JR北海道の特急列車。料金制度を知って工夫するとお得に利用できる(写真:川村恵司/PIXTA)

筆者はこれまで、乗車券や新幹線、在来線の特急料金などを、切符のルールをうまく活用して安くする方法を各種紹介してきた。だが、節約の道は奥深い。実は、地方によっては乗継割引などを使わずに特急料金を1〜3割、最大で45%も安くできる方法がある。

JR各社にはそれぞれ独自の特急料金メニューがある。その中でもJR北海道、東日本、東海、四国の4社は、利用する区間によっては特急券を分割して購入すると安くなる料金設定となっている。

JR東日本については過去の記事にて紹介したが、ほかの3社は「25kmまで」「30kmまで」といった短い距離区分があり、短距離利用にも使いやすい。これを活用するのだ。区間を3分割、あるいは4分割すると安くなるといったアクロバティックなケースも存在する。

JR北海道独自の特急料金体系

JR北海道は独自のA特急料金体系がある。通常、JRのA特急料金は「50kmまで」が最小の区分だが、JR北海道は「25kmまで」の区分がある。この距離別料金区分をうまく使うと、自由席とグリーン席の場合は分割購入で安くなる。


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ただでさえ経営の苦しいJR北海道なので紹介するのが少々心苦しいところではあるが、安く使えることによって「特急は高い」と敬遠していた人が特急列車、そしてJR利用を選択肢に入れるきっかけになればいいと思う。

料金体系についてもう少し詳しく見てみよう。自由席の場合、25kmまで320円、50kmまで630円、100kmまで1150円、150kmまで1830円だ。25kmまでという短距離の設定があるのはうれしいが、それ以上は50kmごと(200km以上は100kmごと)の区分であり、実際に乗るのが51kmでも特急料金は100kmまでの分、つまり1150円必要になってしまう。

75kmや125kmといった区分があれば便利なのに……と思うが、それなら特急券の区間を分割して、自分で「75kmまで」や「125kmまで」にあたる料金にしてしまえばいいのだ。

例えば乗車する距離が75kmの場合、通常なら100kmまでの特急料金1150円となるが、50km(630円)+25km(320円)の2分割にすれば950円で、200円安くなる。

この方法でとくに安くなるのはグリーン車だ。200kmまでの料金は2800円なのに対し、100kmまでは1300円と半額以下なので、分割購入によって特急料金とグリーン料金がダブルでお得だ。

ただ、このJR北海道独自の特急料金は150kmまでが対象で、それ以上は通常のJR共通A特急料金が適用される。150km以上の場合は安くなってもごく一部で100円安くなるかどうかというレベルのため、主に51〜125kmまでの短距離利用の時に使える手である。その代表例をご紹介する。

■特急「北斗」「スーパー北斗」函館―長万部間(112.3km)
【通しの場合】自由席1830円、グリーン車4630円

【分割した場合】自由席
・函館―新函館北斗間17.9km:320円
・新函館北斗―長万部間94.4km:1150円
合計1470円(360円・20%お得)
【分割した場合】グリーン車
・函館―新函館北斗間:指定席特急料金850円+グリーン料金1300円−530円=1620円
・新函館北斗―長万部間:指定席特急料金1680円+グリーン料金1300円−530円=2450円
合計4070円(560円・12%お得)
(※グリーン車の場合は座席の指定を受けるが、指定席料金530円は免除される)

函館―長万部間でこの方法を実践する場合、新幹線からの乗り継ぎ客で席が埋まっていることもありうるので、新函館北斗―長万部間の座席を先に購入するのをおすすめする。もっとも、筆者なら函館―新函館北斗間は「はこだてライナー」を使い、新函館北斗―長万部間だけ特急券・グリーン券を購入して2450円で済ませるだろう。全区間通しで乗る場合の指定席特急料金+90円と乗り換え待ちの手間だけでグリーン車に乗れるのだから。

■函館本線・札幌―深川間(106.6km)の各特急列車
【通しの場合】自由席1830円、グリーン車4630円

【分割した場合】自由席
・札幌―滝川間83.5km:1150円
・滝川―深川間23.1km:320円
合計1470円(360円・20%お得)
【分割した場合】グリーン車
・札幌―滝川間:指定席特急料金1680円+グリーン料金1300円−530円=2450円
・滝川―深川間:指定席特急料金850円+グリーン料金1300円−530円=1620円
合計4070円(560円・12%お得)
(※グリーン車の場合は座席の指定を受けるが、指定席料金530円は免除される)

JR東海も独自の特急料金区分が

JR東海にも30kmまでの独自の特急料金区分がある。また、50kmまでの料金が通常より安いケースもある。これは身延線全線、飯田線(豊橋―飯田間)、中央線(多治見―塩尻間)、関西本線・紀勢本線(名古屋―新宮間)、高山本線(岐阜―猪谷間)で適用される。

これは区間分割購入に有効な料金設定だ。うまく組み合わせれば60kmまで、80kmまで、90kmまで、110kmまで、130kmまで、140kmまで、160kmまでという料金区分を作ることができる!

JR東海の特急料金体系をうまく使うと、540円もお得になるケースがある。その事例を紹介しよう。

■高山線特急「ワイドビューひだ」岐阜―白川口間(53.1km)
【通しの場合】1200円
【分割する場合】
・岐阜―美濃太田間27.3km:330円
・美濃太田―白川口間25.8km:330円
合計660円(540円、なんと45%もお得)

■高山線特急「ワイドビューひだ」鵜沼―久々野間(105.9km)
【通しの場合】1860円
【分割する場合】

・鵜沼―飛騨金山間49.4km:660円
・飛騨金山―飛騨荻原間30.0km:330円
・飛騨荻原―久々野間26.5km:330円
合計1320円(540円・30%お得)

JR四国の特急料金体系を駆使する

JR四国(全線)にも25kmまでの独自の特急料金区分があり、50kmまでの料金が通常より安いケースがある。まずは岡山から四国へ入るときのお約束。JR西日本の岡山―児島間とJR四国を跨ぐ場合は、特別に50kmまでの特急料金が560円に設定されている。そこで、以下のように区間を3分割すると……。

■瀬戸大橋線特急「しまんと」「南風」岡山―大歩危間(118.2km)
【通しの場合】1860円
【分割する場合】

・岡山―丸亀間48.5km:560円
・丸亀―阿波池田間48.1km:530円
・阿波池田―大歩危間21.6km:330円
合計1420円(440円・24%お得)

区間によっては、あと少し短ければ距離の区分を越えずに特急料金が安く済むのに……というケースがある。数キロ先の駅から乗るという手もあるが、分割購入でうまく収める手もある。これは「あと3.1km短かったら100kmを切っていて安かったのに……」という人にうれしい事例だ。

■予讃線特急「いしづち」高松―新居浜間(103.1km)
【通しの場合】1860円
【分割する場合】

・高松―詫間間42.0km:530円
・詫間―観音寺間14.5km:330円
・観音寺―新居浜間46.6km:530円
合計1390円(470円・25%お得)

四国はさまざまな利用方法が考えられる。JR東海の高山線で紹介した3分割よりさらに多い、4分割すると料金を安くできるケースも現れた! 280円のためにここまでするかどうかは別として、理屈のうえではこのようなことも可能という例だ。

■予讃線特急「しおかぜ」「いしづち」多度津―松山間(161.7km)
【通しの場合】2200円
【分割する場合】

・多度津―観音寺間23.8km:330円
・観音寺―新居浜間46.6km:530円
・新居浜―今治間41.8km:530円
・今治―松山間49.5km:530円
合計1920円(280円・13%お得)

いかがだったであろうか。4分割までくるともはやギャグの域にも思えるが、今回挙げた中で実用的に使えるケースもあるだろう。高いイメージのある特急だが、各社の料金体系をうまく使えばお得に乗ることが可能だ。少しでも安く乗れる方法があれば特急、そして鉄道利用が選択肢に入ってくるという人も多いのではないだろうか。