「もしかして盗難予告?」 愛車のワイパーにチラシや名刺を挟む行為… 「不法侵入」にならないの?

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昔からある、チラシをワイパーに挟む行為

 自分の愛車のワイパーに「高価買取します!」、「このクルマを買取させてください!」などと書かれたチラシが挟まれていることがあります。
 
 昔からよくあるこの行為ですが、これは何のためにやっているのでしょうか。

自分のクルマにこんなチラシが挟まっていたら盗難に注意!? なぜこんな行為をするのか?(写真撮影:加藤久美子)

 実際、本当にそのクルマを買い取りたいという業者も存在するでしょうが、なかには「高価買取」のチラシを盗難のための情報収集に使っているケースも少なくありません。

【画像】このチラシがワイパーに挟まっていたら要注意!? どんな風に挟まっているの?

 窃盗団がクルマを盗む際、(とくに旧車)、標的となるクルマについてさまざまな情報を収集して用意周到に準備をするための手段として使われるのです。

 まず、最近の窃盗団は日本国内のサプライヤーから車種指定で依頼を受けて盗むクルマを探します。

 探し方はいろいろありますが、最初に考慮されるのが「解体ヤード」までの距離やルートです。

 盗難された旧車の場合、完成車の形で取引されることは稀なので、まずは解体して販売しやすい状態にします。

 作業がおこなわれる場所を(解体)ヤードといい、比較的多いのが千葉県でほかに茨城県、愛知県、埼玉県など自動車盗難件数と合致しています。ヤードが多い場所では盗難も多い、ということです。

 あらかじめ盗んだクルマを運び込むヤードを決めてそこから半径●kmという感じで探していきます。

 その際利用するのがグーグルマップのストリートビューで狙うクルマがどのあたりにあるかを確認します。

 もちろん、現場をクルマ(これも盗んできたクルマであることが多い)で外国人3−4人が1チームとなって深夜に住宅街などを走り回ってターゲットを探すようです。

 ターゲットが見つかってもすぐに盗むことはあまりなく、かなり周到な準備をしてから盗むようですが、盗むための好条件がそろっていた場合は、その場で盗んでいくこともあります。

 その第一段階のひとつがワイパーに「高価買取チラシ」を挟み込むことです。

 数種類のチラシや名刺を用意して、週ごとに変えながらワイパーに挟んで様子を見ます。

 毎週挟むチラシを変えることで、そのクルマが何週間動かされていないかなどをチェックし、セキュリティがついている車両であれば、2−3週間でバッテリー保護のために電源オフの状態になるので、それを待ってから盗むことも。

 また、チラシを挟みながら周囲を下見してNシステムの有無を含めて逃走経路を確認し、周辺の防犯カメラなどもチェックします。

 クルマのセキュリティ内容も確認し、タイヤロックやハンドルロック、バッテリー状態、セキュリティ装置の種類など細かくチェックしていきます。

 盗難目的で使われるチラシなので多くは内容がでたらめです。

 電話番号や古物商の許可番号なども架空のものか、実在するほかの会社の情報を使っている場合もあります。

 盗む気満々で挟んでいるので、お金を出して買い取る気などみじんもありません。

しかし、「買取チラシ」を持っていれば、オーナー自身と鉢合わせしたり、近所の住民に目撃されたりしても、買取業者を装って怪しまれないようにすることが可能です。

不法侵入になる場合、ならない場合の違いは?

 ところで、「買取チラシをワイパーにはさむ」という行為はクルマが置いてある駐車場まで足を踏み入れていることになりますが、私有地である駐車場に入ることは不法侵入などの違法行為にならないのでしょうか。

この件について、警察関係者に聞いてみました。

――駐車場まで入ってきてワイパーにチラシを挟む行為は不法侵入などに該当しますか。

 結論からいうと、『駐車場に入ってきてクルマのワイパーにチラシを挟んだ』というだけでは不法侵入(刑法第130条住居侵入罪)の罪に問われることはないでしょう。

 駐車場がどのような場所に位置しているかにも関わってきますが、公道に面していてフェンスや柵などがないような場合は問題になりません。

 基本はポストに投函される広告チラシなどと同じ扱いです。

――罪に問われるケースはどういうときでしょうか。

 駐車場に行くまでに住民しか入れない入り口があったり、フェンスで囲われていたりした場合、また、マンションの玄関や駐車場の入り口などに「居住者以外立ち入り禁止」などの立て看板や掲示がある場合、無断ではいると住居侵入罪に問われる可能性が出てきます。

 また、軽犯罪法第1条第32項(入ることを禁じた場所に正当な理由がなくて入った者)もかかわってきます。

 住民やマンションの管理組合が明確に『入ることを禁じた場所』には入ってはいけません。

 戸建てなら住まいの敷地内すべて、マンションなどの集合住宅ならエントランス周辺の共有スペース、敷地内にある駐車場など敷地すべてが対象となります。

 とくに「立ち入り禁止』『チラシ配布禁止』といった張り紙がある場合は、罪に問われる可能性が高くなります。

 それがないのであればマンションの管理組合などにお願いして掲示を設置してもらいましょう。

――クルマにチラシを挟む行為は自動車盗難にも関わりがあるといわれていますが、見かけたらどうしたらいいですか。

 その場で110番してください。警察官を向かわせてチラシを挟んだ人に話を聞いたり、注意したりすることはできます。

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とくに狙われやすいのは一定期間以上も放置してるクルマ(写真撮影:加藤久美子)

 盗難目的でチラシを挟む場合、対象となるのは『旧車』がほとんどです。

 とくに同じ場所に駐車されているクルマのなかで旧車だけにチラシが挟まっている場合は盗難のための情報収集であるとみて間違いないでしょう。

 なお、同じ地域でも挟まれやすい場所、ほとんどはさまれない場所もあります。

 これは、盗んだあと、解体ヤードに持ち込むまでの距離や逃走経路が関係しています。

 もし、自分のクルマにチラシが挟まれる機会が多ければ、可能な限り別の場所に駐車するなどして所在を消すことが一番です。

 駐車場を変えずタイヤロックやハンドルロックなどの防犯グッズを追加したところで旧車窃盗団はあらゆる手段で盗んでいきます。

 駐車場所の変更が難しければ防御度が高く、台風や地震などで誤作動がないカーセキュリティをつけるか、GPSを仕込む、駐車監視モードのドラレコをつけることも有効と考えられます。