奇跡の逆転Vも可能?宮本恒靖率いるG大阪の「強さ」を探る
J1のガンバ大阪が意地を見せた。
引き分けor負けで川崎フロンターレの優勝が決まってしまうJ1・第28節の浦和レッズ戦。62分に先制を許す苦しい展開の中、66分に宇佐美貴史が同点ゴール、81分に郄尾瑠が逆転ゴールを決めて2-1で勝利。逆転優勝に向けて一縷の望みをつないだ。
今季のG大阪は、就任3年目を迎えた宮本恒靖監督の下、ここまでリーグ戦2位につけるなど好調をキープしている。
今回の当コラムでは、上位争いに絡んでいる西の名門にスポットライトを当て、好調の理由に迫っていきたい。
基本形はオーソドックスな4-4-2
まずはフォーメーションを見ていこう。
上図が直近のリーグ戦5試合での基本システムおよびメンバーだ。
守護神は国内屈指の実力者である東口順昭で、最終ラインは右から郄尾、昌子源、キム・ヨングォン、福田湧矢(または藤春廣輝)の4人。ダブルボランチはユース出身の奥野耕平、井手口陽介、進境著しい山本悠樹らがポジション争いを繰り広げている。
サイドハーフは右が小野瀬康介、左は倉田秋が主にスタメンを張り、文字通り多士済々のタレントが揃う2トップは宇佐美とパトリックを軸に渡邉千真、唐山翔自が起用されている。
好調を維持する2つの理由
リーグ戦29試合を消化し、2位と上位争いに絡んでいる理由は2つある。1つ目は、「圧倒的なタレント力」だ。
東口、昌子、藤春、三浦弦太、倉田、井手口、宇佐美、渡邉といった日本代表経験者が各ポジションに顔を揃えており、特に前線へのフィードにも冴えを見せる昌子、攻守両面で効いている井手口、プレースキッカーとしても覚醒中である宇佐美の実力は傑出している。
また、助っ人陣を見ても、Jリーグでの実績が十分なキム・ヨングォン、アデミウソン、パトリックを擁するなど、まったく隙のない陣容だ。
J1優勝、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝など数々のタイトルを獲得した西野朗政権(2002〜11)、2014年シーズンにJ2からの昇格1年目で国内3冠(J1優勝/天皇杯優勝/ナビスコカップ優勝)という偉業を成し遂げた長谷川健太政権(2013〜17)と比較しても、同等かそれ以上のタレント力を誇っている。
豪華かつ様々なシチュエーションに対応できる経験豊富なタレントたちの存在により、どのようなスタイルでも勝利を目指せるのが最大の強みだ。
対戦相手が最終ラインからパスをつなぐポゼッションサッカーを標榜している場合は、前線からのプレスを強めてビルドアップを寸断することもできるし、プレスが思うようにハマらない時やリードしている展開ではコンパクトな守備ブロックを形成し、そこからのカウンターを狙うこともできる。対応力という面でも、間違いなく国内屈指だろう。
レジェンド、宮本恒靖の手腕
そして、2つ目は「指揮官の巧みなマネジメント」である。
クラブのみならず日本サッカー界のレジェンドでもある宮本監督は、3バックと4バックを巧みに使い分け、積極的な選手の入れ替えを行うことでチームに刺激を与えている。
特に若手の起用は躊躇なく決断している印象で、複数のポジションをハイクオリティでこなす福田、右サイドバックとして地位を固めつつある郄尾、新たな司令塔として攻撃のタクトを振るう山本はいまや主力級へと成長。
他にも、奥野、芝本蓮、川粼修平、唐山といった期待のホープたちも出場機会を得て、貴重な経験を積んでいる。
上位争いのプレッシャーの中で得られるものは大きく、今後の成長がとても楽しみだ。
ラスト5試合で底力を見せられるか
冒頭でも触れた通り、J1・第28節の浦和戦での勝利により、川崎の優勝を防いだG大阪。
次節はその川崎との直接対決を控える。“優勝決定戦”とも言える正真正銘の大一番であり、逆転優勝に向けては勝利が絶対条件となる。
非常に厳しい状況ではあるが、敵地での優勝を阻止できるか、大いに注目だ。
仮に次節で川崎の優勝が決まってしまっても、残り試合は重要な意味を持つ。J1で2位以内に入れば、来季のACL出場権獲得(グループステージから出場)と今季の天皇杯・準決勝出場の権利を得ることができる。
さらに、最終順位が3位の場合はACLプレーオフ出場権を獲得でき、天皇杯優勝クラブとリーグ戦1〜3位のクラブが重複した場合は4位でもACLプレーオフ出場権を得られる。
リーグ戦ラスト5試合の結果が今季のタイトル獲得と来季の戦いを大きく左右するだけに、底力を見せることができるか。ここからは今季の真価が問われることになりそうだ。
written by ロッシ