議論はピッチ入場前の廊下でも続き、リラックスしたベルギー選手たちとは対照的に、フランス選手たちの顔は引き締まっていた。

 こうしてポグバを先頭に全員がハイプレスとインテンシティ注入を実行。やがて才能がモノを言い、キリアン・エムバペのパスからカリム・ベンゼマがネットを揺らし、グリエーズマンがゲットしたPKをエムバペが決め、最後にテオ・エルナンデズが豪快に初ゴールを叩き込んで、試合をひっくり返したのだ。
 
 それは、EURO2020で失敗したフランスが、逆襲に出た瞬間でもあった。PK戦での失敗が「キャリアの汚点になった」と認めたエムバペも、猛烈なPK弾でリベンジを果たし、強靭なメンタルを再証明。ポグバも、ロシアW杯のリーダーシップを再び開花させた。明晰なデシャンという“将軍”も、堂々の復活を遂げた。

 そして3日後、スペインにも逆転勝利した。1点リードされるや、2分後にはエムバペのパスからベンゼマのゴラッソが生まれ、次いで猛スピードで走り出たエムバペが決勝弾を決めた。

 ネーションズリーグは歴史が浅い(2回目)が、世界的強豪の激突はハイレベルだった。その銀のトロフィーを次々夜空に掲げた選手たちは、まるでW杯でも手にしたように笑顔を弾かせ、ひとつになっていた。

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 レ・ブルーには、まだまだ波乱や苦境が襲い掛かるだろう。団結はいつも、クリスタルのように美しく、もろいからだ。だがもしかすると、カタールW杯に向けたフランス代表のリベンジが、このハーフタイムに始まった…のかもしれない。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI