マツダにしてもGRにしてもブランディングは喫緊の課題であり、その手段に国際規格のモータースポーツを取り込むことは市場がグローバルに広がる両陣営にとって必要不可欠となっている。

一応裏取りをしようと佐藤恒治CBO(チーフブランディングオフィサー)に問うた。まだNさんのヒントを得る前で、これは何?と雲を掴むような段階で聞いたところでは、GT3と銘打つからにはガソリンエンジンであり、当然レース参戦を目指しているという。 「ボディは空力を磨く余地はあるけど、基本的には専用に起こしたこのシャシーを使う」ときっぱり。

考えてみればマツダはデジタルイノベーション(MDI)部門を有し、MBD(モデルベース開発)という最先端のデジタル開発でメーカーとして業界トップを行く。

トヨタがマツダにハイブリッド(THSⅡ)技術を供与した際、そのデジタル技術を駆使した開発レベルの高さに驚嘆したことが協業から資本提携まで進んだと言われる。マツダのGT3は元々ロータリーエンジン(RE)の復活を期し、1991年にルマンを初制覇した4ローターの再来をブランド再構築の柱としたことに始まる。

RE搭載に固執するか、直6 SKYACTIV-Xをトヨタの力を借りて熟成するか。いずれにしても両者がコラボすれば、トヨタ/スバル、トヨタ/BMWに次ぐ第3の協業プロダクトになる。商品企画は一貫してトヨタが握り、デザイン/エンジニアリングという実働部隊はいずれもマツダが担当するとなれば、新たなフェイズに進むことになる。

日本にはすでにGT3カテゴリーが鎬を削りあうスーパーGT選手権(GT300クラス)があり、活躍の場は広く世界に存在する。

以上は、具体的な発表が一切成されていないコンセプトの段階だから許される『妄想』に過ぎない。だがしかし、大筋で"当たらずとも遠からず"ではないだろうか。単なる発表報道よりも、自由に発想できる法螺(ほら)話のほうが楽しい。

現在のトヨタとマツダのトップは共に慶大卒という同窓であり、親密度は高いらしい。些細な話だが、物事の始まりには案外パーソナルなつながりがモノを言う。やがて正式な発表があるだろうが、マツダがトヨタの資金力を得てRE再興と直6 SKYACTIVの熟成を果たし、RX-VISION GT3と直6 GR GT3という2つのコンセプトを現実にしたら楽しい。

何とも年始らしい話題になりましたね。ICE(純内燃機)で走る自動車の時代はまだまだ続くということで! 世界が日本に求めているのは、案外こういうモノ作りではないでしょうか?

〈文=伏木悦郎〉