MITが従来より高精度な原子時計を構築。暗黒物質の研究などに役立つ可能性
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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が、既存のものよりさらに正確な原子時計を構築しました。現在、最も正確とされるストロンチウム原子時計の精度は「300億年に1秒ずれるかどうか」、言い換えれば宇宙が始まった瞬間(約140億年前)に時刻合わせしたとして現在までに0.5秒もずれないという途轍もないものですが、この研究ではさらに正確さを極めるため、ランダムに振動する原子雲ではなく、量子もつれ状態の原子を測定に使用します。

セシウム原子時計では、あるセシウム原子が他のセシウム原子とまったく同じ周波数で振動します。この振動数を確認すればいいわけですが、原子ひとつの振動をはかるのは難しいため、多数の原子の振動を計り、それらを平均して精度を高めます。しかし、既存の測定方法では数千個の原子を測定してもまだある程度の不確実性が残ります。

そこで研究者らは、量子もつれが原子時計の精度向上に役立つのではないかと考えました。量子もつれ状態では、個々の原子がランダムに振動していてもグループ内の別の原子がそれに相関する測定結果を示します。そしてもつれ状態の原子は個別に振動している状態を計る従来の原子時計よりもさらに偏差が少なく高精度になるということです。

研究では、約350個のイッテルビウム原子を量子もつれ状態にしました。イッテルビウムはセシウムよりも1秒あたり10万倍細かく振動します。これらの振動を正確に追跡できれば「これまでにない短い時間間隔を区別できる」ようになります。

そして、最先端の原子時計をこの量子もつれ状態の原子を測定するよう適合させた場合、もつれがない従来の状態よりも4倍速く目的の精度を達成でき、上記の宇宙が始まってから現在までに発生するズレは0.1秒にまで高精度化するとしました。

この高精度な原子時計を使えば、時間を正確に知ることができるだけでなく、暗黒物質や重力波などを解析するのに役立ち、まだ解けぬ疑問の答えを導き出せるきっかけになるかもしれません。「重力が時間の経過にどう影響するか、宇宙が古くなるにつれて光の速度は変化するのか、電子の電荷は変化するのか?そうした疑問が、より正確な原子時計があれば調べられます」と研究者は述べています。

source:Nature
via:MIT News