「新オリジナル公演情報解禁SP生配信」を行ったSKE48チームS (C)2022 Zest, Inc.

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今月24日、名古屋を拠点に活動するアイドルグループ「SKE48」のチームSが、とある発表をおこなった。それは「新オリジナル公演情報解禁SP生配信」と題したもので、同グループが11年ぶりに実施する完全オリジナルの新公演だ。

【写真】振付は牧野アンナ先生が監修、「愛を君に、愛を僕に」MVメイキングカット【9点】

 気になるプロデューサーは小室哲哉氏と発表された。また、公演タイトルは「愛を君に、愛を僕に」、楽曲は全16曲、初日公演は5月28日、同タイトルのアルバムも6月8日にリリースされることもあわせてアナウンスされた。

さらにファンの注目を集めたのは、振り付け。『手をつなぎながら』公演、『制服の芽』公演の振り付けも担当した牧野アンナ氏が担当することも発表されたのだ。

 ここで、なぜ新しい公演が行われることがニュースになるのかという、基本的なことをおさらいしておきたい。

 SKE48は2008年に結成されたグループだが、まず注目されたのは、松井珠理奈という存在があったからだ。まだ小学6年生だった彼女はAKB48のセンターにいきなり抜擢された。このニュースはAKB48のファンに大きな衝撃を与えた。

 SKE48が次に注目されたのは、公演である。48グループはそれぞれが劇場でチーム単位の公演を実施しているのだが、SKE48の公演はAKB48のそれとは大きく異なっていた。

 何がAKB48と違っていたのかというと、時に荒々しく、時に楽しい振り付けだった。それはAKB48の劇場で繰り広げられてきた世界観とは一線を画していた。もっといえば、アイドルの世界では見たことがない類のものだった。

 振り付けを担当したのは、牧野アンナ氏だった。沖縄アクターズスクールの元チーフインストラクターで、多くのアーティストを指導した後、2008年からAKB48に関わるようになり、その縁で姉妹グループのSKE48の指導をすることになった。AKB48では『ヘビーローテーション』『フライングゲット』など、多くのヒット曲を担当した。

 アイドルになったばかり、よちよち歩きのメンバーは、先生の指導を言われるままに吸収した。映像にも残っているが、指導は厳しかった。メンバーは食らいついた。その結果、AKB48とは違うステージを作り上げ、それがSKE48の個性となっていった。

 2009年、チームSは2つのオリジナル公演を上演しているが、ともにアンナ先生の手による振り付けである。その曲たちはいまだに色あせておらず、特に『恋を語る詩人になれなくて』のインパクトは絶大だ。その振り付けは運動量が多く、明るく、ユニークだった。

 公演曲以外にも、SKE48では『青空片想い』『ごめんね、SUMMER』『パレオはエメラルド』といったシングル曲もアンナ先生が手掛けている。『パレオ〜』はSKE48が『NHK紅白歌合戦』に初出場した2012年にも歌われており、自身が考案した振り付けをアレンジし、バレエ経験豊富な須田亜香里をフックアップしたり、器械体操経験のある研究生のバック宙を取り入れたりして、紅白仕様に再構築。今でもファンの語り草になっている。

 ところが、2015年を最後にアンナ先生はSKE48の楽曲を担当することはなくなった。他の先生が考案した振り付けをメンバーは踊るようになっていった。

 この頃、すでに国内にはアイドルグループが星の数ほど誕生していた。48グループだけではない。乃木坂46も結成されていたし、それ以外の事務所もアイドルビジネスに参入していた。曲の数だけ振り付けが存在するが、2010年代半ばにもなると、どのグループのどの振り付けも、さほど差がなくなっていた。SKE48の振り付けも個性という点において、他のグループと比較すると、特に目立つものではなくなっていった。その状況は何年も続くことになる。私はSKE48にはアンナ先生が必要だと考えていた。