つるの剛士(左)、ウルトラマンダイナ(右) (C)円谷プロ

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特撮作品『ウルトラマンダイナ』の放送25周年を記念し、「TSUBURAYA IMAGINATION」でのオンライン独占配信が決定した。これにちなみ、当時ウルトラマンダイナに変身するアスカ・シンを演じたつるの剛士氏に、当時の思い出や『ダイナ』についての想いを語っていただいた。

『ウルトラマンダイナ』は1997年放送の特撮作品。宇宙開拓時代「ネオフロンティア時代」を迎えた人類の行く手を、謎の生命体スフィアや怪獣たちが阻む。防衛チーム・スーパーGUTSのアスカ・シンは光の巨人ウルトラマンダイナに変身し、仲間と困難を切り拓いていくストーリー。

前年放送され好評だった『ウルトラマンティガ』の設定を引き継いでおり、当時のウルトラマンシリーズでは珍しく明確に前作の続編という位置づけの作品であった。
『ウルトラマンダイナ』がオンライン配信されるのは『ウルトラマンティガ』に続いて、今回が初めてのことになる。

つるの剛士氏は俳優・歌手・マルチタレント。デビュー3年目で『ダイナ』の主人公アスカ・シンを演じ、体当たりの演技で好評を博した。
後にバラエティでも活躍、アイドルグループ「羞恥心」のリーダーとして歌手デビュー。
2009年にはベストファーザー賞を受賞、育児に力を入れる父親、いわゆる「イクメン」の代表格の1人。
2022年に小田原短期大学を卒業、幼稚園教諭二種免許を取得した。

つるの氏は、アスカと自分の関係について「僕は、『ダイナ』はドキュメンタリーだと思っています。もちろん『ダイナ』が始まってからの1年間はアスカの成長記でもありましたが、終わったあとのアスカも、僕は作品だと思っているんです。僕自身もつるのとアスカの隔たりがないから、アスカを生かすも殺すも僕次第だと思ってます」と話す。

当時の自分については「監督に言われたんですよ。『つるちゃんね、この作品は地球の裏側まで永遠に残るんだからね。それを意識しなよ』って。当時は何言ってんだよと思っていたんですが、でも本当に残るんですよ。ちゃんとやっときゃ良かった。何であんなに朝まで飲んで ”裏スーパーGUTS” やってたのかなと思って。でも、その結束感もすごい財産でした」と振り返る。

怪獣としては、ヒマラ、ラセスタ星人、ラブモス、バオーンなどが印象深いとのこと。また、実相寺昭雄監督が撮影した第38話「怪獣戯曲」は、撮影の方法が独特だったことを覚えているという。

今回の配信については「お父さんとの関係性のストーリーを1回見てもらえると、なんでアスカが他の作品によく出てくるのかとを分かってもらえると思う」と、注目ポイントを語ってくれた。

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(C)円谷プロ

──まずは小田原短大卒業、おめでとうございます。教員免許をお取りになったんですよね。

つるの 人生100年時代と言われていますからね。芸能界だけの仕事で生きていくというよりも、もっといろいろできたらいいなと思って。実際、自分も子どもを5人も育てていましたし、今までの自分の芸能生活を振り返っても、ウルトラマンも含めて子ども関係の仕事をいろいろやらせていただいて、自分の経験も豊富ですし。何かここらで、一念発起でいいかなと思ってて。最初は独学でいこうと思っていたんですが、僕は高卒だったので、教員の国家試験を受ける資格がないんです。それだったら短大に入ってから資格を取っていこうと。

──幼稚園を選んだのはなぜなんですか。

つるの 幼児教育に興味があったし、自分自身も保育とかをやってきた経験もたくさんあったので。保育を学んできたので分かるんですが、幼児教育には総合的な学びがあるんです。まずは幼児かな、と。ただ幼児教育をやっていると、やっぱり問題提起もだんだん小学校の方へ移行してくるんですよね。せっかく幼児教育で育った子どもが、小学校でみんな普通になっちゃうというパターンがあるので。勉強すればするほど、小学校の勉強もしたいなという欲が出てきたのも確かです。来年、専攻科に進むんですが、その後四年制大学に行こうかな、という夢もあります。

──芸能活動との両立は大変だったのでは?

つるの それが、世の中がコロナになって、僕らも仕事ができなくなっちゃった。でも逆に勉強できる時間ができたんです。無事に卒業できてよかった、仕事しながらだったら無理でしたね。本当にナメてました。良かったです。

――『ウルトラマンダイナ』も放送から25年、もう後輩のウルトラマンの方が多いぐらいです。つるのさんにとって、ウルトラマンダイナはどういう位置づけですか。

つるの もう、一心同体で、あまり自分がウルトラマンだとかウルトラマンじゃないだとか、そういうことすら最早なくて、区切りがないんですよね。前から言っていますが、僕は『ダイナ』がドキュメンタリーだと思っています。もちろん『ダイナ』が始まってからの1年間はアスカの成長記でもありましたが、終わったあとのアスカも僕は作品だと思っているんです。いまだに『ダイナ』のことを応援してくださる皆さんは「アスカ、アスカ」って言ってくれるし、僕自身もつるのとアスカの隔たりがないから、アスカを生かすも殺すも僕次第だと思ってます。

――ご自分と役を分けられる役者さんと、がっちりリンクされる役者さんがいらっしゃいますが、つるのさんはほぼアスカとブレがないという感じです。

つるの 放送が終わった後、僕自身も『ダイナ』『ダイナ』と言い続けてきましたし。このあいだりっちゃん(斎藤りさ:ユミムラ・リョウ役)に言われたんですよね。「ダイナがこうやってみんなから応援されているのは、つるちゃんがダイナって言い続けてるからだからね、ありがとう」って。自分ではそんな意識はなかったんですよね。

──役者さんによっては固定的なイメージがつくのを嫌がるというか、毎回違うものになりたいという方もいると思いますが、そういう意識は全くありませんでしたか。

つるの 僕自身があまり俳優にこだわってなかったからだと思うんですよね。今でもそうですが、肩書不明なんです。歌も歌う、俳優もやるし、バラエティやってと言われたらやるし、バカやってと言われたらやるし。幼稚園の先生やってと言われたらやるし。やること、できることを全部やりたいんですよ。あんまり真面目に「俳優とは!」みたいな感じではなかった。亮さん(木之元亮:ヒビキ・ゴウスケ隊長役)がどちらかというとそんな感じだったから、「つるちゃんはもう少しこういう風にしたほうがいいよ」とか説教を受けたりしてましたけど、心の中で「うるせえな」って思っていたので(笑)。超生意気だったから。

――つるのさんとアスカは切り離せない存在だとは思うんですが、あえて当時のご自身の演技を振り返ってみてどうですか。

つるの それは酷いですよ(笑)、聞かないでください。芸能界に入って間もない僕の成長期ですから。如実に、わかりやすく1年間で成長していますね。自分の心持ちもそうなんだけど。最初はもう本当に「ハァ!?」とか思っていましたからね。劇中まんまですよ。指導役のリョウ隊員がいて、僕は訓練生で、状況も自分の心の中もあんな感じです。なんでこんな所にいるんだ、俺、って感じでした。それが続けていくうちに、スタッフさんの苦労や現場の大変さ、いろいろな人の背景が分かってきたりしたんです。芸能界に入ってきた若造の成長記でもあるし、スーパーGUTSに入ってきた若造の成長記でもある。あの1年は恥ずかしくなるときもありますけれど、これはこれで僕のまんま、成長記なんだなって思っています。児玉(高志)監督に最後言われましたからね。「アスカ変わったね」って。それが答えだと思います、多分。

――素晴らしいご経験だったと思いますが、強いてその時の自分にひとつだけ何かを伝えられるとしたら、何を伝えますか。

つるの 当時も監督さんに言われたんですよ。「つるちゃんね、この作品は地球の裏側まで永遠に残るんだからね。それを意識しなよ」って。何言ってんだよって思っていたんですが、でも本当に残るんですよ。ちゃんとやっときゃ良かった。何であんなに朝まで飲んで裏スーパーGUTSやってたのかなって思って。でもその結束感というのもすごい財産でした。それはスーパーGUTSのキャラクターもあったし、アスカのキャラクターに助けられているところもあったと思いますけれど。今の役者さんはみんな真面目で、ものすごくちゃんとしてる。感心するもん、すごいなって。でも言い訳するなら、それ以上に大切なものをうちらはちゃんとあの現場で養っていたんだと思います。後輩にも、もうちょっと不真面目になれとか言うことはありますね。

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──『ウルトラマンダイナ』の放送が終わってからの25年間もアスカを演じる機会は多かったですよね。

つるの TV本編がああいう終わり方してるので、今後いろいろなウルトラマンが続いていくときに、アスカがどこかで登場するかも知れないなっていうのは当時からありました。

――結果としてまさにそのまま出てきましたね。多次元宇宙を放浪していて、困った人たちがいると助けに現れるっていう。

つるの そうですね。そのたびにアスカはどんどん成長してます。その成長も「今のアスカだったらこうだと思いますよ」みたいなのが結構僕の中でもあって、監督さんとか脚本家さんとか、いろいろな人と話し合います。それはつまり「アスカ=僕」ということなんですが、僕自身が、「今のアスカだったらそれ言わないと思います」と。自分自身がアスカっていう責任感みたいなものがずっとありましたね。

――ウルトラマンの後輩たちにとっては頼りになる先輩ですね。

つるの 頼りにはあんまりなっていないと思いますが(笑)。

――でも困った時にふらっとやってきてくれて「どうしたんだい」っていう感じの先輩になっているんじゃないですか。

つるの 作品上ではそうかもしれないし、本来もそうであってもらいたいと思うんですけれどね。毅志(吉岡毅志:高山我夢/ウルトラマンガイア役)も太陽(杉浦太陽:春野ムサシ/ウルトラマンコスモス役)もよく連絡くれます。後輩ができるたびに僕のところに電話がかかってきて。「ウルトラマン○○の○○です。よろしくお願いいたします」みたいな。俺は田舎のじいちゃんかっていう(笑)。変な感じですよね。でも、気づいたらたくさん後輩ができてるから。

――今回『ウルトラマンダイナ』が配信開始になりますね。

つるの 『ダイナ』を見てくださってる皆さんって、相当苦労されてるんですよ。作品を一から見てくれた人っていうのはリアルタイムで見てくれたか、DVDかなにかの形で見てくれてるわけじゃないですか。だから本当に感謝ですよね。僕は『ウルトラマンサーガ』、『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』や『大決戦!超ウルトラ8兄弟』と、いろいろな作品に顔を出させていただいていたので、何となく認知はされてるんですが、果たして『ダイナ』本編を1話から51話までしっかり作品を見てくださっているかというと、分からないですよね。だからこれを機会に見てほしい。その反面、先程の話じゃないですが、めちゃめちゃ恥ずかしい。それもひっくるめて、『ダイナ』がどんな作品だったのかというのを見てもらいたいですよね。

――特にここに注目してほしい、というところはありますか。

つるの アスカの成長記として大目に見てもらいたいということ。それとて一気見してほしいと思いますね。もちろん配信の日にちもありますが。僕とカズマ=お父さんとの関係性を描いたストーリーを1回見てもらえると、なんでアスカが他の作品によく出てくるのかというのを分かってもらえると思うんです。あと、リアルに小さい子たちに見てもらいたいです。

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──当時の怪獣で印象に残っているものはありますうか。

つるの 難しいな。いっぱいいるからな。ヒマラとかね。原田(昌樹)監督の怪獣はやっぱり印象的だな。いつも夕焼けだったんだよね。怪獣に哀愁があったんですよ。ラセスタ星人とか、ラブモス、バオーン。ああいうコミカルな怪獣は結構インパクトありますね。

──個人的にはブンダーの登場した「怪獣戯曲」の回が、インパクトがありました。

つるの 実相寺(昭雄)監督の時ですね。印象深いな。実相寺監督がいつも連れているアライグマのお人形さん、ちな坊。楽屋で会ったんですよ。「『人形』って言っちゃダメだからね、役者だからね」って言われて。不思議でしたよ。あの時は実相寺監督がコダイの人を連れてきて、スタッフさんも全員ガラッと変わってました。まるっきり撮影の方法も変わって、なんかずっと影ばっかり撮ってて、モニター見るとシルエットしか映ってないんですよ。カメラのレンズの上をワセリンでぼやかしたりして、これどうなってるのって。お芝居のしようがないんです。「そのまましゃべっててください」って言われて、なんだこれって思いました。本当に特殊でした、全部。

――出来上がったのを見てご自分でも驚かれた感じですか。

つるの そう。こんな感じになってるんだって。実相寺監督の頭の中にある世界というか。その中に僕らが入っていくという感じがして、あまり芝居とかそういう感じがしなくて。画っていうのかな。画作りにすごくこだわられていたから。出来上がるまでどんな感じなのか、さっぱりわからなかった。不思議な現場でした。

――ところで、TVシリーズだけだと、ウルトラマンダイナは、本当は何者なのか、実は微妙によくわからないですよね。M78星雲人でもないし、古代の光の巨人かも語られない。その辺の設定は説明を受けられたりしましたか。

つるの うかがってないです。

――ご自分の中ではどのように捉えられていますか。

つるの 光の巨人、まさにその通りだと思います。人間が言葉ではない何か、感情がMAXになったときに出てくる、具現化されたキャラクター、神様みたいな存在ですよね。僕にとってはね。

――説明はなく、漠然とウルトマンダイナである、みたいな。

つるの そうですね。本当にそんな感じ。ダイナはダイナ。そこに深い意味を追求していくことではなく、ダイナはダイナっていう感じがします。ただ、ウルトラマンの中では僕は一番イケメンだと思っています。シリーズが出てくるたびに期待はするんですが、やっぱりダイナが格好いいなって、いっつも心の中で思っています(笑)。手前味噌で申し訳ないんですが。横顔とか、たまらんな。トサカのこれ格好いいわ。色がいいんですよね。

──ダイナの赤と青は明るい色ですからね。最後に『ウルトラマンダイナ』の今後の展開に望まれることはありますか。

つるの TVシリーズで実はカットされているところが結構あるんです、尺が足りなくて。最終話は特に、リョウ隊員と廊下で歩きながらしゃべるシーンとか入ってないんですよね。TVシリーズだけじゃ伝えきれてない部分があるんですよ。リョウとアスカの関係性みたいな。ノーカット版を流してほしいなと思ってます。

つるの剛士(つるの・たけし)
1975年5月26日生まれ。
福岡県北九州市出身、藤沢市在住。
『ウルトラマンダイナ』のアスカ隊員役を熱演した後、2008年に「羞恥心」を結成しリーダーとして活躍する一方で、2009年にカバーアルバム『つるのうた』をリリースし35万枚を売上げオリコン1位を記録。続いてセカンドカバーアルバム『つるのおと』では25万枚を売上げ、トータル60万枚のセールスを記録し、以降精力的に音楽活動を行っている。
将棋・釣り・楽器、サーフィン・野菜作りなど趣味も幅広く、好きになったらとことんやらなければ気が済まない多彩な才能の持ち主。
二男三女の父親。

(C)円谷プロ