開業以来初! USJが母の日・父の日に限らない「感謝週間」を企画した理由
母や父に感謝する日として母の日や父の日が定着していますが、テーマパークの「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(以下USJ。大阪市此花区)では、2022年5月30日(月)から6月5日(日)までの1週間、母や父に限らず、大切な人へ日ごろの感謝を伝えるイベント「Thanks Love Week」を、2001 年の開業以来、初めて開催しています。
その目的やイベントの実際について、同社のマーケティング本部コーポレートコミュニケーション部長(企業広報・CSR促進担当)の藤井久仁子さんに聞きました。
母と父だけではない「大切な人」に感謝するイベント
--「Thanks Love Week」(感謝週間)は母の日(5月第2日曜)と父の日(6月の第3日曜)の中間の週に設定されています。開催の意図は何ですか。
藤井久仁子さん(以下、藤井):近年、ひとり親家庭が増えるなど、家族の形が多様化しているといわれます。そうした社会背景の中で、母や父だけではなく、日ごろから感謝を伝えたい身近な誰かが存在する人は多いと思います。そこで、母の日や父の日に限らず、どなたにでもその思いを伝える記念日を作ろうと思いいたりました。今回のイベントを通じて、多様性を認め合う社会の実現に向けて、さまざまな家族や愛の形を応援したいと考えています。
--「ダイバーシティ」(多様性)の考え方ですね。そういえば、USJは今年春(2022年3月)、企業として「私たちの社会的存在意義」を発表し、社会貢献活動を推進すると明言していますね。
藤井:はい。各種のチャリティ、奨学金制度など子どもの未来を考える取り組み、また、温室効果ガス、プラスチック、食料廃棄物削減などの環境問題への取り組みを実践していきます。今回の感謝週間のイベントは、多様性尊重の一環と位置づけています。
--どなたかの発案によるものですか。
藤井:イベントの企画やブランドの構築をするインテグレーテッド・マーケティング部という部署があります。季節イベントを企画する20代・30代のメンバーが中心の会議で、「母の日、父の日に何かイベントをしようか」とディスカッション中に、メンバーから「社内でダイバーシティのプロジェクト活動も進んでいるし、もっと自由な発想で考えてもいいんじゃない?」というひとことが出ました。そこから枠にとらわれずに考え始めたのがきっかけです。このアイデアが生まれてから、わずか半年足らずで今回のイベントの実現に至りました。
--テンポよく企画が実現したのですね。「感謝週間」のイベントは今年だけの予定ですか。
藤井:今後も同じ時期に開催していきたいと考えていて、いつか社会に定着すればいいなと思っています。
感謝の伝言をスタッフやキャラクターが手伝う
--具体的にはどういうイベントなのでしょうか。
藤井:感謝の気持ちを伝えるのが照れくさいことはありませんか。そんな思いをパークのクルー(スタッフ)やキャラクターが盛り上げます。まずは、クルーからご来場の方へ、特製の記念ステッカーをプレゼントします。1シートにシール2枚が付いていて、感謝の思いを伝えたい相手の方の衣服やバッグに、ステッカーを貼ってさし上げてください。
次に、そのシールを目印にクルーが話しかけたり、キャラクターがこの期間限定の花束を持って手を振ったり、手でハートマークをつくってジェスチャーするといった特別なシーンに出合えるかもしれません。
来場者に無料で配られるステッカー。
--感謝の表現を、スタッフやキャラクターが手伝ってくれるわけですね。
藤井:そうです。「ありがとう」を伝えるきっかけづくりをさせていただきます。エントランスや中央の天蓋付近では、キャラクターによる特別なお出迎えと写真撮影の機会などもご用意しています。
パーク内では、スタッフが来場者の「感謝の表現」のきっかけをつくってくれます。
キャラクターが「感謝週間特製のバラのブーケ」を持って出迎える。
--ありがとうございました。
感謝の気持ちを誰かに伝えるために行動する日……USJは、母の日と父の日の間の「感謝週間」を社会に提案し、パークでは、スタッフやキャラクターが来場者の照れる背中をひと押しするイベントを催すということです。さまざまな立場の人が、誰かと温かい気持ちを共有できる機会として定着するといいなと思わせる試みです。
(構成・文 藤原 椋/ユンブル、写真は藤井久仁子さん撮影・提供)