AppleはiCloudの有料サブスクリプションであるiCloud+向け機能として、iPhoneから送出されるトラフィックを暗号化し、2つの異なるインターネットリレー経由で送信することでIPアドレスや位置情報を隠す「iCloudプライベートリレー」を提供しています。しかし、一部の通信事業者がこのプライバシー保護機能であるiCloudプライベートリレーをブロックしていることが報じられました。

Apple under fire over iPhone encryption tech

https://www.telegraph.co.uk/business/2022/01/09/apple-fire-iphone-encryption-tech/

T-Mobile Blocking iCloud Private Relay For Some, But It's Not What You Think

https://tmo.report/2022/01/t-mobile-blocking-icloud-private-relay-for-some-but-its-not-what-you-think/

T-Mobile begins blocking iPhone users from enabling iCloud Private Relay in the US - 9to5Mac

https://9to5mac.com/2022/01/10/t-mobile-block-icloud-private-relay/

Appleは2021年9月に配信したiOS 15から、iCloud+向けにiCloudプライベートリレーを実装しています。この機能を使えば「ユーザーがどのウェブサイトにアクセスしたか」などの情報を隠すことができるのですが、一部の通信事業者が同機能を有効にしているユーザーをブロックしていることが明らかになりました。

Appleによると、iCloudプライベートリレーは2つの異なるインターネットリレーを経由することでユーザーのトラフィックが外部に送信されることを防ぐというもの。最初のリレーはAppleが管理するサーバーを介して送信され、2つ目のリレーはサードパーティーのオペレーターが管理するサーバーを介して送信されます。

当初、iCloudプライベートリレーはiOS 15で正式版がリリースされる予定だったのですが、記事作成時点ではパブリックベータ版が実装されているのみです。そのため、iOS 15ではデフォルトではiCloudプライベートリレー機能が無効となっています。

なお、パブリックベータ版のiCloudプライベートリレーを有効にするにはiPhoneの設定アプリから「ユーザー名」→「iCloud」→「プライベートリレー(ベータ版)」の順にタップすればOK。



このiCloudプライベートリレーに対して懸念を表明する公開書簡を、欧米の通信事業者がAppleに向けて提出し、iCloudプライベートリレーがネットワークとサーバーの「重要なネットワークデータとメタデータへのアクセスを遮断し、通信ネットワークを効率的に管理するオペレーターの能力に影響を与える可能性がある」と主張していました。

さらに、T-Mobileは実際にiCloudプライベートリレーを有効にしているiPhoneユーザーのモバイル通信を遮断していることが明らかになっています。なお、イギリスではT-MobileのほかにEEもiCloudプライベートリレーを有効にしているiPhoneユーザーのモバイル通信を遮断している模様。

iCloudプライベートリレーを有効にしたT-MobileユーザーのiPhoneには、以下のような通知が表示されます。通知には「あなたのセルラープランはiCloudプライベートリレーをサポートしていません。プロバイダー経由でインターネットにアクセスするには、iCloudプライベートリレーをオフにする必要があります。iCloudプライベートリレーをオフにすると、プロバイダーはあなたのインターネットアクティビティを監視できるようになり、IPアドレスが既知のトラッカーやウェブサイトに隠されることはありません」と記されています。



なお、T-MobileによるiCloudプライベートリレーのブロックは段階的に展開されている最中のようで、一部のT-MobileユーザーはiCloudプライベートリレーを有効化しながらモバイルネットワークを利用できる可能性があります。

The T-Mo Reportが独自に入手したT-Mobileの内部文書によると、T-MobileがiCloudプライベートリレーをブロックする理由は、同社が独自に展開するコンテンツフィルタリング機能とiCloudプライベートリレーが競合するためだそうで、「iCloudプライベートリレーのブロックはT-Mobileが意図したものではなく、T-Mobileのコンテンツフィルタリング機能を適切に機能するようにした結果、偶発的に起きたもの」である模様。

Appleはまだ通信事業者によるiCloudプライベートリレーのブロックについてコメントしていませんが、「T-Mobileのような通信事業者がシステムレベルでiOSの機能に干渉している状況を見るのは心配」とApple関連メディアの9to5Macは指摘しています。