悪天候に見舞われた国内女子ツアー2022年3戦目の「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」は、堀琴音の逃げ切り優勝で幕を閉じた。昨年7月の初勝利からわずか8カ月で、難しいと言われる2勝目を手にした。上田桃子や松森彩夏、吉田優利を指導する辻村明志コーチがその勝利を分析する。
■2位→優勝、名実ともに大スランプからの復活
昨年7月の「ニッポンハムレディスクラシック」でツアー初優勝を飾った堀だが、道のりは険しかった。2014年にプロテスト合格。同年はテスト合格前と後で、ステップ・アップ・ツアー2勝を挙げる活躍をみせた。15年シーズンは賞金ランク33位で初シード入り。翌年は11位、そして17年21位だったが、18年から大不振に陥る。そこから3年間もがき続けたが、見事に復活した。
「明治安田生命が1打差の2位で、今回は優勝。昨年の初優勝から21試合目での2勝目は、大スランプからの完全復活ですね」と辻村氏も賞賛を送る。「見ていてショットもそうですが、すべてに落ち着いているように見えます。元々はアグレッシブな選手。基本は攻めのゴルフでピンを狙っていく。そのスタンスは変わっていないと思いますが、アイアンでピンを狙う際の精度が増したので、プレースタイルと結果が合ってきたのだと思います」と続ける。
不振に陥ったときはショットが曲がり、ホール内の左右どちらにもブレていた。それが森守洋コーチと取り組んだスイング改造により安定。「球筋はフェードですが、引っかけないフェードが打てています。つかまったとしても、ストレートに収まるので、計算がしやすいのでしょう」と辻村氏には見えている。かといって、飛距離が落ちているわけでもない。
「堀選手はティショットではドライバーをキャロウェイの『ROGUE ST』に替えましたが、これはどちらかというとロースピンのドライバー。フェード打ちの堀選手にとってはスピンが多くなってしまいがちですが、この道具選びでスピンを減らしていけることになっていますので、飛距離も落ちません」(辻村氏)
自信を深めたスイングと道具選びも合致し、今回は2日目に首位に立つと、最終日も3バーディ・1ボギーで逃げ切った。結果は1打差だったが、打数以上に余裕が感じられた勝利でもあった。「悪い時は多くの部分に注意点が出るもの。意識散漫になりタイミングもバラつくのですが、ショット、パットともに意識する点を1、2点に絞り切れているので自分ではなくコースと向き合えているのでしょう。その結果シビアな場面でも表情も変わらず。いままでは失敗を許せずにイライラしていたこともありましたが、それがなくなりました」と辻村氏は分析。まだ今月26歳になったばかり。今後もますます勝利数を重ねていきそうだ。
■6連続バーディの新人!? 誰が出てくるか分からないのが今のツアー
今大会で注目を浴びた選手がいる。昨年6月にプロテストに合格したばかりの19歳ルーキー・19歳の内田ことこだ。
「内田選手が6連続バーディで一気に優勝戦線に加わりました。最近は、プロテストに合格した選手がすぐにツアーで活躍するというのが多くなりました。高校最後の年から急激に伸びる選手が増えたように思います。周りを見ながら頑張っている同級生がいると『私もやらなければ』と取り組み、伸びるのが印象的です」(辻村氏)
北海道では名の知れた内田だったが、全国的な活躍までには至らなかったジュニア時代。それがここにきて、才能の片鱗を見せた。「ルーキーで最終日に6連続バーディを出せる。このような選手がどんどん出てくるので、今の女子ツアーは激しい入れ替えがあるのです」(辻村氏)
「スイングもしっかりしていますし、表情もしっかりしていました。また楽しみな選手ですね」と辻村氏が言うように、内田は最終日のプレー後「ギャラリーの前で優勝争いができて楽しかった」と振り返った。世代交代の波が激しい女子ツアー。今度はどんな選手が出てくるのか楽しみでならない。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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