納期2年待ち…新型ランドクルーザーは何がスゴイのか? トップドライバー三橋淳と青木拓磨が語る

写真拡大

世界に誇る日本車の1台として多くの人が認めるクロスカントリー4WD、トヨタ・ランドクルーザー。登場から70年目にあたる今年登場した300系は今から注文しても納期2年以上(9月18日時点での見通し)とトヨタ自動車自ら公式にアナウンスするなど、その性能以外の点でも何かと話題のクルマだ。

今回は三橋淳、青木拓磨という世界最高峰のモータースポーツの舞台で活躍してきた2人が新型のランドクルーザーでオフロードコースを楽しんじゃおう!と企んでいる話を耳にしたので現地に駆けつけ話を伺ってきた。

三橋淳「僕の運転の邪魔をしないんです」
三橋淳氏は、人にとってもクルマにとっても世界でもっともタフなラリーレイドと言われるパリダカ/ダカールラリーで活躍してきた知る人ぞ知る日本のトップオフロードドライバー。青木拓磨氏は元WGPライダーにして、テスト中の事故で車椅子生活となるが東南アジアで開催されるアジアクロスカントリーラリーに10年以上出場し続けている。また今年はル・マン24時間レースに出場するなど活動の幅の幅は広く、じつはダカールラリーへの出場経験もある。

【画像】水の中を行く新型ランドクルーザー

ちなみに今回楽しんだランクルはGRスポーツの3.3Lディーゼルという一番高価なグレード。舞台は愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」だ。

まずは、新型ランクルをすでにたっぷり堪能している世界でも数少ないドライバーのひとり三橋氏。氏は開口一番、「最高級グレードにしてはちょっとフロントの質感が安っぽくない?」などと毒を吐きながらも「運転する人のフィーリングをとても大事にしているランクルですよね」と絶賛。悪路でも走ることができて、荷物がいっぱい積めるという部分が優先されている(もちろん、それも重要ですが…)今流行りのSUVは運転していてもドライバーへのインフォメーションが足りないものも多く感じているという三橋氏。

だが今度の300系はまるで違うという。「まず座った瞬間にシートポジションがスポーツドライビングするための姿勢がとれるというのがわかるんです」。「きちんとした姿勢がとれるというのは、ちゃんと運転できるということです」と語る三橋氏。あぁ、ここでブレーキがローターに当たるという感覚までしっかり掴めるコントロールしやすいブレーキ、操作する部分での不快な部分が綺麗さっぱりとれているステリングのフィーリングなど、まずはドライバーズカーとしての操作系の魅力をあげた。

一方、走りの魅力については「オフロード走行で僕のドライビングを受け付けてくれることが一番です」と笑うが、じつは笑っている場合ではない。クルマとして非常に大切な部分だ。タフで難しい路面を今まで走ることができなかった人が電子制御をはじめとする様々なテクノロジーで走れるようにする、という今までの進化の方向から一段上のステージに上がったということだ。

「200系のランドクルーザーの場合、電子制御が僕の運転を邪魔するわけですよ。一応VSCを切ることはできたんですけど、完全じゃなかった。でも今度のMTS(マルチテレインセレクト)の制御ではそういう邪魔が入らない。"SAND"モードなんてもうクルマを自由自在に振り回せます。オフロードにおけるABSの制御もいい」と新型の電子制御の進化はトップオフロードドライバーにとっても納得の仕上がりのようだ。

もちろん、ドライバーを満足させるための取り組みはアルミの外板を多用し軽量化した車体、重量配分の見直し、新たに開発されたサスペンションなどをはじめ隅々まで見直された結果ではあるが、電子制御を含め走りに対する考え方がよりドライバー志向になった結果なのであろう。

ちなみに、この新型の特徴はGRスポーツだから、ではなく300系全ての方向性であることは言うまでもない。


青木拓磨「200系との差は想像以上に大きい」

一方、その走破性はもとより快適性の高さに驚いていたのが青木拓磨氏だ。彼の走るオフロードの舞台は東南アジア主体。今回使用させていただいたさなげのコースには近い路面も多く見受けられたが、試乗を通じて終始快適だったそうだ。

今回は比較のために200系ランドクルーザーも用意されていたが、その差は想像以上に大きかったとのこと。中でもDAC(ダウンヒルアシストコントロール)などの制御の緻密さなどは誰もが感じるところで、また200系だとスタックまではいかないまでもちょっと危険凹凸の激しい路面でも300系は何事もなかったように楽々とこなしていくと言う。

ドライバー志向に舵を切った新型はドライバーの思いに応えるフィーリングを持ちながらも決してドライビングスキルを要求する車ではなく、多くの人の限界を上げながらなおかつ意のままに操れる全方位的進化を遂げているようだ。

ちなみに青木氏が現在使用しているラリーカーは日本では未発売のトヨタ・フォーチュナー。日本で発売中のハイラックスとプラットフォームを共用するトヨタIMVシリーズのSUV。現行モデルが登場した時にはその進化と快適性に感心したという青木氏も「今度のランドクルーザーに乗っちゃうとフォーチュナーがトラックベースのSUVであることを再認識させられちゃいますね」と笑った。また比較的狭く足元がわかりにくい東南アジアのコースを主戦場とする青木氏は、4つのカメラで足元の状況を映像で表示してくれるマルチテレインモニターがちょっぴり羨ましそうだった。

世界的に見ても堅牢さ、走行性能など全てにおいて世界的評価の高かったランドクルーザーが今回、ポテンシャルの大幅アップを果たした上に、昨今のトヨタが大切にするドライバーの運転する楽しみを両立させたモデルへと進化したようだ。

走行後、ダカールラリーを世界のトップドライバー相手にランドクルーザーで何度も制してきた三橋氏ならではの要求も聞かれた。「もっともっと高速域でのオフロード走行も念頭に置いてほしい」と。砂漠の超高速ステージの覇者のリクエストは一見途方もないが、スポーツカーの世界において公道では発揮できないようなポテンシャルを備えたマシンが憧れの対象であることを考えれば、それほど突拍子もない話でもない。

結論としては、そう言いたくなるほど劇的な進化を遂げたのが今回登場した300系のランドクルーザーだ。「独立懸架の足まわりが・・・とか、機構的な話とかも色々あるとは思いますが、新型はなにより実際にステアリングを握って感じて欲しい1台です」と三橋氏。「とにかく凄い。走破力も凄いし、それでいて超快適!」と青木氏。モータースポーツの世界的な舞台で頂点を知る二人を終始楽しませたことこそが新型の最大の特徴と言えるだろう。

もともと世界的に評価の高いランドクルーザーシリーズの最新型は今注文しても納期の目処すら立たないほどの人気っぷりだが、それでも注文してしまうのが正解のような魅力に溢れていた。

〈文と写真=高橋 学〉