインに投資を集中させ、市場環境の厳しさも増すため、成長とマージンの改善を両立する形をより強化していく」と概況を説明した。

マネーフォワード 代表取締役社長 CEOの辻庸介氏

同社はクラウド会計サービスなどバックオフィスSaaS(Software as a Service)などの事業を「ビジネスドメイン」、決済サービスを軸とした「ファイナンスドメイン」、FinTech推進・DX(デジタルトランスフォーメーション)支援の「Xドメイン」、会計簿などの「ホームドメイン」の4つのセグメントで事業を展開している。

全社の連結売上高は前年同期比42%増の54億6000万円、SaaS ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)は同43%増の150億6000万円と見通し上限を上振れし、4ドメインいずれも前年同期比から成長を続けている。

第2四半期に引き続き、中堅企業向けARRが前年同期比112%増、SMB向けARRは純増ユーザーの増加とARPA(Average Revenue per Account:課金顧客あたる売上高)の上昇で同35%増と第2四半期の同24%から拡大した。

2022年11月期第4四半期の概要

○ビジネスドメインの成長が顕著

ビジネスドメインは前年同期比49%増の39億1000万円、法人向けストック売上が同52%と高い水準となり、BOXIL SaaSのスマートキャンプは同48%となった。課金顧客数は同27.9%増、法人顧客数はWebと士業事務所経由での導入が進展したことから同28.1%増、法人ARPAはWebプランの価格改定効果、中堅企業ユーザーの拡大で同20.3%と増加している。

ビジネスドメインの概要

ファイナンスドメインは前年同期比59%増の3億100万円となり、請求・決済代行事業(ストック売上)が同63%増の1億300万円、売掛金早期資金化事業(フロー売上)が同56%増の1億9800万円。トピックとしてはサイボウズが「マネーフォワード ケッサイ」を導入し、入金処理や催促にかかわる作業工数を軽減したという。

ファイナンスドメインの概要

Xドメインは前年同期比3%増の3億9500万円、ストック売上は同16%増の2億2100万円となり、リリースされたDX支援サービス「Mikatano ワークス」の売上拡大により、第4四半期以降の成長加速を見込む。金融機関などにおけるDXニーズの高まりに対応するため、提供サービス数は100件まで増加し、金融機関の法人顧客向けDXソリューションを強化することで、ストック売上比率60%を目指す。

Xドメインの概要

ホームドメインの売上高はグループ会社であるNext Solutionの連結が開始し、前年同期比32%増の8億4100万円。家計簿・資産管理アプリの「マネーフォワード ME」の利用者数は1370万を突破し、課金ユーザー数は同20%と堅調に推移した。

ホームドメインの概要

今後の業績見通しは、2022年の連結売上高は前年比35〜36%増の210億7000〜213億3000万円、期末のSaaS ARRは同42〜46%増の159億4000〜163億9000万円、第4四半期の売上高は同33〜39%増の57億7000〜60億3000万円の見通しだ。

法人ARRの成長に向けて、第4四半期で15億円〜17億円の広告宣伝費の投下を予定し、EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)は第3四半期のマイナス18億7000万円から同18億5000万円〜13億5000万円の改善を見込んでいる。

今後の業績見通し

○インボイスと連結会計に対応した新サービス

そのほか、辻氏が高成長を期待するビジネスドメインに関して、先日発表した中堅・エンタープライズ企業向けに請求書受領に特化した「マネーフォワード クラウドインボイス」と、2022年冬の提供開始予定のクラウド連結会計システム「マネーフォワード クラウド連結会計」などについて触れられた。

マネーフォワード クラウドインボイスは、改正電子帳簿保存法やインボイス制度に伴う請求書のデジタル化ニーズに対応するため、請求書の一括受領・電子化を行い、中堅企業などにおいて利用されている支払管理システムとシームレスな連携を可能としている。

マネーフォワード クラウドインボイスの概要

一方、マネーフォワード クラウド連結会計はグループ経営を行う企業に向けて、連結会計業務の効率化をクラウドで実現し、グループ各社のデータ収集から連結処理までを自動化・効率化することで、連結会計の手間や工数を削減するとしている。

マネーフォワード クラウド連結会計の概要

最後に同氏「非常に大きな潜在市場で事業を展開しているため、成長と収益率を改善するとともに中長期で成長し、ユーザーに価値を提供できるように取り組む」とコメントしていた。