すべてが高次元で融合中!“進撃の鳥栖”は「今季最大の注目」ポイントである

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J1・サガン鳥栖が開幕から好調をキープしている。

開幕3連勝とスタートダッシュに成功すると、その後も堅守を武器に安定して勝点を積み重ね、リーグ戦12試合を消化して7勝2分3敗の3位と躍進。13位と苦しんだ昨季とは一転して、上位争いに食い込んでいるのだ。

今回の当コラムでは、序盤戦の台風の目となっている鳥栖にスポットライトを当て、戦術面や体制面から好調の要因を探っていきたい。

今季の基本システム

まずは、今季の基本システムおよびメンバーを見ておこう。

フォーメーションは中盤フラットの「4-4-2」とアンカーを置いた「3-5-2」が併用されているが、直近のリーグ戦2試合で採用された前者を基本形とした。

守護神は不動の存在である朴一圭で、最終ラインは右から飯野七聖、ファン・ソッコ、エドゥアルド、中野伸哉または大畑歩夢の4人。

ダブルボランチは松岡大起、仙頭啓矢が軸で、2列目は右サイドが樋口雄太または本田風智、左サイドは小屋松知哉または中野嘉大が起用され、最前線は新エースの林大地を中心に酒井宣福、山下敬大らがパートナーの座を争っている。

躍進のカギを握る“ふたつの決まり事”

鳥栖がスタートダッシュに成功した背景には、金明輝監督の手腕が大きく関係している。2019年5月より再びチームを率いている指揮官は、攻守にそれぞれ決まり事を設けて基本コンセプトを定めることで、ブレない組織を構築中だ。

まず攻撃面での決まり事は、ビルドアップの徹底だ。最終ラインからボールを丁寧に繋ぎ、ボランチが巧みにボールを引き出して、敵のプレスを無効化しながら前線に淀みなくボールを供給。サイドも効果的に活用しながら、有機的な連係プレーからゴールを狙っていく。

ビルドアップ時のキーマンとなっているのが、守護神として堅守を支える朴一圭だ。

好セーブでチームを引き締める背番号40は正確な足元の技術でも大きく貢献。時にセンターバックと同じ位置まで進出して、繋ぎの起点としても機能している。かつて所属したFC琉球、横浜F・マリノスといったポゼッションスタイルを基調とするチームでの経験を存分に活かし、欠かせない存在となっている。

次に、守備面での決まり事を見ていきたい。基本的な守備戦術は、前線からの連動したプレスだ。特にフォワードとミッドフィルダーが見事に連動するプレッシングは一見の価値があり、ポゼッション後の反撃を防いで主導権を握り返すことができているため、良いリズムが途切れないのだ。鳥栖と言えば、かつての尹晶煥体制からハードワークを売りとしているクラブであったが、監督が代わってもその伝統は変わらず受け継がれている。

若武者の躍動も熱く、組織として極めて…

近年の鳥栖は、ビクトル・イバルボ、フェルナンド・トーレスやイサック・クエンカといった大物助っ人が在籍していたイメージが強いが、その一方で下部組織(ユース)が充実の一途をたどっている。

U-18チームの主な実績としては、2017年から「高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ九州」を3年連続で制し、「日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会」は2019年度が準優勝、2020年度が優勝とまさに輝かしい。

(U-20世代の中心的な存在である松岡大起)

現在のトップチームでは、捌き役としてビルドアップの中継点となっている松岡、左サイドバック、左ウイングバック、左ストッパーと複数のポジションで冷静沈着なプレーを披露している中野伸(2種登録)、その中野伸とハイレベルなポジション争いを展開中の大畑、サイドハーフ、インサイドハーフ、フォワードなどをそつなくこなすマルチロールの本田が堂々としたパフォーマンスを見せており、育成の成果がしっかりと表れている。

また、大学を経由して古巣へと帰ってきた樋口も攻撃のアクセント役+セットプレーのキッカーとして活躍中。

(3月のU-24日本代表に飛び級で招集された17歳の中野伸哉)

彼らユース出身者をエドゥアルド、ファン・ソッコ、朴ら中堅/ベテランが支え、さらに“クラブの顔”である豊田陽平、Jリーグ通算545試合出場を誇る梁勇基がベンチに控える体制は組織として極めて理想に近い。

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そして、明確なコンセプトを掲げる金監督の手腕も申し分なく、これらの要因が高次元で融合している結果が好成績に繋がっているのだ。快進撃を続ける鳥栖がどこまで旋風を巻き起こせるのか、今季の大きな注目ポイントであるのは間違いない。