可搬式オービスの取り締まり件数、福岡が突出して多い理由とは

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■福岡県警が所有する可搬式オービスは4台、なのに最多取り締まり件数

可搬式オービスの取り締まり件数は、福岡県警が飛び抜けて多い。全国の件数と、うち福岡の件数を以下に並べてみよう。

2019年 全国 5069件 福岡 1556件(約31%)
2020年 全国 1万1568件 福岡 2518件(約22%)

※警察庁の文書では、固定式も可搬式も2019年分までは「取締り件数」だった。2020年分から突然「撮影枚数」になった。数字的には同じだという。

福岡県警は可搬式オービスをたくさん持っているのか? 可搬式の台数は、歴年(1月1日~12月31日)ではなく年度(4月1日~3月31日)で数える。これも全国と福岡を並べてみよう。

2019年度末 全国 60台 福岡2台
2020年度末 全国 99台 福岡4台

2020年度末、1台のみの県が23ある。新潟は0台だ。それに比べれば福岡は多い。だが、最多は警視庁(東京)の7台で、その2020年の取り締まりは923件にすぎない。次は京都の6台で、取り締まりは251件ぽっち。4台で2518件の福岡は突出している。 ※歴年と年度の違いはとりあえず捨象する。

福岡、いったいどうしたんだ! 福岡の4台はすべて東京航空計器(TKK)製で、機種的には4台ともLSM-300かと。TKKの可搬式の測定方法、スキャンレーザー式(以下、レーザー式)は、どうやら取り締まりには向かないようだ。なのに取り締まり件数が突出って、どうなってんの?

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■オービスなのに現場で違反切符を切る!?

首をかしげていたところ『月刊交通』(東京法令出版)の2021年7月号に驚きの記事を発見した。福岡県警本部の交通部交通指導課の職員氏による「可搬式速度違反自動取締装置の効果的な運用について」という記事である。ちなみに『月刊交通』はA5サイズで100ページちょい、表紙以外すべて白黒で、なんと税込み900円。めっちゃお高いマニア雑誌だ。記事にこんな部分があった。

「違反者は、原則、取締り実施警察署に呼び出します」

オービスは、現場では測定&撮影を行うだけ。後日、違反者を警察署等へ呼び出して違反切符を切る。ところが…。

「対象車両が二輪車である場合やコロナ禍で運転者がマスクを着用している場合は、追跡捜査が困難であるため、現場で告知するよう体制の確保に努めています」

「告知」とは違反切符を切ることだ。オービスにナンバーが写らないバイク、また違反者がマスク着用のクルマについては、あとから呼び出すのではなく、現場で停止させ違反切符を切るというのだ。つまり福岡県警は可搬式オービスを、いわゆるネズミ捕りの定置式測定機としても使っているんだね。さらに、こうも出てくる。

「呼び出しに応じない場合や、マスク着用及び二輪車等の運転者が違反現場で停止合図に従わず逃走した場合は、速度違反追跡捜査係が取締り実施警察署と連携し、徹底した追跡捜査及び裏付け捜査を行い、違反者を特定して検挙しています」

なるほど、それで福岡は可搬式の取り締まり件数が突出していたのか。納得、である。ただ、どうも気になる。福岡以外の取り締まり件数が少ないのは、バイクとマスク着用者がやたら多かったからであり、測定自体はちゃんと行えていたの?


■測定値を“作って”違反切符を…ではないといいのだが

思い出すのは2020年に発覚した北海道警察の「測定値ねつ造事件」だ。当時、大きく全国報道された。私は震撼し、「ベテラン警部補が速度データ偽造を繰り返して逮捕…レーザーパトカー「LSM-100」の実績を上げるため?」で詳述した(https://driver-web.jp/articles/detail/38245)。LSM-100は警察文書では「車載型」と呼ばれる。可搬式のLSM-300と同じくTKK製でレーザー式だ。

要するに、レーザー式のLSM-100はなかなかまともに測定できなかった。しかし警察庁または警察庁の意を酌んだ北海道警察の幹部が、レーザー式の実績を上げろと現場の尻を叩いた。警部補氏は、違反車両を見つけたが普通に測定できなかった場合に「違反自体は事実なのだから」と、テキトーに測定値をつくって違反切符を…そういうことと私は見た。だとすると、もしかして、いや、もしかして、ですよ、福岡県警はこんなことをやっているんじゃないか。

1、可搬式で違反車両を待ち伏せた。
2、目測で超過20キロ程度の違反車両が来たが、ちゃんと測定できなかった。
3、しかし停車させ、テキトーにつくった測定値(超過19キロとか)を押しつけた。

違反者としては、現場で制服警察官から突然に高圧的に迫られると屈服しやすい。超過20キロ程度で走った認識があれば、逆らう者はいないだろう。「早く反則金を払って忘れたい」、普通はそう思うだろう。

以上、ふり返れば2013年からずっと可搬式オービスに大注目、あれこれ調べてきた私の、調べてきたことに基づく、独自の想像、推測だ。もしも当たりなら、いずれ発覚し、全国報道されることになるだろう。そのとき、「じつはレーザー式の性能が…」とは絶対にメディアは触れないはず。現場の方々は、トカゲの尻尾切り、懲戒免職、退職金不支給なんてことにならないよう、今から備えておくべきではないかと。よけいなお世話ですね、すみません~!

〈文=今井亮一〉
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。