名古屋めしの「味噌カツ」(画像はイメージ)

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名古屋が西洋だったなんて――。2022年9月下旬、あるホテルが販売する「名古屋めし」を食べられる宿泊プランがツイッターで議論を呼んだ。「味噌カツ」や「手羽先からあげ」など、多くの名古屋めしが「洋食コース」に含まれていたためだった。

名古屋めしには「小倉トースト」や「あんかけスパゲティ」など、何かとジャンルの定義が難しい料理が多い。識者は「組み合わせの妙」を楽しむ名古屋人の気風が、独特な食文化を育んできたと分析する。

「手羽先イタリア料理説」も...

話題になったのは、名古屋市内のホテルが実施した「名古屋めし」を食べられる宿泊プランの内容。夕食を和食か洋食かで選べるというものだったが、和食は「ひつまぶし」だけなのに対し、洋食には「手羽先唐揚げ」「大海老フライ」「味噌カツ」「きしめん」といった料理が記載されていた。

これにツイッターユーザーから「全ての名古屋メシは和食だと思っていた」「名古屋人の私でも混乱する」「名古屋が西洋だったなんて知らんかった」などと驚きの声が続出。一方で、「和洋は関係ない 名古屋飯は名古屋飯 異論は認めない」「和食も洋食もナゴヤ飯だ」のように、名古屋めしはあくまで独自のジャンルだと主張する人も多かった。和食や洋食にならい、「名食」と略して呼ぶ人もいた。

「なごやめし普及促進協議会」の公式サイトは「バリエーション豊富なのがなごやめしの大きな特徴」だとし、「麺類に御飯のおかず、菓子に喫茶メニュー、酒の肴にごちそう食材、和食に中華に洋食、伝統的な郷土食から特定の店の創作料理が広く普及したものまで...。これほどたくさん地域特有の料理が存在するのは、国内では他に沖縄くらいしかないのではないだろうか」と、名古屋めしが持つ多様性を説明している。

「味噌カツ」のほかにも、スパゲッティに胡椒の効いた具入り餡をかけた「あんかけスパゲティ」や、トーストに小倉あんを載せた「小倉トースト」など、何かとジャンル分けが難しいグルメが多い。同普及促進協議会の公式サイトでは、15年のミラノ万博日本館で名古屋グルメが振舞われた際、現地の男性に「手羽先は特にイタリア料理に似ている」と評された、というエピソードも紹介されている。

名古屋グルメの「特色」とは

なぜ、名古屋めしには「分類不能」な食べ物が多いのだろうか。「名古屋めし料理家」として活動する作家のSwindさんは10月6日、J-CASTニュースの取材に対し、名古屋めしが独特な食文化となった理由について次のように分析する。

「名古屋めしは味噌だれ+とんかつ=味噌カツのように『組み合わせの妙』を楽しむ料理が多く、和食・洋食・中華にこだわらず名古屋人の嗜好に沿って『美味しい』と思う組み合わせから独自の食文化を育んできたというのが理由の一つではないかと考えています」
「名古屋めしは『消費地市場としての食文化』であるため、他の多くの郷土料理とは異なり『地元産品を使った料理とは限らない』という特徴があります。また歴史的に東西を結ぶ交通の要衝であったことから、様々な情報や文化が名古屋界隈を行き交っており、それらを受け入れつつ自分たちで組み合わせ発展させていくことで名古屋独自の食文化が育まれてきました。その気風と伝統が、現在の『和洋中にこだわらない名古屋めし』になっていったと考えられます」

なお、Swindさんは話題になった名古屋めしの「和洋」の定義について「和食の方は問題無いように思う」としつつ、「洋食はなかなか大胆かなと思います。大海老フライは洋食扱いできるとして、手羽先唐揚げはフライドチキン的な扱い、味噌カツはとんかつに味噌ベースのソースがかかったものと解釈すればギリギリ洋食といえなくもありません。しかし、きしめんは和麺のカテゴリなので洋食に混ぜるにはさすがに厳しそうです」とした。